eぶらあぼ 2018.7月号
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156SACDCDCDCDJ.S.バッハ:インヴェンションとシンフォニア/小林道夫グリーグ:ピアノ協奏曲、ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲/辻井伸行サン=サーンス:幻想曲、ルニエ:スケルツォ・ファンタジー 他/西江辰郎&津野田圭ノスタルジア/綱川千帆J.S.バッハ:インヴェンションBWV772-786、シンフォニアBWV787-801小林道夫(チェンバロ)グリーグ:ピアノ協奏曲ラフマニノフ:パガニーニの主題による狂詩曲辻井伸行(ピアノ)ヴァシリー・ペトレンコ(指揮)ロイヤル・リヴァプール・フィルハーモニー管弦楽団サン=サーンス:幻想曲/ルニエ:スケルツォ・ファンタジー/グルック:精霊の踊り/マスネ:タイスの瞑想曲/ピアソラ:タンゴの歴史より/J.S.バッハ(伝C.P.E.バッハ):ヴァイオリン・ソナタBWV1020/アーン:クロリスに 他西江辰郎(ヴァイオリン)津野田圭(ハープ)スカルラッティ:ソナタ ニ短調、同ホ長調/ベートーヴェン:バガテル 変ホ長調/プーランク:間奏曲 変イ長調/ラヴェル:「鏡」より 悲しい鳥たち/バルトーク:ルーマニア民族舞曲/プロコフィエフ:束の間の幻影綱川千帆(ピアノ)マイスター・ミュージックMM-4033 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25960 ¥3000+税オクタヴィア・レコードOVCL-00669 ¥3200+税コジマ録音ALCD-9183 ¥2800+税歴史的鍵盤楽器の先駆者、小林道夫による5年ぶりの新録音は、大バッハが自身の子どもや弟子たちへの教育を主目的に作曲した「インヴェンションとシンフォニア」。がっしりとした構築美の内側に、柔らかな音楽の愉悦が、そっと包みこまれたような名演は、まさに小林芸術の真骨頂と言えよう。新バッハ全集の最新の実用版に基づきつつ、自筆譜も参照。そこへ自身の長い演奏経験から得た感性を加味、本来は“練習曲”だった作品から、深い魅力と滋味を引き出してゆく。各楽曲へどう対峙したのか、小林自身が譜例を交え、時に数秘学にも目配りして、詳細にしたためたライナーノーツも必読だ。(寺西 肇)辻井伸行にとって初録音の2曲。グリーグは、遅めのテンポで一音一音丁寧に奏され、細部まで明瞭かつ美しく表現されていく。全体にニュアンス豊かでリリシズムが横溢し、カデンツァをはじめ力強さにもこと欠かない。ラフマニノフは、鮮やかなテクニックと多彩な音色を駆使して、変奏ごとの表情の違いが見事に描き分けられた快演。特筆すべきは、V.ペトレンコ&ロイヤル・リヴァプール・フィルが、辻井と当意即妙なやりとりを繰り広げている点。誠意と共感に溢れるバックの呼応は、辻井の協奏曲録音の中でも最上位と言っていい。彼のファンならずとも一聴に値。 (柴田克彦)旋律楽器とハープによる録音に、ユニークなこだわりを持ったアルバムが加わった。「ライヴのようなセッション録音」による親密な演奏で、津野田の繊細な表現と、西江の清潔な音色が相性抜群。フランスのオリジナル曲の美しさに加えて、バッハやピアソラ作品の編曲ではハープの響きで楽曲の新しい一面が浮かび、聴くほどに新鮮。ライナーノーツも独特で、録音時の配置、機材、楽器の詳細まで図示。さらに通常の曲目解説の代わりに彼らの対談を掲載。曲への思い、編曲演奏の調整ポイントや苦労話まで楽しく語られていて、一流奏者の生の声を伝える読み物としても面白い。(林 昌英)12歳でイギリスに渡り、以来20年間ロンドンを拠点に活動。2010年に英国王立音楽大学修士課程を修了したのち、15年に帰国した綱川千帆のデビューアルバム。ベールをまとったような柔らかく光る音で奏でられるスカルラッティとベートーヴェンは、表情豊か且つ気品を備えた演奏で、安らかな空気を創出する。プーランクとラヴェルで随所に現れる、芯があって透明度の高い音、バルトークやプロコフィエフで鳴らされる妖しげな音、ビビッドな音など、現代ピアノならではの表現力を生かした多彩な音が収められている。幅広いレパートリーがまとめられ、1枚でさまざまな風景を見せてくれる。(高坂はる香)

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