eぶらあぼ 2018.10月号
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52ハンヌ・リントゥ(指揮) 新日本フィルハーモニー交響楽団奥深きフィンランドの音楽の森へ文:山田治生#595 トパーズ〈トリフォニー・シリーズ〉10/19(金)19:00、10/20(土)14:00 すみだトリフォニーホール問 新日本フィル・チケットボックス03-5610-3815 http://www.njp.or.jp/ シベリウス生誕150周年であった2015年、ハンヌ・リントゥは、すみだトリフォニーホールで、新日本フィルおよびフィンランド放送交響楽団を相手にシベリウス交響曲全曲演奏会を指揮した。今回の新日本フィルの定期演奏会への登場はそのアンコールともいえよう。 リントゥは、1967年、フィンランド生まれ。シベリウス音楽院で学ぶ。2013年からフィンランド放送響の首席指揮者を務め、今やフィンランドを代表する指揮者の一人に目されている。今回の演奏会では、シベリウスのヴァイオリン協奏曲、交響曲第7番、そして、M.リンドベルイの「タイム・イン・フライト」(昨年のフィンランド独立100周年を祝してフィンランド放送響が委嘱した曲)という、フィンランド・プログラムが披露される。リントゥは、現代音楽の解釈にも優れ、同時代作品の紹介に積極的。今回のリンドベルイ作品の日本初演が注目される。また、そのような長所は、シベリウス解釈にも反映されている。伝統にとらわれすぎないで、新たにスコアを読み直した彼のシベリウス演奏はとても新鮮である。特に第7番は、3年前の全曲演奏会では新日本フィルとの演奏がなかったので、今回の共演がなおさら楽しみである。ヴァイオリン協奏曲で独奏を務めるのは、ヴァレリー・ソコロフ。1986年、ウクライナ生まれ。シベリウスの協奏曲は、DVDに映像を残している、得意のレパートリーである。もちろん、リントゥが指揮するオーケストラも聴きものだ。ヴァレリー・ソコロフ ©Simon Fowler神奈川県民ホール・オペラ・シリーズ2018 グランドオペラ共同制作 ヴェルディ《アイーダ》一級の歌手たちと、バッティストーニの劇的かつ緻密な指揮文:香原斗志10/20(土)、10/21(日)各日14:00 神奈川県民ホール問 チケットかながわ0570-015-415 http://www.kanagawa-kenminhall.com/aida/他公演 10/7(日)、10/8(月・祝)札幌文化芸術劇場hitaru(両日とも完売)、10/24(水)兵庫県立芸術文化センター(完売)、10/28(日)大分/iichiko総合文化センター(097-533-4004) スペクタクルなオペラの代表格のように思われている《アイーダ》だが、実は作品のキモは若いカップルの静かな死にある。ただし、静けさを際立たせるためにも、「凱旋の場」をはじめスペクタクルな場面が輝いていなければいけない。そういうメリハリをつけるのに長けた指揮者の最右翼がアンドレア・バッティストーニである。彼の《アイーダ》が聴ける。それも日本で。まさに事件だ。 インタビューのたびに、バッティストーニは「《アイーダ》は自分にとって特別に愛着がある」と語った。故郷ヴェローナの野外劇場の看板演目で、子どものころから馴染んでいるのに加え、50代後半のヴェルディの円熟した手になる洗練された音楽がある。そして華やかさと静けさの対比が絶妙――。そんな内容で、事実、彼が指揮すると華麗な場面がいっそう華やぎ、静かな場面は凛として美しい。最近は細部がさらに精妙かつ雄弁になってきた。要は、バッティストーニはいま《アイーダ》との相性が抜群にいい。そういう組み合わせは、なかなか望めないものだ。 作品との相性がいいのは、歌手もそうだ。アイーダ役は、ヴェローナでも絶賛されているモニカ・ザネッティンと、“ヴェルディ”の声と認められた木下美穂子のダブル。ラダメス役は福井敬と西村悟という日本を代表するスター・テノール。アムネリス役は清水華澄とサーニャ・アナスタシアという劇的だが緻密な心理描写も得意な二人のメッゾ。ローマ歌劇場の伝統的で壮麗な装置も相まって、《アイーダ》の魅力が全開となるまたとない機会だといえよう。ハンヌ・リントゥ ©Veikko Kähönen左より:アンドレア・バッティストーニ ©Takafumi Ueno/モニカ・ザネッティン/木下美穂子 ©Yoshinobu Fukaya/清水華澄 ©Takehiko Matsumoto/サーニャ・アナスタシア/福井 敬/西村 悟 ©Yoshinobu Fukaya

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