eぶらあぼ 2018.10月号
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202CDCDCDCDコン・アフェット ~ヴェネツィアン・バロックの栄華/丸山韶 & Ensemble LMCdolceamaro ~フルートとピアノで奏でるオペラファンタジー~/イ・ジュヒシューベルト:交響曲第8番「グレイト」/ヤンソンス&バイエルン放送響ワン ハグ フォーユー/小松原利枝アルビノーニ:「室内での和声の楽しみ」よりソナタ第5番・第6番、「教会ソナタ集」よりソナタ第4番・第6番/ヴィヴァルディ:「12のヴァイオリン・ソナタ集」よりソナタ第1番、トリオ・ソナタ ハ長調、同ト短調丸山韶しょう(ヴァイオリン) 島根朋史(チェロ) 金子浩(リュート) 上尾直毅(チェンバロ/オルガン)ブリッチャルディ:ヴェルディの歌劇《椿姫》による自由なトランスクリプション/ロッシーニ:歌劇《セビリアの理髪師》より〈今の歌声は〉/ショパン:ロッシーニの主題による変奏曲/ジュナン:ヴェルディの歌劇《リゴレット》による幻想曲 他イ・ジュヒ(フルート)アリアンヌ・ジャコブ(ピアノ)シューベルト:交響曲第8番「グレイト」マリス・ヤンソンス(指揮)バイエルン放送交響楽団サン=サーンス:アヴェ・マリア/モーツァルト:アヴェ・ヴェルム・コルプス/セヴラック:私の愛しいお人形/水谷晨(しん):木香薔薇/ヘンデル:オンブラ・マイ・フ/チマーラ:郷愁/ドビュッシー:星の夜/ベッリーニ:優雅な月よ 他小松原利枝(ソプラノ)水谷稚佳子(ピアノ)録音研究室(レック・ラボ)NIKU-9017 ¥2800+税コジマ録音ALCD-9187 ¥2800+税収録:2018年2月、ミュンヘン(ライヴ)BR KLASSIK/ナクソス・ジャパン900169 ¥オープンナミ・レコードWWCC-7877 ¥2500+税栄華を誇ったヴェネツィアの街の息遣いが、確かに伝わってくる。丸山韶は京都市立芸大を経て東京藝大古楽科に学び、国内外で主要アンサンブルに参加する一方、2014年には自身の呼びかけで古楽オーケストラ「La Musica Collana(LMC)」を旗揚げした、若きバロック・ヴァイオリン奏者。当盤ではLMCの盟友たちと共に、アルビノーニの聖俗のソナタやヴィヴァルディのトリオ・ソナタ等に対峙、丁寧かつ愛情ほとばしる快演を聴かせる。イタリア盛期バロックの佳品に新たな命を授ける、明るく透明感あふれる音色。これらの作品にとって何より重要な「affetto(情感)」を伴い、聴く者の心にすっと寄り添う。(笹田和人)フルート奏者イ・ジュヒによる、主にロッシーニとヴェルディのオペラ名旋律の変奏・変容による佳品を集めたアルバム。19世紀の作曲家たちが名舞台から受けた豊かなファンタジーの世界を、ソウルからパリやニューヨークに学んだ彼女ならではの感覚と、持ち前の清潔な音色で丁寧に歌い上げる。ショパン14歳の貴重な室内楽や、ソナタながらオペラ編曲のようなドニゼッティも楽しいし、原曲通りの《セビリア》名アリアの魅力はやはり抜群。“甘い”“苦い”が合わさったイタリア語“dolceamaro”の意味は“ほろ苦い”だが、彼女のフルートが醸す味わいはあくまで上質で優しい。 (林 昌英)ヤンソンス&バイエルン放送響は、いまやもっとも規範的な演奏をするコンビではないか。シェフ就任後15年間に築かれた彼らの関係性が、この「グレイト」に集約的に表れている。適切なボリューム感とそれを実現するための適切なテンポが長丁場を通じてぶれなく保たれ、シューベルトらしい歌心をしっかりととらえつつ、シンフォニックで記念碑的な作品像が構築されていく。企んだような表現は皆無で、全てが自然のうちに運ばれているのだが、たっぷりとして温かみのある音楽は聴き手の懐へとまっすぐに進み、心の奥底にまで届く。音符をあるべき音として奏でる“偉大なる王道”がここにある。(江藤光紀)藤原歌劇団に所属し、今後アジアでの活躍も期待される楚々とした声が魅力のソプラノ、小松原利枝。宗教曲や歌曲を中心とした名曲アルバムだが、南仏の作曲家セヴラックの親しみやすい子守唄〈私の愛しいお人形〉やイタリア系でNYのメトロポリタン歌劇場で主に副指揮者として活躍したチマーラのラヴ・ソング〈郷愁〉など、20世紀の知られざる佳曲も味わい深い。特に米バークリー大でジャズ・ピアノを専攻した後にオランダで研鑽を積んだ1991年生まれの作曲家・水谷晨による日本語歌曲〈木香薔薇〉は、ミステリアスな雰囲気の中に多彩な色彩が表現されていて必聴。 (東端哲也)
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