eぶらあぼ 2019.1月号
159/195
156CDCDCDSACDショパン:ピアノ協奏曲第2番、ノクターン/辻井伸行&アシュケナージ&ベルリン・ドイツ響グレイテスト・ギターズ ~ギター名器聴き比べ~/福田進一ダマーズ:フルート作品集/寺田愛ハイドン:交響曲集 Vol.5/飯森範親&日本センチュリー響ショパン:ショパン:ピアノ協奏曲第2番、ノクターン第1番・第2番・第20番「遺作」辻井伸行(ピアノ)ウラディーミル・アシュケナージ(指揮) ベルリン・ドイツ交響楽団J.S.バッハ:プレリュード 組曲ニ長調(原曲:ト長調)BWV1007より、G線上のアリア、フーガ イ短調(原曲:ト長調)BWV1000/ウォルトン:アレグロ 5つのバガテルより/バリオス:マズルカ・アパシオナータ/ポンセ:ルンバ 4つの小品より、エストレリータ 他福田進一(ギター)ジャン=ミシェル・ダマーズ:フルートとピアノのためのスケルツォ、フルートとピアノ、チェロのためのコンセールによるソナタ、2本のフルートとピアノのための三重奏曲、フルートとオーボエ、ピアノのための三重奏曲、フルートとピアノのための変奏曲寺田愛 浅川寧(以上フルート) 金子亜未(オーボエ) 中木健二(チェロ) 瀬尾和紀(ピアノ)ハイドン:交響曲第50番・第70番・第2番・第9番・第88番「V字」飯森範親(指揮)日本センチュリー交響楽団収録:2017年5月、ベルリン(ライヴ)他エイベックス・クラシックスAVCL-25978 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-4046 ¥3000+税レック・ラボ(録音研究室)NIKU-9019 ¥2800+税収録:2016年8月&12月、いずみホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00679 ¥3200+税辻井伸行の新譜のメインは、アシュケナージ指揮、ベルリン・ドイツ交響楽団とのショパンの協奏曲第2番のライヴ録音(2017年5月、ベルリンのフィルハーモニー)。辻井とアシュケナージの相性の良さが互いの美質を高め合い、ソリストとオーケストラの音楽づくりのいたるところに音楽性の合致が感じられる。1楽章のエレガントなロマン性、2楽章の夢のような可憐さ、3楽章の物悲しくも華やかなフィナーレはいずれも、柔らかな音質をベースに、音楽的な勢いと広がりを聴かせる。3曲のノクターン(第1、2、20番)のスタジオ録音は一転して親密な空気を纏う。 (飯田有抄)福田進一のこれまでの名録音の数々で“ギター名器聴き比べ”を。日本、アメリカ、スペイン、ドイツの名器を弾きわけ、各々の特性が際立つ演奏が選りすぐられた。楽器自体に注目してまとめて聴ける機会は貴重だが、バッハでの考え抜かれた対位法表現と安定の名技、バリオスやポンセでの多彩な音色と哀愁など、やはり名匠の名演自体が“聴き比べ”にも魅力と説得力を生み出している。福田自身による各楽器についての解説は、あたかもワインの味を表現するかのような、明確かつ豊かな言葉が印象的。名ソムリエの案内で熟成されたギターの違いを味わえる、なんとも贅沢な一枚。(林 昌英)ダマーズは2013年に85歳で没したフランスの作曲家。作風は前衛とは一線を画し、古典的な美意識を基礎にして、フランス人らしいひねりの効いた和声感覚の上に、雅びで伸びやかな旋律を展開している。その美に魅せられた若手フルーティスト寺田愛が中心となり、室内楽作品集を編んだ。時にアグレッシヴな表情も見せるピアノ(瀬尾和紀)とのデュオ曲2曲と、そこにもう一つ楽器を加えた3重奏曲3曲が収録されている。チェロが入ると響きに厚みが出、2本のフルートは互いに戯れあい、オーボエとの協奏では音色のコントラストにほのかな妖しさも漂う。全編がたおやかで贅沢な田園の奏楽だ。(江藤光紀)飯森&センチュリー響のハイドン・シリーズ第5弾。第50番は、引き締まった力感が横溢する中に、こまやかなニュアンスや優美さが漂う。第70番も同様で、各声部のバランスがよく、「ジュピター」交響曲の先取りをなす第4楽章の精緻なフーガは特に聴きものだ。第2番、第9番も丁寧な造作で、レアな曲の特質が明示される。第88番は、オーセンティックな表現と晴れやかな活力を共生させた好演。第4楽章ではハイドンの魅力が全開となり、最後の畳み込みにも圧倒される。1枚単位のリリースによって、こうした作品をじっくりと味わえるのも実に喜ばしい。 (柴田克彦)
元のページ
../index.html#159