eぶらあぼ 2019.1月号
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66大野和士(指揮) 東京都交響楽団喜劇と悲劇が交錯する近代音楽の深淵文:柴田克彦第872回 定期演奏会Aシリーズ 2019.1/15(火)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 https://www.tmso.or.jp/ 大野和士率いる都響が10月定期で披露したシュレーカーとツェムリンスキーの作品を聴いて、同コンビのプログラミングの妙と、大野が清新な抒情美や色香を都響に付与しているのを実感した。同様の感触を期待できるのが2019年1月定期のAシリーズ。特にマーラーの「少年の不思議な角笛」(5曲)は要注目だ。マーラーの交響曲演奏に実績をもつ同楽団が、大野のもとで、歌曲─特に多彩で深い「角笛」─をいかに表現するのか? 管弦楽も重要なこの曲に大野がいかなる美感をもたらすか? など興味は尽きないし、独唱がイアン・ボストリッジとなれば期待はいっそう膨らむ。彼は、ベルリン&ウィーン・フィル等の一流楽団と共演を重ね、録音も評価の高いイギリスの世界的テノール。歌曲の繊細極まりない歌唱は現役随一ともいえるボストリッジと同コンビのコラボには、マーラー歌曲の深淵を抉る名演の予感が漂う。 前プロにはマーラーと同時代のイタリア出身の作曲家ブゾーニの「喜劇序曲」が置かれている。《フィガロの結婚》に似た20世紀版モーツァルト序曲ともいえるこの曲の珍しい生演奏とマーラーとの比較も見どころだ。そして後半は、プロコフィエフの交響曲第6番。大野が「戦争の犠牲者のために書かれ、作曲者の個人的な思いは(有名な第5番よりも)この第6番にこそ込められている」(年間パンフ)と語る同曲は、「角笛」の後に置かれるとより思索的な意味を増す。さらに終楽章の「全てを笑い飛ばすようなギャロップ」(同)は、1曲目の「喜劇序曲」への回帰を示唆するかのよう。実に凝ったこのプログラム、足を運ぶ価値大だ。イアン・ボストリッジ ©Sim Canetty-Clarkeトッパンホール ニューイヤーコンサート 2019新年の幕開けにふさわしい若手アーティストたちの饗宴文:伊熊よし子2019.1/6(日)15:00 トッパンホール問 トッパンホールチケットセンター03-5840-2222 http://www.toppanhall.com/ 毎年、創意工夫を凝らした斬新なプログラムで聴き手を惹きつけるトッパンホールのニューイヤーコンサート。2019年1月6日にはまさに個性派アーティストが勢ぞろいする。 プログラムは、サクソフォンの住谷美帆がソプラノからバリトンまで4本の楽器を持ち換えて演奏するムソルグスキー「展覧会の絵」(長生淳編)からスタート。金子三勇士との共演で超絶技巧を華やかに奏でる。バンドネオンの三浦一馬は自身の編曲によるJ.S.バッハ「無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番」の「シャコンヌ」で新たな世界を切り拓く。チェロの岡本侑也は藤倉大の「osm~無伴奏チェロのための」(トッパンホール15周年委嘱作品、2016年ジャン=ギアン・ケラス初演)で、いまの充実を音に託す。 ピアノ界期待の新星、藤田真央はブラームス(ソロ)とルトスワフスキ(金子との共演)の「パガニーニ変奏曲」で瑞々しいピアニズムを披露する。自然に、豊かな歌心をもって演奏する妙技に注目だ。さらに「弦のトッパン」が輝かしい未来を想定して世に送り出すのが、2007年生まれのヴァイオリニスト村田夏帆。18年イタリアのイル・ピッコロ・ヴィオリーノ・マジコ国際コンクールの優勝者で、ピアノの原嶋唯とヴィエニャフスキで若さあふれる弦を遺憾なく発揮する。 新年の幕開けを彩る推進力に富んだ彼らの演奏から、活力を受け取りたい。左より:三浦一馬 ©Shigeto Imura/岡本侑也 ©Shigeto Imura/藤田真央 ©Shigeto Imura/住谷美帆 ©Shigeto Imura/金子三勇士 ©Ayako Yamamoto/村田夏帆/原嶋 唯大野和士 ©Rikimaru Hotta
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