eぶらあぼ 2019.1月号
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162CDCDCDCDアルカン ピアノ・コレクション4「ファウストのように」/森下唯FUN!/The Rev Saxophone Quartet小畠伊津子 ピアノ・リサイタル高橋アキ プレイズ ハイパー・ビートルズ volume Ⅱアルカン:大ソナタ、3つのメヌエット、和解―小さなカプリス、サルタレッロ森下唯(ピアノ)J.S.バッハ(伊藤康英編):G線上のアリア/ビゼー(萩森英明編):カルメン幻想曲/ハービー・ハンコック(宮越悠貴編):Watermelon Man/稲森安太己:ふるさと狂詩曲/坂東祐大:Mutations:A.B.C.The Rev Saxophone Quartet【上野耕平 宮越悠貴 都築惇 田中奏一朗】ラヴェル:亡き王女のためのパヴァーヌ/ファリャ:アンダルシア幻想曲/スヴェーリンク:変奏曲「我が青春は既に過ぎ去りぬ」/ショパン:スケルツォ第1番・第3番、バラード第3番、ノクターン第20番(遺作)/プーランク:エディト・ピアフを讃えて 他小畠伊津子(ピアノ)J.レノン&P.マッカートニー:ザ・ビートルズ1962-1970(J.ケージ編)、イエスタデイ(J.フリッチュ編)、オール・マイ・ラヴィング・リサウンディッド(藤枝守編)、追憶のウォルラス(T.ライリー編)、エデュイエ・ブギ(ヘイ・ジュード)(池辺晋一郎編)、ノルウェーの森(R.カリムリン編)、ナッシング・イズ・リアル(A.ルシエ編) 他高橋アキ(ピアノ)コジマ録音ALCD-7225 ¥2800+税日本コロムビアCOCQ-85442 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7884 ¥2500+税カメラータ・トウキョウCMCD-28361 ¥2800+税超絶技巧を見事に音楽表現へと昇華させていく豊かな感受性と表現力を持ち合わせた森下唯。“演奏不可能”とも評されたアルカンの作品から、これほどまでに多彩な表情を引き出し、作品の美質を示すことができるピアニストはそういないだろう。既にリリースしている3枚のディスクでそれを証明してきたが、今回の「大ソナタ」でさらに確信させてくれた。アルカンの精神世界、人生の記録が描き出され、曖昧な調性や“作為的”とも言えるテンポ設定など無数の仕掛けが施されたこの作品から、森下は作曲家の魂の声ともいうべき歌を紡ぎ出し、楽曲のあるべき姿を提示している。(長井進之介)圧倒的なテクニックと、快い立体的なサウンド。「本気で音で遊ぶ」との謳い文句は、伊達じゃない。気鋭の若手サクソフォン奏者4人による、スーパー・クヮルテットの第2弾アルバム。収録された5曲中、4曲が彼らのための新曲またはアレンジだ。バッハからビバップ、難しい和声を含んだオリジナルの狂詩曲、果ては都会の喧騒を思わせる実験音楽まで。4人はリズムや息遣いのみならず、グルーヴ感覚まで一つにしながら、変幻自在に吹きこなしてゆく。そのハーモニーからは「サクソフォンの可能性を、とことんまで極めたい」との真摯な思いと、音楽を奏でる喜びの両方が、ひしひしと伝わってくる。(笹田和人)多彩な曲目を収めた小畠伊津子のアルバムは、音楽的に極めて雄弁でありながら、押し付けがましさのない卓越したピアノ表現に満ちた一枚。ラヴェルの「亡き王女のためのパヴァーヌ」では、非常に音の伸びのよい楽器を自在に操り、ファリャの「アンダルシア幻想曲」では陽性にして妖艶な音楽を展開。さりげなく挿し挟んだスヴェーリンクは、一服の清涼剤のような清々しいバロック。ショパンのスケルツォ第1番は強調する声部がときに新鮮で、心のざわめきを喚起する。プーランクの「エディト・ピアフを讃えて」は随所に現れる美しい間合いに、思わずため息が漏れる。(飯田有抄)団塊の世代の音楽のアイコン、ビートルズのナンバーを、高橋アキやその夫・秋山邦晴(音楽評論家)と交友のあった作曲家たちにアレンジしてもらったアルバム『ハイパー・ビートルズ』の再録音第2弾。ジョン・ケージに始まり、ミニマリズムなど今では大家となった個性派が編曲者にずらりと名を連ねる。耳になじんだメロディが、各人各様の創意工夫を施され、特徴的ないでたちで登場。最後のルシエ編曲による「ナッシング・イズ・リアル」は、ティーポットの蓋を開け閉めして作り出される音響の滲みが実にポエティックだ。そしてそれと共に時代の香気が懐かしさをもって立ちのぼってくるのだった。(江藤光紀)
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