eぶらあぼ 2019.1月号
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70©Marco Borggreve2019.1/27(日)札幌コンサートホールKitara(小)、1/28(月)武蔵野市民文化会館(小)(完売)、1/31(木)京都コンサートホール(小)、2/1(金)紀尾井ホール、2/2(土)名古屋/宗次ホール※プログラムは公演により異なります。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。http://www.pacific-concert.co.jp/ベルチャ弦楽四重奏団一つの心と身体を持つグループだと感じていただければ取材・文:寺西 肇Interview 伝統に縛られず、文化的背景の異なる4人の奏者が自在かつ大胆に形創る、しなやかで鮮烈な音楽で、世界中の聴衆の耳を釘付けにしているベルチャ弦楽四重奏団。多層的なレパートリーのエッセンスとも言うべき、2つのプログラムを携えての日本ツアーを前に、ヴァイオリンのコリーナ・ベルチャとアクセル・シャハーに聞いた。 「私たちは全く異なる個性を持ち、一癖あり、少しだけ執念に燃えて、鮮烈さを保とうと常に努力しています。こんな強みを寄せ集めて、説得力ある演奏を目指します。作曲家が作品で表現したいと願ったものこそ、私たちが信じる音楽。皆の個性が輝くと同時に、一つの心と身体を持つグループだと感じていただければ…」 1994年、英国王立音楽大学の学生によって結成。世界の第一線で活躍を続ける。 「宝石のような作品を貪欲に開拓しようと集まり、幸運にも素晴らしい師に巡り会いました。遅いスタートでしたが、それが情熱の糧に。最後のコンサート、一緒に弾ける最後の日まで、この情熱が持続できればと考えています」 ルーマニア出身のベルチャはじめ、4人の国籍はすべて異なる。 「共通した興味を持った人間が、集まった結果。一つの身体のように演奏し、均質的な音の響きに到達するのがいかに難しいか。その過程には、長所と短所の両方が存在する。当初は分からずとも、今や骨身に染みました。しかし、その利点たるや、負の面を大いに上回るのです」 来日公演のプログラムの一つは、モーツァルトら3人の作曲家による、弦楽四重奏曲の最終期の作品を組み合わせた。 「3人が晩年に自身の人生をどう捉えて作曲に至ったかをお聴きいただくのは、興味深いアイディア。また、彼らは異なる時代に亡くなりましたが、例えば、バルトークはアイロニカルで、憂鬱さを感じさせるなど、各々が特有の空気感を孕んでいます」 そしてもう一つのプログラムは、オール・ベートーヴェン。演奏活動の軸であり「これほどの多様性を持つ作曲家は他にありません。演奏するたび、これ以上の音楽はないと感じる。生涯をかけての挑戦です」という。今回は初期・中期・後期から、それぞれ佳品を一曲ずつ厳選した。 楽聖の作品解釈において、特に問題になるのが長いスラー。彼らは「長いスラーこそ、実は、はるかに多くのフレーズを表現している」と説明。 「これら短いフレーズの間に関連性を作り、長いフレーズにするのが、特に難しい。このため、右手の技巧を最大限に生かし、弓の返しを隠すように気を配っています」 グループの最終目標を尋ねると、「より多くのレパートリーを取り上げ、持てる能力の最高を目指し、常に良い方向に境界を押し広げ、表現の新しい方法を探求する。そして、人々の心の琴線に触れ、室内楽に親しんでいない人たちにも、この世界の限りない可能性を知ってもらいたいですね」と締め括った。クリスチャン・リンドバーグ トロンボーンリサイタル“ソリスト”として待望の来日を果たす鬼才の音楽世界文:寺西 肇 “トロンボーンのパガニーニ”の異名をとる巨匠が再び舞い降りる。2017年に首席指揮者としてノルウェーのアークティック・フィルを率いて来日、鮮烈なサウンド創りで我々を驚かせたクリスチャン・リンドバーグ。今回は超絶技巧を駆使する世界的トロンボーン奏者、そして、独創的な響きを操る作曲家の顔で登場し、旋風を巻き起こす。 スウェーデン出身。トロンボーン奏者として20代から頭角を現し、世界的な一線楽団と共演。委嘱作品の初演も重ねた。その一方、志半ばで諦めていた作2019.1/29(火)19:00 東京文化会館(小)問 プロアルテムジケ03-3943-6677https://www.proarte.jp/©Mats Bäcker曲活動を39歳で再開。サイモン・ラトルの勧めで、2000年から指揮活動も。より深みを増した音楽観に、「その選択は、正しかったようです」と本人は振り返る。 今回は、自身も創作過程に深く関わり、その録音が世界的名声への第一歩となったサンドストロム「モーターバイク協奏曲」が軸に。「日出ずる国へ」ほか数々の自作、ロマン派の魅力的な旋律や現代の独創的なサウンドなどを自在に交えて、エンターテインメント性と芸術性を両立させる、巨匠の音楽世界の粋を披露する。共演はピアノの白石光隆。

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