eぶらあぼ 2018.5月号
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214国内外で意欲的な活動を展開し続けてきた名ピアニスト、田隅靖子は京都市立芸大などで後進の指導にも尽力、現在は京都コンサートホール館長を務める。今回のリサイタルは、日本のピアノ独奏作品に焦点を当てて。山田耕筰「青い焔」(1916)を起点に、尾高尚忠、芥川也寸志、柴田南雄、武満徹、望月京らの傑作の森に分け入り、松園洋二「五木の子守唄による哀歌」(2017)に至る、100年の時間を超える音の旅へ誘う。円熟の時がやって来る、新しい風を連れて。名手揃いだった東京ゾリステンでコンマスを務め、室内楽奏者としても大活躍の一方、ソリストとして秀演を重ねて来たヴァイオリンの長岡秀子。ピアノの俊英・佐藤卓史と共演するリサイタルは、モーツァルトのK.454、ベートーヴェンの第3番、シューベルトのイ長調(D574)と3つの名ソナタに、クライスラー編曲によるドヴォルザーク「スラヴ舞曲」の第1、2番を添える。客席で口ずさむのも、もちろん大歓迎だ。「下丸子クラシック・カフェ」のマスターとしてもおなじみ、ピアニストの山田武彦が、「思い出の歌」や「後世に伝えたい歌」を選りすぐり、春夏秋冬の全4回で届けるシリーズ。その第1回〈春〉では、ソプラノ内田千陽ら若手の実力派歌手で組織された「下丸子うたの広場シンガーズ2018」が、「早春賦」「エーデルワイス」など、日本や世界の名曲を次々に披露してゆく。彼女の“音の宇宙”の広大さが、実感できよう。先鋭的な演奏活動の一方、次代を担う多くの若手を育て、2年前に、デビューから半世紀を迎えたピアノの平尾はるな。今回のステージも、銘器ベーゼンドルファーを駆る。モーツァルトのソナタK.576に、「マズルカ第5、23、25番」「ノクターン第9、5番」とショパン、そして、プーランクほか西欧作品に、湯浅譲二、細川俊夫、西村朗と現代の邦人作品を交えて。月の5田隅靖子(ピアノ)~日本のピアノ曲 100年~長岡秀子(ヴァイオリン)鈴木孝佳(ピアノ)超絶技巧名曲シリーズ Vol.1辛島輝治(ピアノ)シューベルト室内楽演奏会平尾はるなピアノコスモス 2018ベーゼンドルファーコンサート下丸子うたの広場〈春〉歌でめぐる世界の旅 心に響く日本の歌5/1(火)19:00 京都コンサートホール アンサンブルホールムラタ5/11(金) 19:00 東京オペラシティ リサイタルホール5/6(日)13:30 栃木/エニスホール(野木町文化会館)5/3(木・祝)14:00 東京文化会館(小)5/13(日)14:00 東京文化会館(小)5/8(火)13:30 大田区民プラザ(小)文:笹田和人山田武彦ベルリンなどに学び、1961年に東京でデビュー以来、第一線を疾走し続けるピアノの名匠・辛島輝治。今年1月には傘寿記念公演を終えた屈指のシューベルト弾きが、その室内楽の佳品に対峙する。ヴァイオリン水野佐知香との二重奏曲イ長調(D574)に、チェロ河野文昭とは「アルペジオーネ・ソナタ」、さらにヴィオラ市坪俊彦、コントラバス笠原勝二が加わり、ピアノ五重奏曲「ます」を。盟友たちと極上の響きを築き上げる。鈴木孝佳は東京音大からヴュルツブルク音大に学び、ドイツでステージ活動や多くの登竜門での実績を重ねてきた俊英。4年半にわたる留学生活を終えての“完全帰国記念”リサイタルは、ムソルグスキー「展覧会の絵」をメインに。ベートーヴェンのソナタ第31番、リスト「超絶技巧練習曲第4番『マゼッパ』」や「巡礼の年 第1年スイス」から「泉のほとり」など技巧を尽くした傑作群を通じ、本場での研鑽の成果を問う。

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