eぶらあぼ 2018.10月号
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79ポール・メイエ クラリネット・リサイタルクラリネット界の“ファンタジスタ”に酔いしれる一夜文:飯尾洋一10/30(火)19:00 よみうり大手町ホール問 読売新聞東京本社文化事業部03-3216-8500 http://info.yomiuri.co.jp/event/music/他公演 10/26(金)静岡音楽館AOI(054-251-2200) 人気実力ともに世界最高峰のクラリネット奏者、ポール・メイエ。来日公演も多く、これまでに幾度となく名演を聴かせてくれているが、この秋、日本では4年ぶりとなるリサイタルを開く。そんなに久しぶりのリサイタルだということに驚くが、思い出してみれば近年は協奏曲のソリストとして、あるいはレ・ヴァン・フランセの一員としての来日が続いていた。スーパースターの妙技をたっぷりと堪能できる待望の機会が到来する。共演はピアノの山田武彦。以前の共演で、メイエが「彼とならどんな曲も演奏したい」と絶大な信頼を寄せた実力者である。 プログラムも意欲的だ。中心はロマン派のドイツ音楽。クラリネットのために書かれた貴重な傑作であるシューマンの「幻想小曲集」、水の精と騎士の悲恋物語に着想を得たライネッケのフルート・ソナタ「ウンディーネ」(作曲者自身によるクラリネット編曲版)、山田武彦がリヒャルト・シュトラウスの大管弦楽曲を編曲した「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、そしてウェーバーの協奏的大二重奏曲。ウェーバー作品ではクラリネットとピアノがともに名技性を競い合う。胸のすくような鮮やかな技巧を楽しみたい。 よみうり大手町ホールの約500席からなる親密な空間でメイエを聴けるのも大きな魅力だ。ふたりの奏者の音楽による対話のおもしろさを存分に体感できることだろう。山田武彦「Duo J」 中澤きみ子(ヴァイオリン) & 大須賀恵里(ピアノ) “大人に贈る素敵な午後”“熟女”たちが届ける艶やかな名曲の花束文:笹田和人10/7(日)14:00 Hakuju Hall 問 コンサートオフィスアルテ03-3352-7310 http://kimiko-vn.net/ http://eriosuka.sakura.ne.jp/ これぞ、上質な大人の時間。卓越した“モーツァルト弾き”として国際的な活躍を続けるヴァイオリンの中澤きみ子と、室内楽の名手として国内外の巨匠たちと共演を重ねるピアノの大須賀恵里。自称「熟女」の2人の名手による「Duo J」が2回目のコンサートを開き、楽しいお喋りを交えながら、艶やかな名曲の花束を届けてくれる(ちなみにJは熟女の頭文字とのこと)。 新潟大学からザルツブルク・モーツァルテウム音楽院に学び、ウィーン室内管弦楽団との協奏曲、ピアノのイェルク・デームスとのソナタ、それぞれのモーツァルト全集録音が高い評価を得ている中澤。夫・宗幸が、東日本大震災の流木から製作したTSUNAMIヴァイオリンを携え、その記憶を“弾き”継ぐ活動にも力を注いでいる。 かたや、大須賀は桐朋学園大学を卒業し、1995年にはニューヨーク・フィルのメンバーによる「ザ・ニューヨーク・トリオ」のメンバーとして活躍。「Andiamo」室内楽演奏会を主催するなど、室内楽に主軸を置き、後進の指導・育成にも尽力する。そんな気の合う2人による「Duo J」が、昨年6月に開いた初コンサート。珠玉の名曲にトークを交えたステージは、満席御礼の大盛況となった。 「ぜひシリーズ化を」という熱い要望に応えての第2弾。今回は、ブラームスの第1番「雨の歌」、ベートーヴェンの第3番、ヘンデルの第4番、3つの名ヴァイオリン・ソナタにドヴォルザーク「ソナチネ」と、バロックからロマン派までの傑作を選りすぐって。もちろん、熟年の2人ならではのお洒落なトークもたっぷりと。よりパワーアップした「Duo J」と、素敵な時間を過ごしたい。左:中澤きみ子 右:大須賀恵里ポール・メイエ ©Shin Yamagishi
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