eぶらあぼ 2019.1月号
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158CDCDCDCDプロムナード/住谷美帆ドビュッシー:ベルガマスク組曲、12のエチュード/菊地裕介適正律クラヴィーア曲集第1集・第2集 第13番~第18番/武久源造南天の花 金子美香が歌う日本の歌グラズノフ:サクソフォン協奏曲/ショパン(旭井翔一編):12の練習曲第4番op.10-4/ムソルグスキー(長生淳編):展覧会の絵/シューベルト(長生淳編):4つの即興曲D899 第3番/ボノー:ワルツ形式によるカプリス住谷美帆(サクソフォン)イリヤ・ラシュコフスキー(ピアノ)ドビュッシー:ベルガマスク組曲、仮面、喜びの島、12のエチュード菊地裕介(ピアノ)J.S.バッハ:適正律クラヴィーア曲集第1集より第13番~第18番(チェンバロによる)、同第2集より第13番~第18番(フォルテピアノによる)武久源造(チェンバロ/フォルテピアノ)團伊玖磨:花の街/橋本國彦:お菓子と娘/山田耕筰:中国地方の子守唄、南天の花/中田喜直:桐の花/別宮貞雄:さくら横ちょう/畑中良輔:花林/平井康三郎:秘唱/猪本隆:悲歌/武満徹:小さな空/三善晃:ほおずき/木下牧子:竹とんぼに、夕顔/石桁眞禮生:ふるさとの/川口耕平:よかった 他金子美香(メゾソプラノ)朴令鈴(ピアノ)キングレコードKICC-1473 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCT-00154 ¥3000+税コジマ録音ALCD-1180 ¥2800+税OMFKCD-2064 ¥2500+税2018年7月開催の第9回国際サクソフォンコンクールにて優勝を果たした住谷美帆のデビュー盤である本作は、彼女の多彩な表現力がフルに発揮された瞠目の出来栄え。最初のグラズノフは美しく途切れぬ歌と円滑なフレージングにそれが息の物理的限界があるサクソフォンという楽器であることを一瞬忘れさせるほどだし、ショパンでは何の苦もないかの如くブラヴーラな技巧を披露。「展覧会の絵」では4種の楽器を持ち替えながら雄弁に各楽想を描き分け、最後のボノーではこの難曲から最上の音楽性を以てノーブルな味わいを引き出している。正に逸材。共演のラシュコフスキーも見事だ。(藤原 聡)フランスとドイツで学び、卓越した技術と豊かな表現力によって多彩なレパートリーを弾きこなしてきた菊地裕介。ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲やラヴェルのピアノ・ソロ作品の全集などに取り組み、その音楽性を示してきた彼が今回満を持して臨んだのはドビュッシー。作曲家の目線を絶えず大切にしてきた彼は、楽譜から実に様々な情報を読み取り、音として聴き手に提示してくれる。それゆえ、楽譜に自らの希望を明確に示したドビュッシーの作品は菊地のピアニズムとこの上なく相性が良い。音響を自在に操ることで更なる高みへと昇華させている「エチュード」は必聴だ。(長井進之介)「バッハ独特の音楽修辞学の理解と、真に相応しいテンポを探ること」。武久源造は「適正律(平均律)クラヴィーア曲集」へ対峙するにあたり、心を砕く2点を挙げる。13〜18番を収録した第3弾は、また構成を変えて、チェンバロで第1巻、フォルテピアノで第2巻を、番号順に収録。足鍵盤付きのせいもあり、壮大な音の広がりを感じさせるチェンバロに対して、意外に内省的なフォルテピアノの対比がまず面白い。そして、武久のプレイは、相変わらず鮮烈。スリリングさをも孕んだ作品の全体像を見据えつつ、ほとばしる熱情と冷静な知性との絶妙なバランスを保ち、聴く者に至高の愉悦をもたらす。(寺西 肇)2018年夏、バイロイト音楽祭にドミンゴ指揮《ワルキューレ》のグリムゲルデ役でデビュー。デビュー・アルバムが世界に羽ばたくメゾソプラノにこそ相応しい日本歌曲集なのも嬉しい。しかも表題曲である山田耕筰を筆頭に、中田喜直から武満徹までメインストリームに加えて畑中良輔や平井康三郎、猪本隆など声楽人には必須の佳曲まで幅広く網羅。限られた録音枠の中に、岸田衿子、金子みすゞ、やなせたかしの名詩にそれぞれしっかりと寄り添うしみじみとした味わいを持った、いま最も人気のある現代作曲家の一人、木下牧子の作品を4編も収録するそのセンスもかなり素敵だ。 (東端哲也)

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