eぶらあぼ 2018.7月号
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158CDCDCDCDショパン:バラード&スケルツォ/三浦友理枝J.S.バッハ:ゴルトベルク変奏曲[2台ピアノ版]/ゲルティンガー祥子&菅野潤菅原明朗 器楽作品集/澤田まゆみ&印田千裕&印田陽介バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番/ダニエル・ロザコヴィッチショパン:バラード第1番~第4番、スケルツォ第1番~第4番三浦友理枝(ピアノ)J.S.バッハ(ラインベルガー/レーガー編):ゴルトベルク変奏曲(2台ピアノ版)ゲルティンガー祥子(ピアノ)菅野潤(ピアノ)菅原明朗:白鳳之歌、三つの断章、バラード、無伴奏セロ・ソナタ、ブルゴーニュ~3つのピアノ小品~より澤田まゆみ(ピアノ)印田千裕(ヴァイオリン)印田陽介(チェロ)J.S.バッハ:ヴァイオリン協奏曲第1番・第2番BWV1041-1042、無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番BWV1004ダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)バイエルン放送交響楽団室内管弦楽団オルガ・ワッツ(チェンバロ)エイベックス・クラシックスAVCL-25964~5(2枚組) ¥3000+税レック・ラボ(録音研究室)NIKU-9015 ¥2800+税収録:2017年10月、豊洲シビックセンターホール(ライヴ)ミッテンヴァルトMTWD-99065 ¥3000+税ユニバーサルミュージックUCCG-1797 ¥2800+税デビューから約20年が経った今、三浦友理枝が満を持してリリースした、ショパンのバラード&スケルツォ全集。彼女らしい凛とした空気を貫きながら、要所で深い憂いや激しい感情を表出させる、詩情に満ちた演奏が収められている。スケルツォではクリアでパワーのある音が生き、メリハリのある立体的な演奏が耳をひく。特に印象に残るのは、バラード第4番。たっぷりと間を取りながら切々と歌い上げ、作曲家の感情の起伏に寄り添うような親密でドラマティックな音楽を展開させる。8曲それぞれから三浦が読み取ったストーリーが、丁寧に語られている。作品への強い想いと気迫を感じるアルバムだ。(高坂はる香)最初の主題は至極普通な印象、しかし第1変奏に入るや否や聴いたことのない新たな旋律(変奏)が右側(第2ピアノ)から耳に飛び込んできて驚く。この編曲版、原曲の声部を2台のピアノに割り振ることによってその対位法的効果が明確になり、楽曲のテクスチュアの見通しが極めて良くなっているのがすぐに感知できよう。しかしただ割り振るだけではなく先述のように新たな変奏旋律を追加したり、例えば第27変奏において原曲の2声部を2台のピアノに振り分けカノンにし、かつ各声部にオクターヴのユニゾンを加えるなどということも行っている。これもまたゴルトベルク、実に愉しい。(藤原 聡)1897年生まれの菅原明朗は90歳を超え亡くなる直前まで旺盛な創作活動を続けた。本盤は古代日本の幻想をドビュッシー風に描いた戦前のピアノ独奏曲「白鳳之歌」で始まるが、この後に収録された3作はどれも大らかで自由な作風を示している。ヴァイオリンとピアノのための「バラード」はモダンな曲調の中に日本風の旋律やワルツがぼんやりと浮かび上がる。「三つの断章」(ヴァイオリン独奏)、「無伴奏セロ・ソナタ」はバッハやヒンデミットを連想させたかと思えば、民謡風の香りを漂わせてゆったりのびやかに歌う。戦前のモダニズムが人知れず独自の境地を切り開いていたことを発見。(江藤光紀)一つひとつの音が踊っている。協奏曲第2番の歌い出しを聴いただけで、こう感じる向きは多かろう。スウェーデン出身のヴァイオリニスト、ダニエル・ロザコヴィッチは、弱冠17歳のライジングスター。わずか8歳で公式デビューして以来、ゲルギエフ指揮のマリインスキー劇場管やミュンヘン・フィルなど、一線楽団と次々に共演を重ねる。そのデビュー盤となる、協奏曲と無伴奏作品を組み合わせたバッハ録音。輝かしく粒立ちの良い音色と、作品への深い洞察。若者らしい清新さと、オイストラフら往年の巨匠を彷彿させる熟達した気高さ。一見相反するかにも思える、これらの要素を俊英は併せ持つ。(笹田和人)
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