eぶらあぼ 2018.5月号
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77紀尾井 明日への扉 第20回~第23回“今が旬”の若手による意欲的な演奏を目の当たりにする文:奥田佳道 愛すべきヴェニュー、紀尾井ホール(運営:公益財団法人 新日鉄住金文化財団)は、演奏家を育む。伸び行く才媛、俊英にリサイタル(!)の機会を授け、文字通り「明日への扉」を開くのだ。 早6年目を迎えた同ホールの名物企画。2018年度の4公演も決まった。まずは、昨年のミュンヘン国際音楽コンクールで第3位と委嘱作品の最も優れた演奏に贈られる特別賞を受賞したピアノの久末航(ひさすえ・わたる)(7/31)。鍵盤芸術の古典、フランス音楽の花束、それにカーターという時空を超えたプログラムで、東京の晴れ舞台に名乗りを挙げる。ミュンヘンで弾いたデュサパンの「Did it again」(コンクール委嘱作品)も添えられた。 続いて昨年の神戸国際フルートコンクールで日本人最高位の第4位を受賞した秋元万由子(10/16)。プロコフィエフのソナタにシューベルトの名変奏曲、武満徹、タファネルとフルート好きには堪えられない選曲だ。 コンサートマスターや室内楽にも、うまみを発揮するスペインのヴァイオリニスト、フランシスコ・フラナも選ばれた(11/30)。20世紀初頭にティボーのために書かれた、とされるグラナドスの秘曲ソナタは聴き逃せない。定番のフランクのソナタも注目だ。 今年度のラストを飾るのは、小澤征爾、ファビオ・ルイージ、パーヴォ・ヤルヴィとの共演も記憶に新しいソプラノの三宅理恵(2019.2/22)。東京での本格的なリサイタルはこれが初めてというから驚く。華やかなアリアもさることながら、ゴードンの「朝は本当にあるの?」と藤倉大の「世界にあてた私の手紙」ソプラノ版世界初演が予定され、これは創造的なライヴとなる。 全4公演。体感したいものである。久末 航 ©Daniel Delangロシアン・ピアノスクール in 東京 2018モスクワ音楽院の名教授陣によるマスタークラスとコンサート文:高坂はる香8/12(日)~8/19(日) カワイ表参道問 カワイ音楽振興会「ロシアン・ピアノスクール in 東京」事務局03-5485-8511http://kawai-kmf.com/rps/2018/ 世界で活躍するピアニストの経歴中にモスクワ音楽院という文字を見ることは多いが、なかでも同音楽院の重鎮、セルゲイ・ドレンスキー教授とその門下の教授陣のもとで学んだピアニストの存在は目立つ。ロシアの五大ピアノ楽派のひとつであるドレンスキー教授クラスからは、過去に国際ピアノコンクール入賞者を100人以上輩出しているという。 そんなドレンスキー教授の愛弟子である名教育者たちを招いて毎夏行われているロシアン・ピアノスクールが、今年も8月12日~19日にカワイ表参道で開催される。今年からモスクワ音楽院ピアノ科学科長のアンドレイ・ピサレフ教授が音楽監督を務め、例年通り、パーヴェル・ネルセシヤン教授とともにマスタークラスを担当する。 用意されているのは、ピアニストやピアノ教師を目指す高校生や一般向けのコースと、新設された、音楽大学や音楽高校の指導者対象のプロフェッショナルコース。いずれもレッスンには通訳がつく。日本にいながら世界最高峰の音楽院の指導を受けられるうえ、今後留学などでステップアップを目指す方にとっては、出会いや発見の場となるかもしれない。申し込み受付は5月31日まで。録音による審査を通過すると、受講可能となる。 レッスンの一部は一般公開で、聴講も可能。また、期間中に行われる、ピサレフ、ネルセシヤン両教授のハーフ・コンサートは、カワイ表参道パウゼというサロン空間で彼らの演奏を聴けるということで毎年人気だ。早めにチェックしておこう。アンドレイ・ピサレフ秋元万由子フランシスコ・フラナ ©Felix Broede三宅理恵パーヴェル・ネルセシヤン第20回 7/31(火) 久末 航(ピアノ)  第21回 10/16(火) 秋元万由子(フルート) 第22回 11/30(金) フランシスコ・フラナ(ヴァイオリン) 第23回 2019.2/22(金) 三宅理恵(ソプラノ) 各日19:00 紀尾井ホール 4公演セット券:5/11(金)発売問 紀尾井ホールチケットセンター03-3237-0061 http://www.kioi-hall.or.jp/

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