eぶらあぼ 2018.12月号
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38ブラームスのコンチェルトを同門のインキネンと共演!樫本大進 Daishin Kashimoto/ヴァイオリン取材・文:千葉 望 ソリストとして、またベルリン・フィルの第一コンサートマスターとして着実にキャリアを積み、大きな音楽家へと成長を遂げている樫本大進。最近国内ではソリストとして、2017年12月にフィリップ・ジョルダン指揮のウィーン交響楽団とメンデルスゾーン「ヴァイオリン協奏曲」を、今年2月にパーヴォ・ヤルヴィ指揮のNHK交響楽団とサン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」を演奏した。次は19年1月に、ピエタリ・インキネン率いるプラハ交響楽団の来日ツアーで、ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」のソリストを務める。 この協奏曲では06年にチョン・ミョンフン指揮のシュターツカペレ・ドレスデンと共演した録音が発売されており、重厚なチョン指揮のもと、当時20代の樫本の若々しい演奏を聴くことができる。 「その頃の僕はこの曲をゆっくりめのテンポで弾くのが好きでしたから、方向性は合っていたけれど、チョンさんの指揮は僕よりも重いくらいでした。それにまだ、自分がどう弾きたいのか具体的にわかっていなかったように思います。あれ以来何度かベルリン・フィルで伴奏を経験し、ずいぶん勉強になりましたね。また、最近の日本でのリサイタルでは好んでブラームスのヴァイオリン・ソナタを取り上げています。久しぶりの協奏曲ですが、どこか成長しているところがあると思うので、自分でも弾くのが楽しみです」 ベルリン・フィルに入ってからこの曲をソリストとして演奏するのは初めてのこと。コンマス席で共演したソリストはフランク・ペーター・ツィンマーマン、アンネ=ゾフィー・ムター、イザベル・ファウストら、錚々たるヴァイオリニストばかりだ。 「何しろすばらしい曲ですからね。僕は聴いている方が好きかな(笑)。ちょっとずつ途切れる曲ならやりやすいんですけれど、この曲では音楽のラインが長くて、それが始まりから終わりまで続いていきます。そのためうまくゲームプランを作るのがむずかしいのです」 スケールの大きな曲であり、さらに第1楽章冒頭からゆったりした音楽の流れが続くだけに、音の美しさや、流れを単調にしない多彩な表現力が求められる。 「ソリストとオーケストラの関係はさまざまですね。オケの音をよく聴いて演奏する人もいれば、そうじゃない人もいます。ソリストの立場で言うなら、よく聴くことも大事だし自分を強く打ち出すことも大事。自分の音楽をやらないと意味がないですからね。でも、そのためにはオケとのアンサンブルがうまくいく必要があります」 ベルリン・フィルの映像配信サービス「デジタル・コンサートホール」で、コンサートマスターとして演奏する樫本をさまざまな角度から見ていると、指揮者、ソリスト、オケすべてに細かく目配りし引っ張っていることがわかる。一方ソリストとして演奏する舞台でも、オケの音をよく聴きながら演奏する姿がある。両立に努力してきた彼ならではのブラームスが聴かれることだろう。 今回は同じザハール・ブロン門下だったインキネンとの共演であり、それがとても楽しみだという。フライブルク音楽大学時代も、ブロンが住むケルンへレッスンを受けに行くときにはいつも一緒に遊んだ仲である。日本では、日本フィルを指揮するインキネンとシベリウスの協奏曲を共演している。 この秋、日本フィルとの共演で来日していたインキネンにも今回のツアーについて訊ねてみた。 「大進とは何度も共演してきたけれど、ブラームスは初めてです。彼は天性の音楽家であり、その上、共演するオケとコラボレーションする精神力がとても高い。いつも私にインスピレーションを与えてくれる人です」 という答えが返ってきた。気心の知れた旧友同士の熱いコラボレーションに期待したい。

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