eぶらあぼ 2018.5月号
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57©Sakiko Nomura水谷川優子 チェロリサイタルシリーズVol.ⅪCello×Cello~チェロ、変幻自在!6/3(日)14:00 東京文化会館(小)問 コンサートイマジン03-3235-3777 http://yuko-miyagawa.com/水谷川優子(チェロ)素晴らしい仲間とのチェロづくしのステージ取材・文:宮本 明Interview 曲目といい編成といい、この人のコンサートはいつも刺激的で、聴き手の好奇心を掻き立ててくれる。チェリストの水谷川優子が、「年に1度、自分の好きなことにチャレンジできる、お祭りのような場所」と語るリサイタル・シリーズ。昨年節目の10回目を終え、次の10年への新しい一歩を踏み出す。「Cello×Cello~チェロ、変幻自在!」と題して、8人のチェリストたちによる、さまざまな編成の、チェロだけのアンサンブルで構成する公演だ。 「先輩から、頼もしい若手まで入っていただいて、思いっきりチェロづくしで」 厚い信頼を寄せる先輩・渡邊辰紀をスペシャルゲストに、「頼もしい弟のような存在」という海野幹雄、そして中西哲人、藤原秀章、水野優也、吉田啓晃、菅井瑛斗と、中堅から若手、留学を控えた大学生まで、各世代のチェリストが集結する。 「私を含めて8人、ひとりとしてキャラがかぶらない。たぶんチェリストは、100人いても全員引き出しが違う。それがチェロの魅力です」 コンサートでは、その8つの個性を、タイトルどおり「変幻自在」の編成で楽しめる、独創的でわくわくするプログラムが組まれている。まず、水谷川と渡邊のデュオによるパガニーニ「ロッシーニの主題による変奏曲(モーゼ幻想曲)」。もとはヴァイオリンとピアノ(管弦楽)のための作品だが、「お相手が(渡邊)辰紀さんなので、もっと遊べると思って」という、水谷川自身による編曲だ。そしてシューマンのチェロ協奏曲を、なんと独奏+チェロ4本で(萩森英明編曲)。 「原曲の第2楽章で、ソロがオーケストラのチェロ・パートのトップと絡む、あのイメージ。あのものすごくインティメートな世界に、最初から入っていったらどうなるか。チェロ・アンサンブルは何でもできるという自負があります」 そして後半は、チェロ四重奏によるバッハ「シャコンヌ」を挟んで、現役チェリストでもあるジョヴァンニ・ソッリマの作品を2曲。独奏の「嘆き」では、奏者の歌が要求されている。 「ずっと男性の声のイメージがあったんですけど、意外に自然にできそうな気がして」 そして最後は六重奏を従えて、渡邊とのデュオの「チェロよ、歌え!」が嵐のように駆け抜ける。 「気がついたらチェロを持っていた。チェロのない人生が想像できない」と水谷川。チェロを愛し、チェロに愛された、天性のチェリストによる、とっておきのチェロづくし。彼女の、そしてこの楽器の魅力の虜になる人が増えそうだ。ファースト・アルバム発売記念 荒 絵理子 オーボエ・リサイタル月の光|こうもり変装曲満を持して放つ、美しき歌と妙技文:柴田克彦 東響の首席オーボエ奏者・荒絵理子が、ファースト・アルバム『荒 絵理子 オーボエ・ソロ 月の光|こうもり変装曲』(molto neレーベル 4/25発売予定)をリリースし、記念リサイタルを行う。彼女は、美しい音色で表情豊かに歌う日本屈指の名手。第73回日本音楽コンクールで第1位を獲得後、東響で際立った演奏を続けるだけでなく、ソリストや多数の楽団の奏者として活躍し、2009年度出光音楽賞も受賞している。 「オペラ、ファンタジー、オリジナル」がコンセプトのCDも、持ち前の絶妙な抑揚を生かした魅力作。まずは「月の光」5/10(木)19:00 サントリーホール ブルーローズ(小)問 クレオム03-6804-6526で全体のムードを暗示し、カリヴォダ、シューマン、ドニゼッティのオリジナル曲で楽器の妙味を聴かせる。そして「大好き」と語るオペラ作品。《ルサルカ》の〈月に寄せる歌〉を切なく奏で、ハイライトでは、リサイタルでもピアノを務める山洞智の委嘱編曲「こうもり変装曲」に至る。 「こうもり~」は「小澤征爾音楽塾で虜になった思い入れの強い曲」で、〈シャンパンの歌〉を皮切りにおなじみの旋律が続々登場する当編曲は実に愉しい。すべてが生でも聴きたいものばかり。その類い稀な手腕を、録音&公演の両面で堪能しよう!

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