eぶらあぼ 2019.1月号
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53山田和樹(指揮) 読売日本交響楽団スペインの巨匠を迎えて贈る、色彩感溢れる香り高いサウンドに期待文:柴辻純子第213回 土曜・日曜マチネーシリーズ2019.1/12(土)、1/13(日)各日14:00 東京芸術劇場 コンサートホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 https://yomikyo.or.jp/ 2018年4月より読売日本交響楽団首席客演指揮者を務める山田和樹が「土曜・日曜マチネーシリーズ」に登場する。スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者を経て、現在はモナコ公国の名門モンテカルロ・フィルの芸術監督兼音楽監督など国際的にキャリアを積む山田が指揮するのは、ラヴェルとリムスキー=コルサコフ、色彩感豊かなオーケストレーションが輝く二人の作曲家によるプログラム。 「高雅で感傷的なワルツ」は、もともとはシューベルトのワルツを意識してラヴェルが書いた7曲のワルツとエピローグから成るピアノ曲集。初演の翌年(1912年)、依頼を受けてオーケストラ用に編曲され、バレエ音楽として発表された。テンポの異なるワルツが切れ目なく続く、華やかさと洗練に満ちた音楽である。 ラヴェル「ピアノ協奏曲」ではスペインの巨匠ホアキン・アチュカロがピアノ独奏を務める。読響とは、1990年、2016年に続き3度目の共演。前回のファリャ「スペインの庭の夜」では鍵盤のタッチの微妙な変化で繊細な音色を作り出す、格調ある香り高い演奏を聴かせてくれた。今回は、ジャズやスペイン・バスク地方(アチュカロの出身地でもある)の音楽の要素も含まれる協奏曲。才気煥発の技巧に加え、独特の音色や味わい深い表現に期待が高まる。 後半は、リムスキー=コルサコフの「シェエラザード」。異国情緒あふれる華麗な音絵巻では、山田の渾身のタクトで、読響の名手たちのソロや豊穣なサウンドが堪能できるだろう。ホアキン・アチュカロ小林研一郎(指揮) 日本フィルハーモニー交響楽団新年を開く二大巨匠の熱き共演文:江藤光紀第707回 東京定期演奏会2019.1/25(金)19:00、1/26(土)14:00 サントリーホール問 日本フィル・サービスセンター03-5378-5911 https://www.japanphil.or.jp/ 日本フィルの魅力といえば、ここぞというところで一丸となる豊かな感情表現力ではないか。それは80年代から常任、首席客演、音楽監督、そして現在は桂冠名誉指揮者として30年以上にわたりこのオケに深く関わってきた“炎のマエストロ”小林研一郎のイズムがしっかりと根を下ろしているということでもある。コバケンの音楽は日本人のウエットな情感になんとも強く訴えかける力を持っているのだ。 2019年初月の東京定期演奏会は、コバケンがシューマンの「チェロ協奏曲」で同世代のもう一人の巨匠・堤剛と共演するのに注目だ。堤はスケールの大きな演奏で10代から国際的に活躍し、教育面においても戦後日本の音楽界を支えてきた重鎮。ひとたび舞台に立つと強いオーラが会場に流れる気を支配する。エキゾティシズムを帯びた哀愁の表現に始まり、大らかに歌う中間楽章を経て、リズミカルな終楽章まで休みなく演奏されるこの協奏曲には、渋い歌謡性から華麗な技巧まで多彩な表現力が求められる。巨匠たちの解釈やいかに。 後半はチャイコフスキーの交響曲第3番「ポーランド」。5楽章構成で、終楽章にはポーランドの舞曲ポロネーズが登場することからこの名がついた。後期三曲の交響曲に比べると演奏機会こそ多くないが、チャイコフスキーならではのダイナミズムやメランコリーもたっぷり味わえる。コバケンは何度もこの曲を取り上げ、レコーディングまでして魅力を伝えてきた伝道師。日本フィルと一体となった燃焼度の高い演奏で、曲の真価を浮かび上がらせてくれるはずだ。堤 剛 ©鍋島徳恭山田和樹 ©読響小林研一郎 ©山本倫子
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