eぶらあぼ 2018.7月号
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56CD『アンダルーサ』マイスター・ミュージックMM-4034¥3000+税Photo:Yasuhisa Yonedaマリア・エステル・グスマン(ギター)女王の紡ぎ出す美音が耳を奪う取材・文:寺西 肇Interview 時に情熱的に、時に静謐に。しなやかな音楽創りで世界中の聴衆を魅了、「ギター界の女王」と称されるスペインの名手、マリア・エステル・グスマンが、グラナドスやアルベニスを軸に、珠玉の傑作へ対峙した新アルバム『アンダルーサ』をリリースした。「美しい作品と純粋で美しい音を楽しんでほしい。聴き手が私の演奏を一味違うと感じて、感動を与えられれば…」と録音に込めた思いを語る。 「収録したうちの幾つかは、私たちギタリストにとって、基礎となる重要な作品。グラナドス、アルベニス、リョベートはクラシック・ギターに豊かな表情を植え付け、極めて独特な演奏スタイルによって、一時代を築きました。それを踏まえた上で、私はアルベニス自編の『カプリチオ・パバーナ』やモンポウの『歌と踊り』、リョベート編曲による民謡と、あまり演奏機会に恵まれない作品も交えました」 全篇で耳を奪うのが、撥音の美しさはもちろん、転調や楽想に伴う劇的な音色の変容や、主旋律と伴奏旋律のバランス感覚の良さだ。 「私は音色の変化に大きな注意を払っています。同じフレーズの繰り返しの時は決して同じに弾くべきではなく、作品の構成やダイナミクス、色彩、撥音の方法などを見極め、変化をつけます。これこそがギターにとっての最大の持ち味。これにより、豊かな表情を生み出せるのです」 かたや、音が鳴っていない休符の場面での響きの制御も絶妙。 「休符=間(ま)は、緊張感やミステリアスさを刻み付けるもの。旋律=フレーズと同じ重要性を持っています。ですから、私は常にフレーズと間の取り方には気を配って取り組んでいます。そして、どこが最も高揚するパッセージであり、最も静けさを要求される部分かを見分けていくのです」 常に音楽とギターが傍らにあった。 「母が音楽好きで、家には多くのセゴビアのレコードがあり、子守歌がわりでした。3歳でギターを始め、翌年には劇場のステージに。8歳で、正式にセビージャ音楽院へ入学しました」 1988年に岡山で開かれた瀬戸大橋国際ギターコンクールで優勝、以降も来日を重ね、わが国とも縁が深い。 「日本の皆さんは、ギターをとても愛してくださいますね。多くの人が演奏に取り組み、繊細で、音楽をよく理解しています」 ギター界の未来について「いま必要なのは、若い人がギターを学んでくれること。そして、ギターという楽器の魅力をアピールすること。そんな中から若いスターが育ち、ギター界の土台が築かれていきます」と力説。そして、「音楽家が私の天職」と言い切る。 「幼い時からギタリストになることを夢見て、幸運にも望んだ通りの道を進むことが出来ました。こんなにも素晴らしいことはありません。とてもエレガントで楽しい職業です。多くの街を知り、色々な方と出逢い、心の中が豊かに満たされるのですから…」8/23(木)14:00 19:00 横浜能楽堂問 チケットかながわ0570-015-415http://www.kanagawa-arts.or.jp/山田和樹(指揮) 東京混声合唱団 特別演奏会能楽堂で繰り広げられる旬のマエストロとっておきのプログラム文:江藤光紀 東京混声合唱団が神奈川県立音楽堂で開催している「音楽堂アフタヌーン・コンサート」。今年は同館が改修工事に入ったため、すぐ隣の横浜能楽堂で行われる。東京・根岸に1875年に建てられ、その後移築された、関東最古の伝統を誇る能舞台だ。 トップ合唱団の能舞台公演——この不思議なめぐりあわせに、欧州でも評価がうなぎ上りの同団音楽監督の山田和樹が、とっておきの曲を選んでくれた。柴田南雄が1970年代に作曲したシアターピースの名作「追分節考」と「萬歳流し」だ。シアターピースでは歌い手は動き回り、会場は歌と声が混然と行き交うカオスとなる。柴田は日本古来の民謡をこの混沌へと投げ込むことで、私たちの体内に眠る音感を刺激する。東混が委嘱・初演した「追分節考」では尺八に関一郎、藤原道山と、邦楽の新境地を切り開いてきた2人の名手が共演する。「コンダリラ」(S.リーク)はオーストラリアに伝わる滝の精霊のこと。澄み切った森の空気、小鳥たちの鳴き声に癒される。さらに合唱でフリージャズに挑戦。意気を感じる“攻め”のプログラムだ。山田和樹 ©平舘 平

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