eぶらあぼ 2019.2月号
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22ウラディーミル・ユロフスキー Vladimir Jurowski/指揮指揮者や編曲者としてのマーラーにも注目してください ベルリン放送交響楽団が芸術監督・首席指揮者のウラディーミル・ユロフスキーに率いられ来日する。ユロフスキーは2017年にロンドン・フィルハーモニー管弦楽団との日本ツアーで初来日を果たし、その確かな音楽性とカリスマ性で日本の聴衆を魅了した。また、2021/22シーズンよりバイエルン国立歌劇場の音楽監督就任も決定しており、欧州の楽壇での活躍が目覚ましい注目のマエストロだ。 ベルリン放送響は1923年創立のドイツ最古の放送オーケストラ。2002年にマレク・ヤノフスキが芸術監督・首席指揮者に就任以降、ドイツのみならず欧州の第一級の団体としての評価を確固たるものとしている。そして17年に同響の芸術監督・首席指揮者に就いたのがユロフスキーだ。 このオーケストラとの出会いについて「まだ幼い頃に父(ミハイル・ユロフスキー)が指揮しているのを聴いたのが最初」という。 「指揮者としてデビューした頃に何度か指揮の機会がありましたが、1995年に急遽指揮代行をし、現代作品の多い難しいプログラムを振ったことがきっかけで頻繁に声をかけていただくようになりました。ベルリン放送響はその頃から優れたオーケストラではあったのですが、東ドイツの社会主義的なメンタリティーを引きずっていたかもしれません。ヤノフスキさんがシェフに就任された数年あとに再度指揮する機会があったのですが、その時はすでに技術的にかなり向上しており、世界各国の音楽家からなる国際色豊かな楽団に生まれ変わっていました。このオーケストラのサウンドの特長は、ドイツらしい豊かな弦楽器と管楽器の響きで、一番相性が良いのはブラームス、ブルックナーそしてワーグナーではないでしょうか」 今回のツアーのプログラムでは“マーラー”がテーマだ。交響曲第1番「巨人」とマーラー編曲のベートーヴェン交響曲第7番を携える。 「私を最初に虜にした作曲家の一人がマーラーです。15歳頃に彼の作品に夢中になりました。マーラーを指揮したいがために指揮者になったと言っても過言ではありません。来日公演では、交響曲第1番に加え、ベートーヴェンの交響曲第7番のマーラー編曲版も演奏します。ですから、指揮者や編曲者としてのマーラーについても着目していただけると考えています。交響曲第1番はマーラー作品の中で最も人気がある楽曲の一つですが、彼としては珍しく、歌手や合唱、テキストが付随していません。今回は『花の章』を加えた5楽章編成でお聴かせします。ただしオーケストレーションは後の改訂稿を採用していますので、一種のハイブリッド版と言えるかもしれません」 すでにユロフスキーは同響とマーラー編曲によるベートーヴェンの交響曲第3、5、7、9番を昨シーズンに取り上げている。 「ベートーヴェンの交響曲第7番はクラシック音楽の中で非常にポピュラーな作品です。この傑作の魅力を“マーラーによる編曲”という新たな視点を通してご紹介できればと思っています。ワーグナーや、マーラーと同時代の指揮者ワインガルトナーなど、多くの作曲家や指揮者がベートーヴェンの交響曲の編曲を遺しています。中でも偉大な指揮者でもあったマーラーの編曲はかなり過激です。音は一切変えていないのですが、オーケストレーションに手を加え、編成を大きくしています。そこが他の編曲版と違うところです。その上、マーラーは弦のボウイングも指定することによって、より重厚なロマン派的な響きを生み出しています。ベートーヴェンの本質は変えることなく色彩感を増しているのです」 このツアーのソリストはピアノのレイフ・オヴェ・アンスネス(ピアノ協奏曲第1番)、ヴァイオリンの諏訪内晶子(ヴァイオリン協奏曲)。それぞれブラームスで共演する。 「アンスネスさんとは何度も共演して、様々な作品を一緒に取り上げてきました。彼は弾き振り経験も豊富なので、オーケストラに対する要求がはっきりしています。今回ブラームスの協奏曲で再び共演できることをとても楽しみにしています。諏訪内さんとはまだご一緒したことがないのですが、素晴らしい奏者として長年注目しています。日本ツアーの前にベルリンで共演しますので、こちらも楽しみです」 注目のマエストロがドイツの名門楽団からどのようなサウンドを引きだすのか興味は尽きない。構成・文:編集部 取材協力:ジャパン・アーツ

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