eぶらあぼ 2018.10月号
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74サラ・チャン ヴァイオリン・リサイタル2つの「四季」で示す、貫禄の音楽性文:笹田和人10/25(木)19:00 紀尾井ホール 10/28(日)14:00 京都コンサートホール問 テンポプリモ03-3524-1221 http://www.tempoprimo.co.jp/他公演 10/23(火)東京文化会館(都民劇場03-3572-4311) 8歳でニューヨーク・デビュー、そして史上最年少となる10歳でのCDリリース…。かつて“天才少女”として旋風を巻き起こしたサラ・チャンも、30代半ばを迎えた今、現代アメリカを代表する“ヴァイオリンの女王”に。ヴィヴァルディとピアソラ、2つの「四季」に挑む来日公演。完璧な技巧に深い精神性を纏わせた、充実の快演を聴かせてくれる。 10代からリサイタル活動の一方、世界各国の第一線楽団や巨匠指揮者と共演を重ねてきた。その“相棒”は1717年製の銘器グァルネリ・デル・ジェス。チャンは「楽器には、機嫌の良い日も悪い日も…演奏家は経験と学習を通じ、その心を読み取り、自身が求める響きを伝えてゆく。力強く、美しい楽器が私の代弁者なのは、とても幸運です」と話す。 「バランスが良く、楽しいプログラム」と自負する、今回の来日公演。森田昌弘(ヴァイオリン)らN響の名手による弦楽五重奏との共演で、ヴィヴァルディ「四季」と、タンゴの巨匠ピアソラの「ブエノスアイレスの四季」を披露する。 「ヴィヴァルディは定番。ピアソラの作品は、ヴィヴァルディの曲想もねじり合わされ、とてもセクシー。恋に落ちました(笑)。どちらも大好きな曲です」 これらに先立ち、「バロックの作品ながら、優雅でロマンティック」と評するヴィターリ「シャコンヌ」を添える。「指揮者なしの今回はリスキーですが、共演者たちと一緒に正しい方向へ向かえば、素晴らしい結果に繋がるでしょう。お客様にも、それぞれに様式が異なる多彩な作品を、きっと楽しんでいただけるはず」と語る。©Cli WattベルリンRIAS室内合唱団最高峰のハーモニーで聴かせるドイツ宗教音楽の真髄文:宮本 明11/2(金)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/他公演 10/29(月)武蔵野市民文化会館(小)(0422-54-2011) 合唱ファン待望! ベルリンの誇る老舗プロ合唱団が12年ぶりに来日する。 ベルリンRIAS室内合唱団は1948年に西ベルリンのRIAS放送局専属として発足。ドイツ再統一を機に母体が解体したあともその名称を引き継いでいるが、現在は後継の放送局と国や市の傘下にある。その実力は世界最高レベル。録音も非常に多く、たとえば90年代に録音されたプーランクの無伴奏合唱曲集などは、現在もなお一頭地を抜く名盤だ。近年はヤーコプスら古楽演奏との共演も多い。精緻なハーモニーと整った声の魅力はもちろん、ただ美しいだけでなく、人間の声のあたたかさと力強さを兼ね備えた彼らの肉厚な歌声には、楽譜の表面をなぞるのではない、濃厚な情感がこもる。その長所が最も生きるのはやはり宗教曲だろう。西洋音楽の伝統の中で培われた多様な和声に彩色される深い祈り。今回はまさにそれ! J.S.バッハの有名な3つのモテット「主に向かって新しき歌をうたえ BWV225」、「来たれ、イエスよ、来たれ BWV229」、「イエス、わが喜び BWV227」を軸に、メンデルスゾーンの「3つの詩編 op.78」とブルックナーのモテット集という、4声から二重合唱の8声まで、18~19世紀のドイツ宗教音楽の真髄を堪能できるプログラムを、合唱好きならば聴き逃せるわけがない。指揮は昨年就任したばかりの芸術監督・首席指揮者ジャスティン・ドイル。ウエストミンスター大聖堂の聖歌隊からキングズ・カレッジで学んだ生粋の英国の合唱指揮者だ。©Matthias Heyde
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