eぶらあぼ 2018.7月号
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162SACDSACDCDCDレーガー:ベックリンによる4つの音詩、ツェムリンスキー:交響詩「人魚姫」他/上岡敏之&新日本フィルヴィヴァ・イタリア!/村上敏明MISSING LINK of TOMITA ~冨田勲 日本コロムビア初期作品集 1953-1974~影からの音たち 橋本京子プレイズ W.A.モーツァルトレーガー:ベックリンによる4つの音詩ニールセン:序曲「ヘリオス」ツェムリンスキー:交響詩「人魚姫」上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団スカルラッティ:陽はすでにガンジス川から/コットラウ:サンタ・ルチア/サルトーリ:君と旅立とう(タイム・トゥ・セイ・グッバイ)/ヴェルディ:女心の歌、清きアイーダ/プッチーニ:星は光りぬ、誰も寝てはならぬ 他村上敏明(テノール) 栗原正和(ピアノ) 古館由佳子(ヴァイオリン) 田中早苗(マンドリン)冨田勲:愉快な町の風船や、おいでよピーターパン、ブルースカイ、舞踊音楽劇「みにくいあひるの子」より、旅を行く、海底の幻想、うたのえほん、二つの橋、十羽の烏、ほたる、お月さまの見た話、春 春 春がきたよ、大雨の町、変化する自然 他安田祥子(ソプラノ) ひばり児童合唱団 コロムビアオーケストラ 他モーツァルト:ロンド イ短調K.511、幻想曲ハ短調K.396(補完:M.シュタッドラー)、ピアノ・ソナタ第2番K.280、幻想曲ニ短調K.397(補完:伝A.E.ミューラー)、アダージョ ロ短調K.540、幻想曲ハ短調K.475、アレグロ ト短調K.312(590d)(補完:R.レヴィン) 他橋本京子(ピアノ)収録:2017年10月、サントリーホール 他(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00663 ¥3200+税アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1047 ¥3000+税 6/20(水)発売日本コロムビアCOCQ-85418 ¥3000+税ナミ・レコードWWCC-7874 ¥2500+税上岡&新日本フィルのライヴCD第4弾。まずは、20世紀初頭の“後期ロマン派の翳”ともいうべき3作品を収録した、日本のオーケストラには稀な内容が光っている。レーガー作品はとりわけ繊細で美しく表出され、レアな曲の魅力を伝えるに充分。ニールセンの序曲は、曲全体の起伏が精緻かつスケール大きく表現され、ツェムリンスキーの交響詩も、映像的なイメージが豊かな表情で描かれている。上岡のタクトに鋭敏に応えた新日本フィルのデリケートな演奏も秀逸。ライヴでは看過した様々なニュアンスを感知させてくれる点においても、CD化の意義は大きい。 (柴田克彦)声の雄弁さはもちろんのこと緻密な役づくりにも定評があり、日本オペラ会を牽引するテノール、村上敏明のデビュー20周年記念アルバムが登場。もちろん彼がこよなく愛するイタリア尽くしの内容。スカルラッティによる古典歌曲からオペラ・アリア、クロスオーヴァーものまで、いくつかの曲をピアノだけでなくヴァイオリンを加えたアレンジで魅せる。一方でナポリ民謡などカンツォーネ系はマンドリンを加えて陽気に。後半はヴェルディのヒロイックな“ハイC”アリアからヴェリズモ、プッチーニとドラマティックに展開。ロマンスとパッション溢れる一枚だ。 (東端哲也)「ミッシング・リンク」とは、生物学で進化の過程にある間隙を指す。アコースティックからデジタル、そして両者の融合と、常に“進化”を続けた冨田勲の音楽創り。当盤は、教育現場向けの作品や草創期にあったテレビ番組の主題歌など、その最初期の知られざる作品を集成している。未だ“戦後”を感じさせ、なぜか懐かしさも胸に迫るモノラル作品から、サウンド構築の手法自体も立体感を帯びるステレオの時代、やがてモーグ・シンセサイザーという“武器”を得るまで。その進化の過程の一方、晩年の作品にも用いられた多くのモティーフが顔を覗かせるなど、その連続性も体感できる。(寺西 肇)モーツァルトのアルバムというと、プレイヤーにセットした瞬間、底抜けに明るい響きが流れてくるかと思いきや、国際的に信頼の厚いピアニスト橋本京子の新譜はまるで違う。「影からの音たち」と題されたこのCDは、ロンド イ短調、幻想曲 ハ短調、アダージョ ロ短調など、短調のピアノ曲が中心。繊細かつ自然なタッチで、多層的で陰影の深いモーツァルトの悲しみを表出する。橋本の音楽には、恐るべき叙情性がありながら、感傷的になりすぎない抑制美もあり、それがさらに“影”を感じさせる。短調作品の中に配置されたソナタ第2番へ長調の眩しさも引き立つ。 (飯田有抄)
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