eぶらあぼ 2018.10月号
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88CD『レゾナンス~チェロ二重奏~』マイスター・ミュージックMM-4041 ¥3000+税9/25(火)発売Photo:Yasuhisa Yoneda安田謙一郎(チェロ)& 藤村俊介(チェロ)師弟のチェロが織りなす親密な対話取材・文:原 典子Interview 演奏活動と後進の指導の両面で日本の音楽界を築き上げてきた安田謙一郎と、NHK交響楽団の次席奏者としてだけでなくチェロ四重奏団「ラ・クァルティーナ」などでも活躍する藤村俊介。ふたりのトップ・チェリストによるデュオ・アルバム『レゾナンス~チェロ二重奏~』がリリースされる。師弟の関係でもあるふたりに話を聞いた。藤村(以下 F)「中学生のときからN響に入るまでの10年間、ずっと安田先生のレッスンに通っていました。レッスンでは自分が弾いて、先生に何か言っていただくのを待つ立場でしたが、共演となるとまったく違いますね」安田(以下 Y)「それは当然違います。生徒としてではなく、音楽家として向き合うわけですから」 このデュオによるアルバムは、2014年にリリースされた『チェロ・デュオ』に続く2作目となる。前作では18世紀と近現代の作品を収録したが、今作ではロッシーニ、F.A.クンマー、ヘンデル、モーツァルトの作品が選ばれた。Y「2つのチェロのために書かれたオリジナル作品というのは、あまり多くないんです。今回では、クンマーによるオリジナル作品以外は、チェロとコントラバス(ロッシーニ)、2つのヴァイオリン(ヘンデル)、ファゴットとチェロ(モーツァルト)のための作品を、チェロのデュオに置き換えて演奏しました」 自身もチェリストだったクンマー以外は、いずれもオペラを得意とした作曲家たち。チェロの音色は人間の声に近いと言われるが、デュオによる演奏は、物語の登場人物がすぐそばに立って会話をしているように生き生きとした情景を思い起こさせる。Y「ヘンデルでは通奏低音として鴨川華子さんのチェンバロと宮坂拡志さんのチェロが加わるので、デュオからいきなり編成が変わったら違和感があるかなと心配していたのですが、じつに自然な感じに仕上がっていて安心しました」F「ロッシーニの賑やかな曲で始まって、クンマー、ヘンデルを経て、最後はモーツァルトでふたりだけの密な世界に戻るという構成にしたのも正解だったと思います」 基本的には藤村がファースト、安田がセカンドを務めるデュオだが、お互いのやり取りは「お、こう来たか!」という瞬間の連続だという。F「とにかく型にはまらない発想をお持ちの安田先生と一緒に演奏していると、本当に得るものが多く、今後の生きる指針になります。どんな仕事でも“普通はこうやるよね”という型があるじゃないですか。その通りにやれば、スムーズにことが進む。でも先生は、それをやらないんです」Y「そう言う藤村くんも、たくさんのアイディアがあって、常識的に弾いているばかりじゃないですよ」 豊かな響きが共鳴(レゾナンス)する、親密な対話を楽しみたい。11/3(土・祝)19:00 JTアートホール アフィニス問 ムジカキアラ03-6431-8186http://exnovochamberchoir.com/エクス・ノーヴォ室内合唱団演奏会 vol.10~HBS333 ヘンデル・バッハ・スカルラッティ生誕333周年記念~後期バロック3大作曲家の宗教作品を一晩で文:笹田和人福島康晴 ©Izumi Saito バッハ、ヘンデル、スカルラッティという、後期バロックを代表する作曲家の生誕333年となる今年。指揮者でテノール歌手、作曲家の福島康晴が主宰する「エクス・ノーヴォ室内合唱団」は第10回演奏会で、「イタリア」をキーワードに、3人の同い年の大作曲家による個性的な宗教作品を取り上げる。 同合唱団は、イタリアで研鑽を積んだ福島が、時代特有の唱法を知り尽くした名手を集め、2014年に設立。福島の指揮のもと、1パート1~3人の小編成により、ルネサンスからバロックに至る宗教作品の美を追究。共演の器楽陣も毎回、古楽の語法に長けた名手が集結する。 今回はまず、ローマ留学中の若きヘンデルが書き、繊細かつ大胆な楽想が溢れる「ディクシット・ドミヌス」を。そして、バッハが1742年頃、16世紀イタリアの巨人パレストリーナの作品へ通奏低音などを書き足したミサ曲「シネ・ノミネ」を披露。さらに、ヘンデルとも知己だったと思われるスカルラッティの傑作「10声のスターバト・マーテル」を上演。鮮烈な快演に、初演を聴くような感動を覚えるはず。

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