eぶらあぼ 2018.12月号
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54ダニエル・ハーディング(指揮) パリ管弦楽団強力なコンビ、最後の来日は王道の名曲で文:江藤光紀12/14(金)19:00 京都コンサートホール12/16(日)15:00 東京芸術劇場 コンサートホール12/17(月)、12/18(火)各日19:00 サントリーホール問 カジモト・イープラス0570-06-9960/京都コンサートホール075-711-3231(12/14のみ)  東京芸術劇場ボックスオフィス0570-010-296(12/16のみ)http://www.kajimotomusic.com/※各公演のプログラム詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 ハーディングがパリ管弦楽団のシェフに就任したのは2016年。パリ管は彼の妥協を許さない姿勢に好感をもったようで、その直後の来日公演からハーディングは堂々と自分の音楽を展開していた。就任直後の指揮者の意図をここまで完璧に表現してしまうパリ管もさすがで、強力なコンビが誕生したと舌を巻いたものだ。ハーディングは来季をもってその任を満了するので、シェフとして来日するのはこれが最後となる。一期3年の在任期間で2回も聴けるのだから、日本の聴衆は幸運だ。 プログラムも振るっている。東京3公演、京都1公演のうち、お国ものはベルリオーズの「王の狩りと嵐」だけ。これは長大なオペラ《トロイアの人々》の間奏曲で、10分程度の楽曲だが、タイトル通りのダイナミックな音詩。この曲と組み合わされるのがベートーヴェン「田園」。パリ管の前身、パリ音楽院の管弦楽団はオペラ偏重のパリ19世紀の音楽界でベートーヴェンをいち早く紹介し、その演奏に感化されたベルリオーズはフランスにおけるベートーヴェンの伝道師となった。こうした点を念頭に、両者の嵐の表現などを比較してみるのも面白いだろう。ハーディングが得意とするマーラーからは「巨人」。ギリギリまで精度を上げた快演が期待できるのではないか。 いまやヴァイオリン界の最高峰に君臨するイザベル・ファウストが帯同し、ベートーヴェンとベルクの協奏曲を聴かせるのも豪華だ。筋の通った解釈と厳しい表現は、聴き手の居住まいを正させる。ハーディングの緻密なリードにどう反応するかに注目だ。プラハ国立劇場オペラ《フィガロの結婚》モーツァルトゆかりの劇場が繰り広げる《フィガロ》の愉悦文:岸 純信(オペラ研究家)2019.1/5(土)、1/6(日)各日15:00 東京文化会館 総合問 楽天チケット/コンサート・ドアーズ03-6628-5416 http://www.concertdoors.com/※他全国12会場で上演。詳細は上記ウェブサイトでご確認ください。 モーツァルトの《フィガロの結婚》に最も必要なもの─それは「練習に次ぐ練習」である。登場人物の数が多く、みな多弁で丁々発止のやり取りが続くから、稽古に稽古を重ねないとテンポよく進まない。だから、このオペラではチームワークが大切になる。主役から端役までみっちり練習を積んでこそ、活き活きとしたやりとりがステージで花開くのだ。 200年以上も前の作品ながら、《フィガロの結婚》の世界は今と変わらぬ価値観のもとにある。ストーリーを今風に纏めれば「ワンマン社長にセクハラされる女子社員とパワハラを受ける男性社員が婚約中で、管理職たちの横暴な振る舞いにも屈せず、社長夫人の応援も得て、無事に結婚に至る」といったものに。18世紀の物語なので楽譜上の肩書は伯爵、従僕、小間使いと仰々しいが、ドラマの本質はまさしく21世紀に通ずるものなのだ。 今回のプラハ国立劇場の舞台は、オーケストラ含めての引越し公演だが、この2月にお披露目されたばかりという出来立てほやほやのプロダクション。女性演出家マグダレーナ・シュヴェツォヴァーのカラフルな色使いのもと、「モーツァルトの人柄を直に知るオペラハウス」の面々が、緊密かつ息の合ったアンサンブルを聴かせてくれるだろう。また、今回は伯爵夫人役でイタリアの名花、エヴァ・メイ(東京、大阪公演のみ出演)が参加するから見逃せない。美貌を誇るべテランの彼女が、後輩世代がビシバシと歌い続ける中で、優雅さと喜劇性をどんな風に織り交ぜてくれるのか、楽しみにしている。《フィガロの結婚》よりイザベル・ファウスト ©Felix Broedeダニエル・ハーディング ©Julian-Hargreavesエヴァ・メイ

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