eぶらあぼ 2018.10月号
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81Chopin Schumann Liszt 三大作曲家の愛と葛藤(後編) 田崎悦子(ピアノ)ロマン派3人の切なる想いを伝えたい文:長井進之介10/13(土)14:00 東京文化会館(小)問 カメラータ・トウキョウ03-5790-5560 http://www.camerata.co.jp/他公演 9/23(日・祝)京都/青山音楽記念館 バロックザール(075-393-0011) 演奏とは、作品を通して作曲家と対話すること―それを心から実感させてくれるピアニストが田崎悦子である。発する音はもはや楽器の“音”を超越し、“声”として聴衆の心へと直接届いてくる。この境地に達するまで、彼女は血のにじむような思いで音楽と向き合ってきたにちがいない。 3年前に3回シリーズで開催された「三大作曲家の遺言」で、彼女自身の遺言なのでは、と思わせるほどのものを聴衆に提示してくれた。田崎はそれを終え、「私の人生にもピリオドを打ち、うろうろしていたころ、天から“指名”が来て」開始したのが2回シリーズによる『三大作曲家の愛と葛藤』である。ショパン、シューマン、リストという、ほぼ同世代を生きた三人の、若く充実した時期、心から愛し、葛藤して生み出された作品が演奏される。 5月の前編ではすべての旋律に言葉を、リズムには鼓動をのせてショパンの「幻想ポロネーズ」、シューマンの「ダヴィッド同盟舞曲集」、そしてリストの「ソナタ ロ短調」という大曲3つから、溢れるメッセージを代弁してくれた。 10月の後編では、ショパンの“詩”である遺作のノクターンや“魂”であるマズルカ、シューマンのクララへの愛が込められた「クライスレリアーナ」、そしてリストが自身の人生はもちろん、音楽家としても新たな局面に立った作品である「巡礼の年第2年イタリア」(全曲)が並ぶ。心からの愛をもって作品と対峙する田崎だからこそ伝えられる、作曲家たちの本当の想いをぜひ感じてほしい。ムジカ・レアーレ(室内楽アンサンブル)コンセルトヘボウ管のエッセンスが凝縮されたサウンド文:寺西 肇第1日 11/20(火)19:00 第2日 11/21(水)14:00 浜離宮朝日ホール問 朝日ホール・チケットセンター03-3267-9990 http://www.asahi-hall.jp/hamarikyu/ 世界最高峰の演奏で触れる、“真の音楽”の愉悦―。「ムジカ・レアーレ」は、オランダの名門、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団のメンバーで構成されるアンサンブル。2日にわたる東京公演では、誰もが知る傑作から知られざる佳品まで、三~五重奏の多彩な編成による様々な時代の作品を紹介し、室内楽の醍醐味を伝えてくれる。 130年の歴史を誇る名門楽団から、取り上げる作品に応じ、メンバーを選抜して組織される「ムジカ・レアーレ」。そのサウンドは、まさにコンセルトヘボウ管のエッセンスと言えよう。今回は、首席オーボエ奏者のイヴァン・ポディオモフら木管楽器から3人、第1ソロ・ヴィオラ奏者の波木井賢(はきい・けん)ら弦楽器から5人、計8人の名手が参加する。 来日公演には、2つの異なるプログラムを用意。第1日では、モーツァルト「オーボエ四重奏曲」とブラームス「クラリネット五重奏曲」という2つの名曲に、ドイツ人ながらオランダで活躍したユリウス・レントゲンの「弦楽三重奏曲第14番」や、チェコ出身のエルヴィン・シュルホフの木管楽器のための「ディヴェルティメント」と20世紀の作品を挟み込む。 一方、第2日は、ベートーヴェン「弦楽三重奏曲 ハ短調」とメンデルスゾーン「弦楽五重奏曲 イ長調」に、ブリテンの初期の傑作「幻想四重奏曲」やイベール「木管三重奏のための5つの小品」、プーランク「クラリネットとバスーンのためのソナタ」を組み合わせて。いずれのプログラムも、まさに時空を超えた「古今の室内楽の傑作選」。初心者からマニアまで、楽しめるはずだ。
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