eぶらあぼ 2018.10月号
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67ヴァレリー・アファナシエフ(ピアノ)私の心の叫びを演奏に託したい文:伊熊よし子10/9(火)19:00 サントリーホール、10/11(木)19:00 アクトシティ浜松(中)問 ミュージックプラント03-3466-2258 http://www.mplant.co.jp/他公演 10/8(月・祝)ザ・シンフォニーホール(ABCチケットインフォメーション06-6453-6000)、10/13(土)彩の国さいたま芸術劇場(0570-064-939)※プログラムを含む各公演の詳細は上記URLでご確認ください。 ヴァレリー・アファナシエフは演奏する作品を徹底的に研究し、何年間もかけてその内奥を探求し、完全に作曲家と一体化した時点で演奏を世に送り出す。録音も同様である。 「私は聴いてくださる方たちの心の奥深くへ届く音楽を演奏したいと思っています。表面的な演奏や、やたらに自分の存在を前面に押し出す演奏は好きではありません。作曲家に敬意を表し、作品の深奥に迫り、その魅力を聴き手に届けたいのです」 長年シューベルトの作品を弾き続け、その個性的で濃密な自己表現を込めた演奏は聴き手の心に強い印象をもたらしているが、最近はベートーヴェンのソナタが加わった。 「私はシューベルトの作品に潜む孤独と沈黙を愛し、ベートーヴェンが他から遮断された世界で書いたソナタに魅了されます。彼らはプライベートな王国を築いた。その王国に入り込み、そこで感じた私の心の叫びを演奏に託したい。それが限りない自由を生み、生きる喜びをもたらしてくれるわけですから」 今回は自家薬籠中のシューベルトのピアノ・ソナタ第21番と3つのピアノ曲(D946)によるプログラムや、ベートーヴェンの4大ピアノ・ソナタを披露するプログラムもあり、アファナシエフの特有のテンポに彩られた自由闊達なピアニズムを堪能することができる。彼の演奏は類まれなる緊迫感と集中力がみなぎり、聴き手にも同様の集中力を要求する。特にシューベルトの旋律美の奥に宿る孤独の影に注目したい。©Kiyotane Hayashi第22回 京都の秋 音楽祭 光と色彩の作曲家 クロード・ドビュッシー音と言葉でドビュッシーの芸術に多角的に迫る文:伊藤制子第1回 ドビュッシーの“ド”から“シ”まで (初級編) 10/13(土)第2回 ベル・エポック~サロン文化とドビュッシー~ (中級編) 11/10(土)第3回 ドビュッシーが見た風景 (総括編) 11/23(金・祝)京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ 各回14:00問 京都コンサートホール075-711-3231 http://www.kyotoconcerthall.org/debussy2018/ 古都・京都はフランス文化と関連の深い土地でもある。京都・パリ友情盟約締結60周年・日仏友好160周年にあたる2018年、没後100年を迎えたドビュッシーを3回シリーズで楽しむスペシャル企画が京都コンサートホールで開催される。斬新な響きや繊細なリズム感をもつ彼の音楽は、光と影の移ろいを思わせる絵画性を備えており、当時の文化的背景とも深いつながりをもつ。 シリーズは「初級編」「中級編」「総括編」の3回で、ドビュッシーの多彩な世界をすぐれた演奏で楽しめる心憎い工夫がなされている。 「初級編」は「ドビュッシーの“ド”から“シ”まで」をテーマに、初期から晩年までのオール・ドビュッシー・ピアノ・プログラム。中川俊郎と小坂圭太がソロ、2台ピアノ、そして連弾作品を披露する。ナビゲーターは岡田暁生(京都大学人文科学研究所教授)。 「中級編」は室内楽コンサートで、テーマは「ベル・エポック~サロン文化とドビュッシー~」。サロンを彩ったフォーレ、サン=サーンス、ラヴェルらの名作も併せて聴くことができ、出演はソプラノのサロメ・アレール、ピアノの永野英樹ほか、国内外で活躍する奏者が揃うから楽しみだ。ナビゲーターは椎名亮輔(同志社女子大学学芸学部音楽学科教授)。 「総括編」は「ドビュッシーが見た風景」と題し、世界的ピアニストのパスカル・ロジェを迎えたリサイタルだ。名曲中の名曲である前奏曲集第1集、第2集をじっくり堪能する。各回にはそれぞれのテーマにふさわしい論客による解説、プレトークもあり、ドビュッシーの世界をさらに深く知ることができるだろう。小坂圭太サロメ・アレール永野英樹 ©J.RADELパスカル・ロジェ ©Nick Granito中川俊郎
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