eぶらあぼ 2018.5月号
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70CD『ファゴットとコントラファゴットの二重奏』マイスター・ミュージックMM-4029¥3000+税Photo:Yasuhisa Yoneda岡崎耕治(ファゴット)& 山田知のりひと史(コントラファゴット)心躍らせる世界でも稀なファゴット・デュオ取材・文:オヤマダアツシInterview 聴いていると、なんだか楽しくなるCDである。長くNHK交響楽団の首席ファゴット奏者を務め、国内外に多くの門下生をもつ岡崎耕治。その門下生の一人であり、現在は東京都交響楽団で活動している山田知史。ファゴットとコントラファゴットのデュオ自体が珍しいものだろうが、シンプルな2声の合奏がこれほどまでに表情豊かで、心躍らせるものなのかと感嘆したほどだ。 岡崎「彼がいろいろなところから楽譜を探し出してくれ、実はこんなに演奏できる曲があるのか、2つの楽器でこれほどのことができるのかと驚いたほどです。練習や録音をしながら自分たちが楽しめましたし、このCDを聴いて『曲を書いてみよう』という作曲家が出てきてくれないものかとも思いました」 山田「この組み合わせでコンサートをしたという話も聞きませんが、十分にできるなと思いました。今回見つけたマイク・カーティス作曲の『セブン・モア・ジャズ&エスニック・デュオ』という曲は、練習していた段階ですでに面白く、他の曲もコントラファゴットの個性を知っていただけるものばかりです」 収録されているのは、2つの楽器によるオリジナル曲から、ファゴットとチェロのための作品、チェロとコントラバスのための作品、さらには子どもたちがピアノで演奏する曲としても有名なモーツァルトの「メヌエット」(K.1&K.2)など。コントラファゴットが音楽の土台と屋台骨を作り上げ、その上でファゴットがオペラアリアのように流麗な歌を聴かせる。どちらも高いレベルであることは当然だが、特にコントラファゴットの安定したベースラインに心惹かれる。 岡崎「今回のCDは、彼のようにコントラファゴットの魅力を引き出せるプレイヤーが出てきたからこそ実現したものです。音色や多彩なニュアンスも含め、表現力が実に豊かですし、ただ低い音が鳴っている楽器だと思っている方にこそ聴いていただきたいですね」 ファゴットも、決してユーモラスでコミカルな印象だけではなく、レガートで朗々と歌ったり、気持ちを抑制した音を聴かせるなど、こうしたシンプルな音楽だからこそ気がつく魅力にあふれている。高性能マイク2本のみを使った独自のセッティングで包み込まれるような音を創造し、繊細な音色の変化も捉えたマイスター・ミュージックのサウンドも、この新鮮なデュオを支えている。 最後にもう一度、書いてこう。「聴いていると楽しく、そして2つの楽器をもっと知りたくなるCDである」と。5/30(水)19:00、6/3(日)14:30 近江楽堂(東京オペラシティ3F)問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977http://www.gregorio.jp/zammai/アンサンブル『音楽三昧』 音楽三昧2018《巴里 百花繚乱 第2章》近代フランス“名管弦楽曲”もお手のもの文:寺西 肇©A.Muto 既成概念にとらわれぬ自在な発想で、チェンバロやリコーダー、ガンバなどのピリオド楽器とフルートやヴァイオリンほかのモダン楽器、その両方を駆使し、管弦楽などの様々な作品を“再創造”するアンサンブル『音楽三昧』。今回はラヴェル、ドビュッシー、フォーレとフランス近代の名品を取り上げる。 1984年に結成、チェロの田崎瑞博が編曲を担当し、これまでにバッハの鍵盤作品からショスタコーヴィチの交響曲まで、様々な時代・国の作品へ新しい響きを纏わせ、聴衆を驚かせてきた『音楽三昧』。中でも、“オーケストラの魔術師”ことラヴェルの作品群は、彼らが最も得意なレパートリーとしてきたものだ。 今回は、そんなラヴェルの超有名曲「ボレロ」と「道化師の朝の歌」を大枠に。メーテルリンクの戯曲に基づき、豊かな旋律美と繊細な表現で彩ったフォーレの「ペレアスとメリザンド」を。そして、若きドビュッシーが楽壇へ激震をもたらした「牧神の午後への前奏曲」と、50歳を越えて授かった愛娘に贈った「子供の領分」、“好対照”な2曲を取り上げる。
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