eぶらあぼ 2018.10月号
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50ヴィクトリア・ムローヴァ(ヴァイオリン)ストラディヴァリウスとガダニーニで描く至高の無伴奏文:オヤマダアツシ10/19(金)19:00 フィリアホール問 パシフィック・コンサート・マネジメント03-3552-3831http://www.pacific-concert.co.jp/10/21(日)15:00 すみだトリフォニーホール問 トリフォニーホールチケットセンター03-5608-1212 http://www.triphony.com/ 演奏にじっくりと耳を傾けるべきヴァイオリニストであると同時に、発見の喜びへと導いてくれる優れたプランナーとしても注目したい音楽家、それが現在のヴィクトリア・ムローヴァだ。2016年の来日時、ガダニーニ(ガット弦)でJ.S.バッハの作品を、ストラディヴァリウスでプロコフィエフや藤倉大などの作品を弾き分け、無伴奏ヴァイオリン音楽の立体感および奥深さを聴かせてくれたのは、まだ記憶に新しいところ。「ヴァイオリンとの対話」と言うべき時間を作り上げ、聴き手とのコミュニケーションを図るという試みは、別世界を思わせる静寂を作り上げた。 今年10月の来日公演では、その冒険的な無伴奏リサイタルをもう一度、再現してくれる(16年に聴けなかった方は特に注目!)。10月21日の午後、ゆったりと落ち着いた空間が特徴のすみだトリフォニーホールで行われるのは、J.S.バッハと20~21世紀の作品が巧妙に並べられたコンサート。ムローヴァはおよそ10年前、ガダニーニを弾いてJ.S.バッハの「無伴奏ソナタとパルティータ集」を録音し、その語り口にはさまざまな意見や感想が寄せられた。その録音を愛聴する方には、さらに新しいムローヴァの演奏に出会う楽しみが与えられるだろう。作品のコントラストや2つの楽器の音色など、発見の種は多様だ。同プログラムは10月19日に横浜・青葉台のフィリアホールでも聴くことができる。 ©Henry Fairユーリ・バシュメット(指揮・ヴィオラ) & モスクワ・ソロイスツ名匠率いる精鋭集団が織り成す武満サウンドとロシアの傑作文:伊熊よし子10/3(水)19:00 紀尾井ホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040 http://www.japanarts.co.jp/※バシュメット & モスクワ・ソロイスツの全国公演(福岡・大阪・東京・青森)の詳細については上記 ウェブサイトでご確認ください。 ヴィオラといえばユーリ・バシュメットだ。彼はヴィオラをソロ楽器として世界に知らしめ、1992年には若手実力派を集めて世界最高峰の弦楽アンサンブルと称されるモスクワ・ソロイスツを結成した。その精鋭集団が、得意とするチャイコフスキーの「ヴィオラと弦楽合奏のための『夜想曲』」「弦楽セレナーデ」で聴き手をロシアの地へといざなう。 バシュメットは生前の武満徹と親交を深め、現在もその作品を愛奏している。今回は映画音楽の分野でも名曲を生み出した武満の「弦楽のための3つの映画音楽」からスタート。ショスタコーヴィチのピアノ協奏曲第1番へとつなげ、ここには6歳からロシアで学び、現在はモスクワ音楽院で研鑽を積んでいる松田華音(ピアノ)と高橋敦(トランペット、東京都交響楽団首席奏者)がソリストとして参加する。この作品は弦楽合奏とピアノとトランペットが各々の旋律を劇的にうたい上げ、緊張感、悲劇的、瞑想的な面を浮き彫りにする。ショスタコーヴィチが27歳のときに書いた表現力豊かなコンチェルトである。とりわけ終楽章のトランペットの独奏と、ピアノのカデンツァに注目したい。 後半のチャイコフスキーはモスクワ・ソロイスツの真骨頂。バシュメットの深々とうたうヴィオラと弦楽アンサンブルがフル・オーケストラに匹敵する存在感を発揮する。ロシア民謡の主題が見え隠れする「弦楽セレナーデ」は、郷愁と哀愁と民族色が心に響く。松田華音 ©Ayako Yamamotoユーリ・バシュメット & モスクワ・ソロイスツ
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