eぶらあぼ 2018.10月号
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192のです」。マイクが次に渡りそうになったところで「とても重要なことを言い忘れたわ!」と再びマイクをとり「キアラはすべてを理解していて、一つひとつの場面をとても丁寧に捉えています。キアラに恋をしてしまいそうなほどです」と、このプロダクションで歌う喜びを語った。 会見ではこの後、《椿姫》の出演者たちが作品の魅力と意気込みを語り、予定の1時間を30分余りオーバーして終了した。取材・文:吉羽尋子日本舞台芸術振興会http://www.nbs.or.jp/■日本オペラ協会《静と義経》制作記者 発表会 2019年3月、日本オペラ協会が創立60周年記念公演として、なかにし礼作・台本、三木稔作曲のオペラ《静と義経》を上演する。9月7日、都内で制作記者発表会が開かれた。この作品は、1993年に鎌倉芸術館の開館記念委嘱作品として作られ、なかにし礼の演出で初演されたもの。初演は立ち見まで出る大盛況で、新聞各紙や雑誌で大絶賛された。この25年前の初演で主人公静の母親である磯の禅師を演じた日本オペラ協会総監督・郡愛子の「60周年に再演を」という熱望が実現に結びついた。 「《静と義経》は、世の無常を背景に、義経と交わした愛の契りを現世で叶えられない静が、義経との永遠の愛を誓い、息絶えるまでを描いた3幕もののオペラです。美しいアリアや重唱があり、また能や歌舞伎でもお馴染みの名場面が次々に繰り広げられていく豪華絢爛の歴史絵巻。その魅力は初演から25年経った今でも色褪せることはありません。東京初演となる今回の再演を、日本オペラのさらなる発展へと繋げたいと考えています」 今回監修を務める、なかにし礼は「私のオペラに対する思いがすべて込められている」と語る。 「音楽と言葉を総合的にまとめあげたグランド・オペ■ローマ歌劇場記者会見 開幕を4日後に控えた9月5日、ローマ歌劇場日本公演の記者会見が開催された。芸術監督のアレッシオ・ウラッド、《椿姫》指揮者のヤデル・ビニャミーニ、ヴィオレッタ役のフランチェスカ・ドット、アルフレード役のアントニオ・ポーリ、《マノン・レスコー》指揮者のドナート・レンツェッティ、演出家のキアラ・ムーティ、待望の初来日となったマノン役のクリスティーネ・オポライスが登壇(写真左から4人目は合唱監督のロベルト・ガッビアーニ)。 「イタリア・オペラの伝統をより良い方法で継承していくことが、ローマ歌劇場の使命と考えています」とウラッド芸術監督。今回の2作、偉大なデザイナー、ヴァレンティノ・ガラヴァーニとのコラボレーションが実現した《椿姫》、キアラ・ムーティが伝統を守りながら感性を発揮した《マノン・レスコー》は、こうした理念における成功作であると語った。 マエストロ・レンツェッティが《マノン・レスコー》を「オーケストレーションもモダンですが、内容的に現代に近い愛の物語です」と紹介。演出家キアラ・ムーティは、同じ題材からつくられたマスネとプッチーニのオペラにおける最大の違いは、マノンがイタリア人かフランス人かだ、と話を始めた。「マスネのマノンは、いわば華やかなフランス舞曲に囲まれた性悪女、プッチーニの方は非常に悲劇的で、彼女自身が自分の宿命を悟っているような人物として描かれています。そこから、私は演出にあたってマノンが最後に死んでいく砂漠を重要なモティーフとして考えました」。そしてヒロインを演じるオポライスについて「女優であることを大切にしている素晴らしい歌手!」と称賛。マイクを受け継いだオポライスは、「マノンという女性は愛と富の両方を手に入れたかった。この気持ちは誰にでもあるかもしれないけれど実現することは難しい。マノンもそれを理解しますが、すでに時遅く、死を迎える左より:アントニオ・ポーリ、ヤデル・ビニャミーニ、フランチェスカ・ドット、一人おいてアレッシオ・ウラッド、ドナート・レンツェッティ、クリスティーネ・オポライス、キアラ・ムーティ Photo:Ayano Tomozawa記者会見の模様 写真提供:日本オペラ振興会

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