eぶらあぼ 2018.5月号
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56高関 健(指揮) 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団マエストロ4年目のシーズン開幕は独創的なプログラムで文:山田治生第315回 定期演奏会 5/9(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京シティ・フィル チケットサービス03-5624-4002 http://www.cityphil.jp/ 2015年4月に常任指揮者に就任した高関健の任期が21年3月まで延長され、着実に進化を続けている東京シティ・フィル。高関は2月の記者会見で「3年間、オーケストラが真面目に取り組み、実力を蓄積できました。より発展できるでしょう」と語った。そしてレパートリーについては「東京シティ・フィルが演奏していない曲を取り上げたい」と述べた。 18年度シーズン定期のオープニングを飾る5月の演奏会でも高関らしい凝ったプログラムが披露される。まず、ムソルグスキーの「はげ山の一夜」は、慣用的なリムスキー=コルサコフ版ではなく、原典版を使用。ムソルグスキーのオリジナルのワイルドなテイストが蘇る。そして、ニールセンの交響曲第6番「素朴な交響曲」が取り上げられる。ニールセンは、フィンランドのシベリウスと同じ年に生まれたデンマークの作曲家。二人は北欧を代表するシンフォニスト(交響曲作曲家)。1925年に完成された交響曲第6番「素朴な交響曲」はニールセンの最後の交響曲にあたる。軽快でモダンでどこかユーモラスな作品。打楽器や管楽器の使い方も面白く、実際の演奏会で楽しみたい。最後は、清水和音の独奏でラフマニノフのピアノ協奏曲第3番が演奏される。ロマンティックなピアノ協奏曲を代表する大作。定期演奏会のメインとして演奏されるだけに、百戦錬磨の清水のヴィルトゥオジティ(名人芸)とともに、オーケストラの活躍にも期待したい。清水和音 ©Mana Mikiアンドレス・オロスコ=エストラーダ(指揮) フランクフルト放送交響楽団新時代を築く名門楽団と俊英たちの饗宴文:伊熊よし子6/9(土)19:00 ミューザ川崎シンフォニーホール6/14(木)19:00 サントリーホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.japanarts.co.jp/ フランクフルト放送交響楽団は1929年創立の歴史と伝統を誇るオーケストラ。豊かにうたう弦楽器とダイナミックな管楽器の響きが特徴である。2014年、同オーケストラはコロンビア出身のアンドレス・オロスコ=エストラーダを首席指揮者に迎え、新時代の幕を開けることになった。オロスコ=エストラーダはウィーンで学び、いまもっとも勢いのある指揮者のひとりとして世界中から熱い視線を浴びている。オーケストラを自在に鳴らす術と情熱的で爽快感に富む指揮法は、カリスマ性と相まって聴衆を熱くする。また、3月にはウィーン響の次期音楽監督就任も発表されたばかりだ。今回はドヴォルザークの「新世界より」(6/9)とマーラーの交響曲第5番(6/14)で真価を発揮する。 ソリストは破竹の勢いでスター街道を突っ走っている若き逸材たち。ヴァイオリンのダニエル・ロザコヴィッチは7つの民族の血を受け継ぐエキゾチックな風貌の持ち主。幼いころに「ヴァイオリニストになる」と決め、その道を邁進。すでに著名な指揮者、オーケストラとの共演を重ね、演奏のたびに大きな話題となっている。9歳から愛奏し、いまや「自分の曲」と語るメンデルスゾーンで天才性を発揮する(6/9)。 ショパン・コンクールの覇者、チョ・ソンジンは正統的で純粋で心に深く響くピアニズムの持ち主。ラフマニノフの第2番では完全に脱力ができた自然な奏法と鍛え抜かれた美しい音色で、この協奏曲の美質を表現する(6/14)。 伝統あるオーケストラと注目の指揮者に若き才能が加わり、聴き慣れた作品に新風を吹き込む。心が高揚するような至福の時間が訪れるに違いない。ダニエル・ロザコヴィッチ©Sergey Andreevチョ・ソンジン©Harald Homann/DGアンドレス・オロスコ=エストラーダ©Martin Sigmund高関 健 ©大窪道治
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