eぶらあぼ 2018.10月号
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38小泉和裕(指揮) 東京都交響楽団名匠と俊英が醸し出すブラームスの深き味わい文:飯尾洋一第865回 定期演奏会 Cシリーズ 11/7(水)14:00 東京芸術劇場 コンサートホール第866回 定期演奏会 Bシリーズ 11/8(木)19:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ 落ち葉に秋の深まりを感じる11月、東京都交響楽団が終身名誉指揮者である小泉和裕とともにオール・ブラームス・プログラムを披露する。曲はヴァイオリン協奏曲と交響曲第4番。ブラームスならではのロマンあふれる重厚な音楽に浸ることができる二大傑作が並んだ。 ヴァイオリン協奏曲でソロを務めるのはレイ・チェン。1989年台湾生まれの若きスターだ。2009年のエリーザベト王妃国際コンクールにて出場者中最年少で優勝を果たした逸材だが、YouTubeやソーシャルメディアを大いに活用しながらファンを獲得してゆく姿勢は今の時代の演奏家ならでは。貴公子然とした風貌ながら、サービス精神にあふれたフレンドリーなキャラクターで人をひきつける。そんなフレッシュな感性の持ち主が、ブラームスのヴァイオリン協奏曲という名作中の名作にどう立ち向かうのか、大いに興味がわく。使用楽器は1715年製ストラディヴァリウス「ヨアヒム」。名器の美音も聴きどころだ。 最後の交響曲である交響曲第4番は、ブラームスの創作活動のなかでも特別な位置にある名作と言っていいだろう。ロマン的な情熱を古典的な様式美といかに融合させるのか。その最良の回答がここにある。マエストロ小泉は「ブラームスの交響曲ほど難しい作品はない」と語る。作品の深さを知る大ベテランだからこその一言か。忘れがたい名演を期待したい。シュトイデ弦楽四重奏団 with 小林有沙ウィーン伝統のサウンドで魅了する名作室内楽の数々文:笹田和人10/19(金)19:00 紀尾井ホール 問 1002(イチマルマルニ)03-3264-0244 http://www.1002.co.jp/シュトイデ弦楽四重奏団の全国公演10/17(水)浜離宮朝日ホール(カメラータ・トウキョウ03-5790-5560)、10/18(木)鶴見区民文化センターサルビアホール (045-511-5711)、10/20(土)呉市文化ホール(0823-25-7878)、10/21(日)安芸太田町 戸河内ふれあいセンターメイプルホール(あきおおた国際音楽祭事務局080-3882-8324)、10/24(水)ヨコスカ・ベイサイド・ポケット(LEGARE 0467-91-0496) 世界最高峰のオーケストラ、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートマスターを務めるフォルクハルト・シュトイデのもと、楽団の次世代を担う名手たちが集った「シュトイデ弦楽四重奏団」。この10月、ベートーヴェンとシューベルトの弦楽四重奏の佳品に加え、俊英ピアニストの小林有沙を迎えて、ドヴォルザークの五重奏曲を紀尾井ホールで披露する。 第1ヴァイオリンのシュトイデをはじめ、チェロのヴォルフガング・ヘルテルら1970年代生まれの奏者により、2002年の元日に結成。以来、連続してザルツブルク音楽祭に出演するなど、ウィーン特有の優雅で気品を湛えたサウンドが、高い支持を得ている。03年春には、大阪国際フェスティバルにも登場。日本の聴衆へ“初お目見え”も果たした。 06年にはウィーン楽友協会でデビューし、09年からは年4回の定期演奏会を同所、13年からの2年間はウィーンの新ホール「MuTh」で開催した。ウィーン・フィルのコンマスだったウェルナー・ヒンクらが結成し、半世紀以上にわたって世界的集団として活躍を続ける「ウィーン弦楽四重奏団」の後継者との呼び声も高い。 今回の紀尾井ホール公演は、まず、ベートーヴェン後期の弦楽四重奏作品の粋ともいえる傑作「大フーガ」を。さらに、シューベルト特有の歌心と美しいハーモニーを併せ持ち、緻密な作曲技巧が凝らされた名曲「死と乙女」が披露される。そして、桐朋学園大からベルリン芸大、ウィーン国立音大に学び、12年にモロッコ王妃国際ピアノコンクールを制した才媛・小林を迎えてのドヴォルザークの室内楽の至宝「ピアノ五重奏曲」を聴けるのも楽しみだ(両者の共演はこの公演のみ)。小泉和裕 ©Fumiaki Fujimotoレイ・チェン ©John Mac小林有沙 ©Yoshinori Kurosawaシュトイデ弦楽四重奏団 ©W.K.Hedenborg

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