eぶらあぼ 2018.5月号
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46オレグ・カエターニ(指揮) 東京都交響楽団高密度の演奏で名作の魅力を再発見!文:柴田克彦第858回 定期演奏会 Aシリーズ 6/11(月)19:00 東京文化会館問 都響ガイド0570-056-057 http://www.tmso.or.jp/ 注目しているファンも多いに違いない。6月の都響定期にオレグ・カエターニが登場する。往年の名匠マルケヴィチを父にもつ1956年生まれ(現在イタリア国籍)の彼は、イタリアでフェラーラ、ロシアでコンドラシンとムーシンに学び、カラヤン指揮者コンクールで優勝。フランクフルト歌劇場等のカペルマイスター、ヴィースバーデン・ヘッセン州立劇場、メルボルン響の音楽監督を歴任したほか、スカラ座やバイエルン放送響等に客演し、ミラノ・ジュゼッペ・ヴェルディ響とのショスタコーヴィチの交響曲全集の録音が賞賛されるなど、重厚なキャリアを築いている。都響にも2009、13、15年に客演し、端正な身振りでダイナミックかつ引き締まった音楽を創出。15年のショスタコーヴィチの交響曲第11番での贅肉のない鋭利な表現は、父譲りを彷彿させもした。 今回のプログラムは、シューベルトの交響曲第3番、ベートーヴェンの交響曲第5番「運命」のウィーン王道ものと、矢代秋雄のチェロ協奏曲。C.クライバーも録音したシューベルトの3番は、旋律美と爽快な疾走感をもつ佳品、「運命」はむろん隙のない名作であり、カエターニが愛してやまないという矢代の協奏曲は、極限まで練磨されたシリアスな逸品だ。この凝縮度の高い各曲は、カエターニにピッタリであり、見通しの良さと重層感を併せもつ都響の演奏で聴いてみたい演目でもある。チェロ独奏は大人気の宮田大。最近シャープな切れ味とスケール感を増している彼のソロならば、矢代作品の真価を耳新たに堪能できるであろう。 今回は、実力者たちのピュアな演奏で、作品の魅力を再発見したい。宮田 大 ©Yukio Kojimaコルネリウス・マイスター(指揮) 読売日本交響楽団気鋭が紡ぐ極彩色のシュトラウス・サウンド文:飯尾洋一第579回 定期演奏会 6/19(火)19:00 サントリーホール問 読響チケットセンター0570-00-4390 http://yomikyo.or.jp/ ドイツ出身の気鋭コルネリウス・マイスターが、首席客演指揮者を務める読売日本交響楽団の定期演奏会に登場する。マイスターはウィーン放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督を務め、2018/19シーズンからはシルヴァン・カンブルランの後任として、シュトゥットガルト歌劇場の音楽総監督に就任する。コンサートとオペラ、両面で活躍するマイスターが今回読響との共演で選んだプログラムは、オール・リヒャルト・シュトラウス。交響詩「ドン・キホーテ」と歌劇《カプリッチョ》から前奏曲と「月光の音楽」、歌劇《影のない女》による交響的幻想曲。これは新鮮味のあるプログラムではないだろうか。 「ドン・キホーテ」ではチェロに石坂団十郎を招き、ヴィオラは読響ソロ・ヴィオラ奏者の柳瀬省太が務める。二人の名手がドン・キホーテとサンチョ・パンサとなって、多彩なエピソードを表現する。この作品に与えられた副題が「大管弦楽のための騎士的な性格の主題による幻想的変奏曲」であることを思えば、後半の一風変わった選曲とのつながりも見えてくる。《カプリッチョ》の音楽が作り出す繊細なテクスチャーと、ミステリアスな《影のない女》の音楽。プログラム全体が音による幻想譚を紡ぎ出すような趣がある。外面的なスペクタクルにはとどまらない、奥行きの感じられる音絵巻として、大いに聴きごたえがありそうだ。オーケストラの高度な合奏能力が最大限に生かされることだろう。石坂団十郎 ©Marco Borggreveオレグ・カエターニコルネリウス・マイスター ©読響
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