eぶらあぼ 2018.5月号
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184CDSACDCDCDヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」/ポッジャー&ブレコン・バロック霧の中から ~英国ヴァイオリン曲集~/小野明子楽器一本、ウチ一人/藤平沙織モーツァルト 変奏曲集/土居知子ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲集「四季」、協奏曲ホ長調「安らぎ~聖なるクリスマスのために」、同ホ長調「恋人」、同ニ長調「ムガール大帝」レイチェル・ポッジャー(ヴァイオリン/指揮)ブレコン・バロックスコット:タラハシー組曲/ブリッジ:ヴァイオリンとピアノのための4つの小品/フィンジ:エレジー/ウォルトン:カンツォネッタ&スケルツェット/ヴォーン・ウィリアムズ:ロマンスとパストラール/エルガー:3つの小品小野明子(ヴァイオリン)ゴウ芽里沙(ピアノ)山田耕筰:からたちの花/アイルランド民謡:庭の千草/マスネ:タイスの瞑想曲/シューベルト:アヴェ・マリア/フォーレ:夢のあとに/サン=サーンス:白鳥/J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番よりプレリュード/コヴァーチ:バッハへのオマージュ、ウェーバーへのオマージュ 他藤平沙織(クラリネット)モーツァルト:サリエリの歌劇《ヴェネツィアの定期市》のアリア「わが愛しのアド―ネ」による6つの変奏曲、フランス民謡「あぁお母さん聞いてちょうだい」による12の変奏曲、ソナタ第11番「トルコ行進曲付」、クラリネット五重奏曲の主題による6つの変奏曲 他土居知子(ピアノ)CHANNEL CLASSICS/東京エムプラスRCCSSA40318 ¥3238+税ナミ・レコードWWCC-7865 ¥2500+税コジマ録音ALCD-9180 ¥2500+税ナミ・レコードWWCC-7866 ¥2500+税ポッジャー待望の「四季」は自身のアンサンブルであるブレコン・バロックとの共演。この演奏、過激な同曲録音を聴き慣れた耳には一聴やや大人しいと思われるかも知れない。しかし、細部にわたって入念に構築されたアーティキュレーション、ソロと合奏部の音響バランスの妙、地味ながら素晴らしい音色的アクセントをもたらしているヴィオローネ、テオルボの魅惑的響きなど、繰り返し聴き込むにしたがってその味わいは徐々に増していくだろう。これに対し、カップリングの3曲はより直截にポッジャーの技巧の冴えを楽しめよう。中でも「ムガール大帝」。 (藤原 聡)12歳からイギリスに住み、現在同国で教授も務めている小野明子が想いを込めて作りあげた、英国ヴァイオリン小品集アルバム。イギリスの田園風景の朝霧から浮かびあがってきたような、どこか懐かしさを感じさせるメロディと淡いハーモニーをもつ小品たちを、小野が温かく、しかし凛とした独特の音色で紡いでいく。彼女の高い技巧は豊かな詩情と安心感につながり、作曲家ごとの特徴もさりげなく弾き分けられて、実に巧みで心地よい。有名作とは言えずとも、どの曲も聴く人それぞれの心に寄り添う佳品ばかりで、聴き進めるたびに愛すべき曲に出会える喜びは大きい。(林 昌英)「楽器一本、ウチ一人」のタイトルは、藤平沙織の生きざまと決意を投影。だが、その決意はゴツゴツしたものでなく、ほっこり温かで優しい愛情に根差している。それは、「からたちの花」冒頭の、柔らかな歌い出しを聴くだけで、お判りいただけよう。数々の登竜門で実績を重ねるも、あえて音大には学ばず、関西を拠点に独創的な活動を展開する名手の、クラリネットによる無伴奏。超絶技巧を誇示するのでもなく、単音で丁寧に綴られる旋律線は、的確な拍節感覚とフレージング、自然な伸縮を伴い、様々に色彩を変えてゆく。やがて、ないはずの伴奏すら、彼方から聞こえてくる気もしてくる。(寺西 肇)温かく、伸びやか。モーツァルトの音楽にはさまざまなキャラクターを見出すことができるが、土居知子の新譜からは、そんな音楽性が浮かび上がってくる。サリエリのオペラアリアに基づく変奏曲や、「きらきら星変奏曲」としてよく知られるK.265、第1楽章に変奏曲形式を置いた「トルコ行進曲付」ソナタ、クラリネット五重奏曲に基づく変奏曲など、コロコロと表情を変えるモーツァルトの変奏曲が、喜びに溢れた音色で描き出される。これほど優しく明るいモーツァルトこそは、さまざまな状況に置かれた聴き手の心情に寄り添い、深く沁み入るのではないだろうか。(飯田有抄)
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