eぶらあぼ 2018.12月号
61/223
58ヤン・パスカル・トルトゥリエ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団熟練の技で際立つ若きチャイコフスキーとショパンの旋律美文:林 昌英第598回 定期演奏会 ジェイド〈サントリーホール・シリーズ〉2019.1/24(木)19:00 サントリーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ 1947年生まれの名匠ヤン・パスカル・トルトゥリエが、1月に新日本フィルの指揮台に立つ。20世紀の代表的な名チェリスト、ポール・トルトゥリエの息子で、ヴァイオリニストとして活躍しながら指揮者としてもその才能を発揮。マンチェスターのBBCフィルハーモニックの首席指揮者を長く務め、客演でも色彩感ある整ったアンサンブルを作りあげる職人的な手腕で、世界中の名オーケストラに登壇してきた。近年は彼が東京の実演に登場する機会が減少気味だったため、待望の舞台となる。また、新日本フィルは客演指揮者ともその意を十全にくみ取った名演が多く、今回も期待が高まる組み合わせとなる。 メイン曲はチャイコフスキー交響曲第1番「冬の日の幻想」。作曲者20代の若々しい力感と旋律美にあふれる意欲的な大作で、特に第2楽章の哀愁に満ちた美しさは筆舌に尽くしがたく、特別に愛好するファンの多い作品でもある。あえてこの曲を選択したトルトゥリエがどう聴かせてくれるのか。絶妙な好演が体験できそうだ。 さらに注目を集めるのは、クシシュトフ・ヤブウォンスキをソリストに迎えたショパンのピアノ協奏曲第2番。ポーランドを代表する名手で、ショパンコンクールの審査員も務める彼によるショパンは、まさに真打ちによる鉄板演目。しかも、2017年2月には同じく新日本フィルとの共演で同第1番を披露しており(指揮はアントニ・ヴィット)、約2年の間に同団体とショパン2曲を聴かせるのも貴重だ。練達の名匠たちの共演で、傑作の真髄を体感する。高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団精緻なサウンドと充実のソリスト陣による“歓喜”のとき文:柴田克彦第九特別演奏会 2018 12/28(金)19:00 東京文化会館問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 年末「第九」は数あれど、ひと味違った楽しみを味わうならば、東京シティ・フィルの公演がお薦めだ。他との大きな違いは、期待の若手奏者をソリストに迎えた協奏曲が最初に演奏されること。今年は、2000年韓国生まれのイ・ユジンが、モーツァルトのオーボエ協奏曲を披露する。彼女は17年の日本管打楽器コンクールで第1位を獲得した逸材であり、曲は同楽器を代表する名作。ここは新春に向けて、未来を担う10代の妙技に耳を傾けよう。 本編の「第九」は、話題の実力派ソリスト陣が要注目。知的で多彩な音楽性を誇るソプラノの半田美和子、ワーグナーを得意とし、マーラーの交響曲等でも絶賛されているメゾソプラノの池田香織、イタリア・オペラの主役で活躍しているテノールの宮里直樹、シカゴ・リリック・オペラで腕を磨き、近年日本でも熱い視線が注がれているバリトンの大西宇宙…と揃った国内トップ級の人気歌手たちが、フィナーレに精彩をもたらす。加えて、評価の高い東京シティ・フィル・コーアの合唱も聴きもの。今年も7月の飯守泰次郎指揮によるブルックナーのミサ曲等で実力を示した彼らの、全力の歌声も見逃せない。 そして4年目を迎えた常任指揮者・高関健と東京シティ・フィルのコンビネーション。精緻な彫琢と堅牢な造型でオケをビルドアップさせる高関のもと、同楽団の技量は着実に向上し、定期演奏会でも手応えのある好演を続けている。ゆえに一年の集大成というべき「第九」でみせる進化への期待も十分。何より、常に音楽の最上の姿を追求する高関が、濃密な歓喜をもたらしてくれる。イ・ユジンヤン・パスカル・トルトゥリエクシシュトフ・ヤブウォンスキ ©Julia Jablonska高関 健 ©大窪道治半田美和子 ©Akira Muto池田香織 ©井村重人宮里直樹大西宇宙 ©Dario Acosta
元のページ
../index.html#61