eぶらあぼ 2018.5月号
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188CDSACDCDCDストラヴィンスキー:春の祭典、シェーンベルク:浄められた夜/ノット&東響わたしの好きな歌/高橋薫子ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」 他/バッティストーニ&東京フィル山根弥生子(ピアノ) ショパンを弾く Vol.3ストラヴィンスキー:バレエ音楽「春の祭典」シェーンベルク:浄められた夜(弦楽オーケストラ版)ジョナサン・ノット(指揮)東京交響楽団中田喜直:未知の扉、おやすみなさい、悲しくなったときは/木下牧子:ユレル、竹とんぼに、おんがく/フォーレ:月のひかり、夢のあとに/グノー:私は夢に生きたい/草川信:揺籃のうた/アーン:もし僕の詩に翼があったなら/プッチーニ:ムゼッタのワルツ(私が街を歩けば) 他高橋薫子(ソプラノ)河原忠之(ピアノ)ドヴォルザーク:交響曲第9番「新世界より」伊福部昭:シンフォニア・タプカーラ、ゴジラ~交響ファンタジー「ゴジラ VS キングギドラ」より第7曲アンドレア・バッティストーニ(指揮)東京フィルハーモニー交響楽団ショパン:夜想曲第1番・第2番・第4番・第5番・第7番~第9番・第13番・第14番・第17番・第20番(遺作)、幻想曲山根弥生子(ピアノ)収録:2017年7月、ミューザ川崎シンフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00658 ¥3200+税日本アコースティックレコーズNARD-5063 ¥3000+税日本コロムビアCOCQ-85414 ¥3000+税コジマ録音ALCD-9181 ¥2800+税ノット&東響の4作目のCD。20世紀初頭に新時代を拓いた“動と静”の名作を並べ、2つの道筋を対比させた意義深い1枚だ。「春の祭典」は、全体のマッシヴな音像と細部のクリアな動きを両立させた、鮮烈かつ豊潤な快演。しなやかに躍動するリズムが光り、第2部後半の迫真性も耳を奪う。「浄められた夜」は、ダブつきのない清冽なアンサンブルで“モダンな抒情味”を表出した好演。いずれも当コンビの好調ぶり(東響の各ソロも秀逸)を如実に示している。“ピュア・ワンポイント録音”によるナチュラルなサウンドも特筆もの。オーディオ的な妙味も十分だ。 (柴田克彦)全篇にわたって、歌と言葉に対する愛情が迸る。国立音大からイタリアに学び、藤原歌劇団をはじめオペラの檜舞台で秀演を重ねている名ソプラノ、高橋薫子。そんな彼女が「好きな曲」だけを選りすぐった。「海」「春」といった日本語の言葉ひとつにも宿る命。かたや、ベル・カントで歌いこなされるイタリア語の名アリア、流麗に表現されたフランス語の歌曲にも、とりどりに感情が躍動する。まさに、日本が誇るディーヴァの面目躍如。そして、曲想によって自在に色彩を変化させ、高橋の歌う言葉にヴィヴィッドに応えて、饒舌に“語る”ピアノの河原忠之の名アシストぶりも特筆ものだ。(笹田和人)バッティストーニと東京フィルの「BEYOND THE STANDARD」。定番名曲と日本人作曲家の作品をカップリングし、セッション録音で綿密に仕上げていく本シリーズ第1弾の当盤は「新世界より」と伊福部昭。セッションならではの高音質なのが嬉しいが、演奏もまた優秀。基本的にストレートな解釈ながらも細部の工夫や仕上げが見事な「新世界より」(例えば第1楽章での提示部と展開部での第2主題のテンポ変化、第2楽章後半部での極めて内省的な表現)、そしてもしかするともっと凄いのは伊福部。湧き上がるリズムの躍動感が尋常ではない。これは大変な聴きもの。 (藤原 聡)精力的にアルバムを発表し続ける山根弥生子。ショパン作品集の第3弾は夜想曲集であり、最後に幻想曲op.49も収めた。ショパンの21曲の夜想曲のうち11曲を選んでいるが、山根は初期のものから晩年の傑作までをバランスよく選曲。第1、2番はパッセージの一音一音にも意味を感じさせられる、甘美なカンタービレ。第4番は中間部の激しい曲想のコントラストが鮮やかだ。第7番以降の作品は深みを増すが、第13番の低音が織りなす音楽的時間は哲学的な迫力を帯びる。幻想曲に聴かれる深い呼吸、自由と抑制の考え抜かれた均衡は、まさにベテランの至芸である。 (飯田有抄)

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