eぶらあぼ 2018.7月号
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186「オーケストラ・ニッポニカ」は2002年の活動開始以来、芥川也寸志の遺志を継ぎ、邦人作品の紹介に力を注ぐ。今回は野平一郎の指揮で、我が国へ音楽の哲学と書法を伝えた、教育者でもある作曲家たちの佳品を特集。祖である池内友次郎の「交響的二楽章」(1951)を源に、矢代秋雄「チェロ協奏曲」(1960、独奏:ルドヴィート・カンタ)、野田暉行「一楽章の交響曲」(1963)、貴島清彦や島岡譲らへと連なる系譜を巡る。ジュネーヴ音楽院に学び、在学中の19 80年にマリア・カナルス国際コンクール室内楽部門で2位に入賞した兄・泉。ウィーンやロンドンに学び、読売日本交響楽団コンサートマスターを務める弟・巧。共に楽壇の第一線で活躍する小森谷兄弟が紡ぐ“シューベルトの宇宙”。デュオでの「ソナチネ第3番」に、ヴィオラ佐々木亮と泉で「アルペジオーネ・ソナタ」、チェロ古川展生とコントラバス吉田秀が加わり、傑作「ます」を。フルートの名匠・工藤重典を音楽監督に迎えて、毎年開かれている「夏の特別プロジェクト」。掉尾を飾る特別編成によるオーケストラ・コンサートは、昨年に続くオール・モーツァルト。工藤の指揮で、「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」や“吹き振り”による「フルート協奏曲第1番」、クラリネットのコハーン・イシュトヴァーンとオーボエ古部賢一、ファゴット吉田将、ホルン日橋辰朗をソリストに「協奏交響曲」を聴く。東急グループ代表を務めた故・五島昇の事績を受け継ぎ、美術とオペラの分野で有望な若手を顕彰している「五島記念文化賞」。第19回(2008年度)の新人賞を受賞した、バリトンの青山貴が、ピアノの河原忠之とのリサイタルで、研修成果を披露する。「光~闇 イタリアの声」と題した2部構成で、前半は古今の名歌曲を。後半は、テノールの村上敏明ら豪華な共演者を迎えて、プッチーニ《トスカ》第2幕の名場面を歌う。日本を代表するオペラ指揮のスペシャリストで、藤沢市民オペラの芸術監督を務める園田隆一郎がピアノと解説を担当し、傑作の“聴きどころ”を紐解く好評シリーズ。第7回は、ソプラノの中村恵理とバリトンの青山貴が共演し、10月に予定しているヴェルディ《椿姫》公演の「直前スペシャル」と題して。〈そはかの人か~花から花へ〉など同作を中心に、プッチーニやモーツァルトも交えて、名アリアを堪能する。月の7オーケストラ・ニッポニカ第33回演奏会「アカデミズムの系譜」小森谷 泉(ピアノ) × 小森谷 巧(ヴァイオリン)兄弟の音宇宙園田隆一郎のオペラを100倍楽しむ方法 Vol.7 ~花から花へ~《椿姫》直前スペシャル鮫島明子(ピアノ) プネウマシリーズⅧ~ベートーヴェン後期三大ソナタ青山 貴(バリトン) 光~闇 イタリアの声サラマンカホール夏の特別プロジェクト2018モーツァルト・ガラⅡ7/1(日)14:30 紀尾井ホール7/20(金)19:00 紀尾井ホール7/14(土)15:00 藤沢市民会館(小)7/12(木)19:00 横浜みなとみらいホール(小)7/20(金)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)7/15(日)16:00 岐阜/サラマンカホール文:笹田和人野平一郎ルドヴィート・カンタ工藤重典 ©土居政則「プネウマ」とは新約聖書に登場するギリシャ語で、「魂」を意味する。この言葉を冠したリサイタルを続けている、実力派ピアニストの鮫島明子。桐朋学園大からパリ・エコール・ノルマルに学び、フランスの登竜門での入賞など実績を重ね、国際的に活躍する。シリーズ第8弾では、第30~32番のベートーヴェン後期三大ソナタに対峙。卓越した洞察力と技巧、美音を武器に、作品が湛える精神性を掘り下げてゆく。園田隆一郎 ©Fabio Parenzan中村恵理©Chris Gloag小森谷 泉 ©井村重人小森谷 巧
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