eぶらあぼ 2018.7月号
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22Photo:I.Sugimura/Tokyo MDE 国内、いや、世界的にも最大級の規模を誇るコンクール「ピティナ・ピアノコンペティション」が、今年で42回目を迎える。頂点に輝く「特級」の歴代グランプリには、関本昌平、田村響などの優れたピアニストたちが名を連ね、彼らのような活躍を夢見て、毎年約4万5千人(予選〜決勝の延べ人数)が参加する。そのファイナル・ステージが今年、サントリーホールの大ホールで開催されることとなった。 「クラシック音楽の殿堂、サントリーホールで開催できるのは無類の喜びです」と話すのは、主催の全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)専務理事・福田成康。大ホールがコンクールの舞台として使用されるのは初の試みとのこと。「格別の音響で、コンクールという最高におもしろいクラシックのステージを、ぜひ多くの方に聴いていただきたい」と熱を込める。 コンクールを聴く楽しみは、主に二つあると福田は言う。 「クラシック音楽の鑑賞がつまらない、という場合、たいていその理由は『わからない』から。何がわからないのかというと、『違い』だと思うのです。クラシックは何百年も同じ曲が伝承され弾き継がれます。ブレンデルとポリーニの演奏ではここが違う、といった聴き方ができれば楽しい。しかし、比べるものがない上に、知らない曲だと、『違い』がわからず楽しめない」 福田自身がもともと「クラシック音楽ファンではなかった」からこそ、実感を込めてそう語る。 「しかしコンクールでは、誰もが『違い』を楽しむことができます。最終ラウンドである特級ファイナルに残った4名が、協奏曲をオーケストラと演奏します。人間の脳は、7つの物事までを容易に記憶し比コンクールを聴きに行こう ! 〜若きピアニストたちによる人生をかけた真剣勝負取材・文:飯田有抄較することができると聞いたことがあります。4名であれば演奏の特徴や選んだ曲について『違い』を認識しやすい。比較対照はコンクールを聴く楽しさの本質といえるでしょう」 もう一つは、「演奏者が人生をかけたステージ」だということ。 「権威あるコンクールで1位になった人は、翌年の出演料が100倍くらい違う。突然100倍うまくなったからではなくて、格付けされてしまうということです。参加者にとって現実的に大きなことでしょう。ピティナではグランプリ受賞者に対し、その後の活躍をバックアップし続けます。国際コンクールの準備、活躍の報道、マネジメント会社への紹介など、一人ひとりの特性に合わせてサポートしています。グランプリ獲得が、人生を左右するのです。ですから実力のある若い人たちが、真剣勝負を繰り広げるのです。そんな彼らの演奏を聴く楽しさは、甲子園の高校野球や、人生が変わるほどの大金を掛けたクイズ番組の決勝を見るのにも近い。聴き手としてもこんなに熱くなれるステージはないでしょう」 オーケストラは岩村力が指揮する日本フィル。来場者には「聴衆賞」を決める投票権が与えられるので、審査員のような参加意識を持って聴けそうだ。この夏、若き奏者たちと共にサントリーホールで熱くなろう!interview 福田成康 Seikoh Fukuda 全日本ピアノ指導者協会 専務理事第42回 ピティナ・ピアノコンペティション 全国決勝大会 特級ファイナル8/21(火)18:00 サントリーホール問 全日本ピアノ指導者協会(ピティナ)03-3944-1583http://compe.piano.or.jp/event/final/※全国決勝大会全体の開催日程については上記ウェブサイトでご 確認下さい。

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