eぶらあぼ 2018.10月号
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196CDCDCDSACDパッサカリア/三上亮&金子鈴太郎ファゴット・コン・フォーコ/岡崎耕治西村朗 四神/インデアミューレ+いずみシンフォニエッタ大阪ドビュッシー:前奏曲集第1巻、サティ:グノシェンヌ&ジムノペディ/ファジル・サイヘンデル(ハルヴォルセン編):パッサカリア/J.S.バッハ:2声のインヴェンション/ロッシーニ:《セヴィリアの理髪師》より序曲/モーツァルト:トルコ行進曲/セルヴェ(ギス編):「神よ、王を守りたまえ」による華麗なる変奏曲 他三上亮(ヴァイオリン)金子鈴太郎(チェロ)ジャンジャン:プレリュードとスケルツォ/サン=サーンス:ファゴット・ソナタ/ブトリー:アンテルフェランスⅠ/ヒンデミット:ファゴットとピアノのためのソナタ/シューマン:3つのロマンス/タンスマン:ソナチネ/サン=サーンス:白鳥 他岡崎耕治(ファゴット)岡崎悦子(ピアノ)西村朗:オーボエ協奏曲「四神」、沈黙の秋、室内交響曲第5番「リンカネイション[転生]」トーマス・インデアミューレ(オーボエ) 飯森範親 三ツ橋敬子(以上指揮)いずみシンフォニエッタ大阪 岡田博美(ピアノ) 太田真紀(ソプラノ)ドビュッシー:前奏曲集第1巻サティ:6つのグノシェンヌ、3つのジムノペディファジル・サイ(ピアノ)オクタヴィア・レコードOVCL-00672 ¥3000+税マイスター・ミュージックMM-4040 ¥3000+税収録:2018年2月&2016年2月、いずみホール(ライヴ)他カメラータ・トウキョウCMCD-28359 ¥2800+税エイベックス・クラシックスAVCL-25973 ¥3000+税国内オーケストラのコンサートマスターや首席奏者を歴任し、現在はソロに室内楽にと柔軟な活動を展開する三上亮と金子鈴太郎が、意欲的なデュオアルバムを作った。CD冒頭、しなやかにして雄渾なパッサカリアから惹きこまれる。彼らのセンスとテクニックは相当なもので、ロッシーニとモーツァルトのユニークな編曲作等における“冷静な超絶技巧”の痛快さには、思わず笑みが浮かぶ。しかしどんな場面でも彼らの音色は下品にはならず余裕があり、歌い回しにノーブルな気品が漂うのもすばらしい。バッハの編曲群は品格さえ感じさせる真摯な表現で懐が深い。注目のデュオだ。(林 昌英)2009年までN響の首席奏者を務めたファゴットの名手のデビュー・アルバム(録音はN響在籍中の1996年)のリマスタリング発売。同楽器の重要作品を揃えた選曲と高度な演奏が相まってロングセラーを続けているディスクが、鮮やかな音質で蘇った。今聴いて感嘆させられるのは、柔らかな音色となめらかで自然なフレージング。シューマンの「3つのロマンス」や「白鳥」はその好例であり、身を任せているだけで酔わされる。オリジナル曲も全て聴き応え十分。中でもブトリーの難曲の快奏には舌を巻く。一般ファンも楽器と奏者の魅力を存分に楽しめる1枚。(柴田克彦)「四神」は音域の違う4種のオーボエ属楽器を楽章ごとに吹き分けるという、奇想天外のアイディアが聴かれる。四季と結びついた禍々しい神獣を、ヴェテランのオーボエ奏者トーマス・インデアミューレがグリッサンドや微分音程も駆使して描き分ける。「沈黙の秋」では、どこか物悲しい表情を湛えたオーボエがピアノ(岡田博美)と対峙しながら、あやかしの世界へと誘う。いずみシンフォニエッタ大阪の合奏力を前提に書き継がれている室内交響曲も5作目となったが、「転生」と題された本作には新古今和歌集のテクストが断片的に用いられ、緊張感を湛えた持続が耽美と安らぎの世界へと導かれていく。(江藤光紀)ファジル・サイによる、同時代のパリに生きたドビュッシーとサティの録音。「前奏曲集」第1巻では、自ら作曲もするサイらしく、深い色を持つドビュッシー独特のハーモニーをたっぷり響かせながら、円熟期の作品の美点を浮き彫りにしていく。ミステリアスに奏される「帆」や、轟々と鳴らされる低音が印象的な「沈める寺」など、感性が光る。一転サティは、さっぱりとした音で、しかし含みのある表情をつけながら奏でる。おなじみのサイの唸り声ももちろん収録された迫力の音源。各曲が求める音を丹念に再現した演奏で、濃密な作品の世界に誘ってくれる。(高坂はる香)
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