eぶらあぼ 2019.2月号
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138SACDCDCDCDラプソディ・イン・ブルー~ガーシュウィン名曲集~/中村均一ギター・トラベローグ/富川勝智&藤澤和志&酒井良祥ベトナム国立交響楽団 ジャパン・ライヴ2018ショパン:ピアノ・ソナタ全集/永岡信幸ガーシュウィン:サムワン・トゥ・ウォッチ・オヴァー・ミー、ラプソディー・イン・ブルー、魅惑のリズム、バイ・シュトラウス、パリのアメリカ人、リアルト・リップルズ、メリー・アンドリュー、ポーギーとベス 他中村均一(サクソフォン)白石光隆(ピアノ)アルモ・サクソフォン・クァルテット【中村均一 遠藤朱実 松雪明 栃尾克樹】ファルカシュ:シタロディア・ストリグニエンシス、チャーンゴー・ソナティネ/ヒンデミット:ロンド/マルゴラ:ソナタ/ロガリョフ:奇跡の時/アルメイダ:ブラジリアンス、リオのラプソディ/チョバニアン:アララトの歌/デュアート:リバーボート組曲、スウェーデン民謡の主題による変奏曲富川勝智 藤澤和志 酒井良祥(以上ギター)チョン・バン:交響詩「幸せを私たちに運んでくれた人」/ベトナムバクニン省民謡(チャン・マィン・フン編):糸紡ぎの歌/ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」本名徹次(指揮)ベトナム国立交響楽団ショパン:ピアノ・ソナタ第1番・第2番「葬送」・第3番永岡信幸(ピアノ)マイスター・ミュージックMM-4048 ¥3000+税ウッドノート・スタジオWNCD-1034 ¥2700+税収録:2018年7月、ザ・シンフォニーホール&サントリーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00681 ¥3200+税ナミ・レコードWWCC-7887 ¥2500+税1998年録音の本作、ガーシュウィン生誕120年にあたる2018年に新リマスタリングで復刻。サクソフォン・アレンジによるその作品集である。曲によって中村均一によるソロ及び彼も参加するアルモ・サクソフォン・クァルテットが吹き分け、ピアノで白石光隆が参加するトラックも。感嘆すべきは中村のコクのある美しい音色と絶妙な歌心(トラック①を)。時に大胆なアレンジを聴かせるクァルテットによる「ラプソディー・イン・ブルー」や「パリのアメリカ人」は、音域の異なる4種の楽器と4名による音楽的呼吸が完璧。胸のすくような快演とはこのことか。アレンジものと侮るなかれ。 (藤原 聡)タイトルにある通り、これはまさにギターによる「旅」であり、「対話」だ。リズム、メロディ、ハーモニーを1人で操れるのが、この楽器の本来の魅力のはず。が、日本のギター界をリードする3人の名手たちは、あえてアンサンブル楽器としての可能性を追究。元より数少ないギタートリオのためのオリジナル作品を蒐集してみれば、自ずと年代は近現代に偏り、作曲家の出自は逆にワールドワイドへ。各曲が自然な形で纏う、異なる民俗色や空気感。そして、3人で呼吸を一にすることでしか生み出し得ない、“小さなオーケストラ”を思わせる、多彩な音色と奥の深い表現力。全く新たな響きへの扉が、いま開かれた。(笹田和人)音楽監督・本名徹次が率いるベトナム国立交響楽団。様々な努力を重ねて連携を深める様子がメディア等でも伝えられる彼らの、昨年の来日公演の模様が早くもCD化。「新世界より」は意欲にあふれ、荒々しいまでのエネルギーとしなやかな歌心を聴かせる。知られた名曲に臆せず全力でぶつかる演奏はもはや稀少であり、心洗われる思いになる。後半に音が荒くなる瞬間はあるものの、外面的なことを超えて、表現することへの純粋な喜び、気迫というものは得難い特徴だろう。ベトナムの楽曲はこなれた好演で、バン作品は師事したショスタコーヴィチの影響も楽しい、聴きやすい短編。(林 昌英)永岡信幸は国内外でのキャリアを着実に積み上げ、武蔵野音楽大学教授としても信頼を集めるピアニスト。3枚目となるアルバムはショパンのピアノ・ソナタ全3曲を収録。隅々まで隙がなく丹精に織り上げられる技巧と同時に、そこはかとなく余裕のある音楽的表現を聴かせるあたりは、まさにベテランの領域である。若々しい情熱に満ちた第1番(演奏機会の少ない作品)に対峙する永岡の真摯な姿勢、第2番「葬送」で聴かせるふくよかな低音、第3番の緩徐楽章やフィナーレでの抑制の効いたテンポ感の中で作られる高揚感など、細部までじっくりと味わいたい。 (飯田有抄)
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