eぶらあぼ 2018.12月号
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35Prole1961年ベルリン生まれ。82年にベルリン国立歌劇場管の首席ホルン奏者となった後、90年代後半からバレンボイムの勧めで指揮者に転向。2003年にフランクフルト歌劇場での《影のない女》で『オーパンヴェルト』誌の年間最優秀指揮者に選ばれた。バルセロナ・リセウ大劇場音楽総監督の後、08年からフランクフルト歌劇場音楽総監督。ベルリン放送響、ウィーン響などに客演するほか、バイロイト音楽祭、ザルツブルク音楽祭、ウィーン国立歌劇場、ドレスデン国立歌劇場、バイエルン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場などで活躍。19年4月、読響の第10代常任指揮者に就任する。読響とのコラボは、仕事を超えた喜びです取材・文:柴田克彦 写真:青柳 聡 セバスティアン・ヴァイグレは、2019年4月から読売日本交響楽団の第10代常任指揮者に就任する。彼は、オペラとシンフォニー双方での活躍目覚ましいドイツの指揮者。08年からフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務めている。読響では16年8月に3つのプログラムを指揮し、17年7月の東京二期会《ばらの騎士》でも共演。その際の相性の良さと評価の高さから、シェフ就任と相成った。 彼自身も、読響にはポジティブな印象を抱いている。 「とても生き生きとして集中力が高く、こちらの指示をスポンジのように吸収し、100パーセント全力投球で演奏する素晴らしいオーケストラ。今回の就任にも、仕事を超えた楽しみや喜びを感じています」 来年4月に始まる初年度のラインナップは、ドイツ=オーストリアのロマン派が中心となる。 「新時代の始まりには、その指揮者の出自を紹介するレパートリーが良いと考えました。つまり、こんな香りの人が来るというのをお知らせし、独墺の音楽史に取り組む姿勢をシグナルとして発信したいとの思いを込めています」 前任のカンブルランが、フランスや近現代ものを軸に読響のクオリティをアップさせただけに、この方向性はきわめてタイムリーだ。 初年度は3回来日し、9プログラム15公演を指揮する。 「19年5月は、ブルックナーの9番、ブラームスの4番、ベートーヴェンの『英雄』の各交響曲が中心で、楽しみなのがヘンツェの『7つのボレロ』。読響が2000年に日本初演をした曲なので再演に魅力を感じます。また6月には東京二期会の《サロメ》でも読響を振ります。9月は、ハンス・ロット、メンデルスゾーンの『イタリア』、マーラーの5番の各交響曲が中心。ロットの紹介は私の使命だと考えています。20年3月は、ブラームスの1番とR.シュトラウスの『英雄の生涯』が中心。シュトラウスは、フランクフルト歌劇場管と複数のCDを録音するなど、集中的に取り組んでいる作曲家です」 ドイツ・ロマン派の究極の名作がズラリと並ぶ中にあって、ロットの交響曲が異彩を放っている。 「私はこの曲を9つのオーケストラで演奏し、ミュンヘン放送管と録音もしています。現在市販されているエディションの校訂作業にも関わりました。ロットはブルックナーとマーラーの間を繋ぐ存在。交響曲は20歳頃の作曲家が書いた作品としては非常によく出来ていて、第3楽章のスケルツォはまるでマーラーです。当時マーラーはまだ交響曲に着手していない時期。彼は間違いなくマーラーのインスピレーションの源であり、26歳で亡くなっていなければ、素晴らしい作品を書き続けていたでしょう。初年度には、いま挙げた関係性の深い3人、ブルックナー、ロット、マーラーを意図的に取り上げていますので、その発展を体験すべく3つのコンサートにぜひいらしていただきたいと思っています」 協奏曲も独墺作品中心だが、「こちらは別の色彩も加わるし、若い才能を起用していきたい」と語る。小林壱成がソロを弾く9月のチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲はその好例だろう。そしてヴァイグレといえばオペラ。今後の展開にも期待が膨らむ。 「次年度以降も独墺もの中心の基本線は維持し、その中で古典に戻っていくことも、現代作曲家に新作を委嘱することも有り得るでしょう。またそれ以外では、ロシアなどスラヴ圏の音楽に心惹かれるものがあります。もちろんオペラも演奏会形式を含めて積極的に取り組みたいと思っていますし、いずれはフランクフルト歌劇場との共同プロダクションも考えられます」 ところで彼が考える“ドイツの響き”とは? 「イタリアやフランスに比べて暗めの色彩、そして音を維持するソステヌートのキャラクターが重要視されること、響きに重力があることでしょう」 読響からそうした響きを聴けるのは実に楽しみだ。ちなみにベルリン国立歌劇場管弦楽団のホルン奏者だった彼は、「楽員への要求の仕方を理解している」し、「自分を指揮者に抜擢してくれたバレンボイムのやり方に多大な影響を受けている」という。「奏者時代も含めて21回来日し、あらゆる点で大好き」な日本で迎える読響との新コラボに、熱い視線が集まる。まずは就任後初登場となる5月の公演に注目したい。

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