eぶらあぼ 2019.1月号
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49鈴木雅明(指揮) バッハ・コレギウム・ジャパン 「第九」ピリオド楽器による刺激に満ちた新しい「第九」文:飯尾洋一2019.1/24(木)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 https://www.operacity.jp/ 「第九」といえば、暮れの風物詩…と言いたいところだが、1月に「第九」を演奏するのが鈴木雅明指揮バッハ・コレギウム・ジャパン。なるほど、その手があったか! と思わず膝を叩いてしまう。12月後半の集中豪雨的な「第九」ラッシュを過ぎて年が明け、1月も下旬に入って寒さもいっそう厳しくなった頃に、あらためて新鮮な気持ちで向き合うベートーヴェンの偉大な傑作。そもそもバッハ・コレギウム・ジャパンにとって、年末はヘンデル「メサイア」の季節だ。「第九」は1月。これは絶妙なタイミングではないだろうか。 そして、ピリオド楽器による「第九」演奏という点でも、貴重な機会となる。古楽演奏が盛んとなった現在であっても、作曲当時の楽器や奏法に依拠した「第九」を聴く機会はきわめて限られている。日本でもっとも頻繁に演奏される交響曲でありながら、あたかも初めて「第九」を聴くような気持ちで作品に接することができるだろう。 バッハ・コレギウム・ジャパンのベートーヴェンといえば、2017年2月の「ミサ・ソレムニス」が記憶に新しいところ。熱気と高揚感にあふれ、特別な瞬間が何度も訪れるような記念碑的名演だった。オーケストラと合唱との一体感もバッハ・コレギウム・ジャパンならでは。万全の独唱陣とともに奏でられる「歓喜の歌」が今から待ち遠しい。ロレンツォ・ヴィオッティ(指揮) 東京交響楽団世界が注目する俊才のタクトで聴く圧巻の“ヴェルレク”文:林 昌英第667回定期演奏会 2019.1/12(土)18:00 サントリーホール第144回名曲全集 2019.1/13(日)14:00 ミューザ川崎シンフォニーホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ 今年度、東京交響楽団の定期演奏会が、なかなか熱い。特にこの秋は、スダーンの緻密にして自然体で美しいベートーヴェン、エッティンガーの超個性的なベルリオーズの熱狂的快(怪)演、大いに聴衆の感動と興奮を誘ったノットの雄大なラフマニノフ。タイプの違う名演を連続している。 そんな充実の東響、新年1月定期と川崎での「名曲全集」に登壇するのが、ロレンツォ・ヴィオッティ。まだ20代ながら、欧州での飛躍が著しい俊才だ。既に日本の楽団にも客演を重ねて、独墺・仏・露の名作を中心に、瑞々しい感性と色彩感あふれる演奏で評価を高めてきた。そして東響と3度目の共演となる今回、いよいよイタリアもの、それもヴェルディの「レクイエム」を取り上げる。50歳で急逝した名指揮者マルチェッロ・ヴィオッティの息子である彼が、満を持してイタリアの代表的傑作を取り上げる覚悟はいかばかりか、推して知るべし。 ソリストも豪華。欧米の檜舞台に出演を重ねてきた無二のプリマドンナ森谷真理(ソプラノ)、力強い美声でオペラにコンサートに活躍中の清水華澄(メゾソプラノ)、押しも押されもせぬ日本のドラマティック・テノール福井敬、欧州トップの舞台で活躍、東響とも共演済みのリアン・リ(バス)。中でもソプラノが圧倒的存在感を見せる終曲「リベラ・メ」を、森谷の世界水準の歌唱で堪能できるのは嬉しい。合唱は大曲でも高い技量と迫力を聴かせてきた東響コーラス。全てに役者が揃った。あとはロレンツォと東響が作りあげる、熱きヴェルディの音に浸るのみ。ロレンツォ・ヴィオッティ ©Marcia Lessa鈴木雅明 ©Marco Borggreveバッハ・コレギウム・ジャパン ©大窪道治
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