eぶらあぼ 2018.7月号
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39マルク・ミンコフスキOEK芸術監督就任記念 オーケストラ・アンサンブル金沢 《ペレアスとメリザンド》(セミ・ステージ形式)ドビュッシーイヤーを盛り上げる話題のオペラ公演文:岸 純信(オペラ研究家)第405回定期公演フィルハーモニー・シリーズ7/30(月)18:30 石川県立音楽堂 コンサートホール東京特別公演 8/1(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 石川県立音楽堂チケットボックス076-232-8632  東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999(8/1のみ)http://www.oek.jp/ 《ペレアスとメリザンド》は、オペラには珍しく、「分かり合えない辛さ」を描いた傑作である。劇中では、王子ゴローが妻メリザンドと心を通わせた異父弟ペレアスを刺殺するが、血にまみれたその瞬間すらも、ドビュッシーの寂寥感漂う響きで包まれてしまい、メリザンドの死の幕切れでは、10小節の後奏がすべてを浄化して、哀しみを通り越した明るさのごとく、長調のハーモニーが全曲を閉じるのだ。 この夏、金沢と東京で、オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の《ペレアスとメリザンド》を振るマルク・ミンコフスキは、バロック・オペラをライフワークとしつつも、ワーグナーからドビュッシーまでのレパートリーを持つ“挑戦者”のマエストロ。彼の考え抜かれた棒捌きは、楽譜を読み込んでの絶妙なテンポ配分に明らかであり、「ミンコフスキ以外で聴きたくないオペラ」がファン層の話題になることも多い。その意味でも、OEK芸術監督就任記念となる今回の公演は注目すべきステージだろう。作曲者の原意通りにテノール(スタニスラス・ドゥ・バルベラック)を主役に起用し、セミ・ステージ形式で歌手の演技を見せながら管弦楽も舞台後方に置くので、奏者たちの表情付けも、ミンコフスキの采配ぶりとともにヴィヴィッドに伝わってくるのである。キアラ・スケラートのメリザンドへの期待も高まる。 《ペレアス~》には昔から名演が多い。というのも、演奏者の「プロ魂を刺激する」音楽であるからだ。みな、繊細でありながら弱々しくはない。バレエダンサーの如く、鍛え上げられた肉体と精神を通じて、究極の哀感と美を呈するのみである。音楽で人生に覚醒したい人にお勧めしたい。マルク・ミンコフスキ ©GEORGES GOBET AFPハンス・グラーフ(指揮) 東京都交響楽団モーツァルトのスペシャリストが生み出す滋味深い響き文:山田治生プロムナードコンサート No.379 8/25(土)14:00 サントリーホール問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ オーストリア出身の名匠、ハンス・グラーフが東京都交響楽団と初共演する。グラーフは、ザルツブルク・モーツァルテウム管弦楽団、ヒューストン交響楽団などの音楽監督を歴任し、ウィーン国立歌劇場やウィーン・フィルにも客演。ザルツブルク・モーツァルテウム管とモーツァルトの交響曲全集の録音を残すなど、とりわけモーツァルトを得意としている。 もちろん、都響との「プロムナードコンサート」でもモーツァルトを取り上げる。交響曲第34番はモーツァルトのシンフォニーの中では演奏機会が少ない作品だが、ザルツブルク時代の最後の交響曲を敢えて取り上げるところにモーツァルトのスペシャリストとしての意気が感じられる。都響の緻密なアンサンブルが作品の魅力を際立たせるだろう。メインはドヴォルザークの交響曲第8番。ボヘミア情緒あふれるこの名曲で、今年69歳、まさに円熟というべきマエストロがどんな演奏を披露してくれるのか、楽しみである。 また、プログラムの真ん中では、モスクワ生まれのカティア・スカナヴィを独奏者に迎え、サン=サーンスのピアノ協奏曲第2番が演奏される。モスクワ音楽院やパリ音楽院で学んだ彼女は、1989年のロン=ティボー国際音楽コンクールで第3位に入賞。都響とは、2009年10月の定期演奏会で共演し、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番を弾いている。サン=サーンスの古典への眼差しが感じられるこの作品で生き生きとした演奏を聴かせてくれることだろう。カティア・スカナヴィ ©Gueorgui Pinkassovハンス・グラーフ ©Christian Steiner

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