eぶらあぼ 2018.2月号
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78CD『シューベルト:八重奏曲/ベルリン・フィル八重奏団』Wisteria ProjectBPOC-0001¥3000+税©Keita Osada樫本大進(ヴァイオリン/ベルリン・フィル八重奏団)精鋭集団による“名刺代わり”のレコーディング!取材・文:伊熊よし子Interview ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団は、メンバーがそれぞれ音楽性と人間性の合う人と組んで室内楽を演奏している。その室内楽アンサンブルとして、80年以上前に結成されたのがベルリン・フィル八重奏団である。以後、メンバーを変えながら長年に渡り、世界各地で演奏を行ってきた。このアンサンブル結成のきっかけとなったのは、ほかならぬシューベルトの「八重奏曲」。シューベルトの円熟期の傑作のひとつに数えられ、特有の歌謡性に富む。 ベルリン・フィル八重奏団の現在のメンバーは、樫本大進(第1ヴァイオリン)、ロマーノ・トマシーニ(第2ヴァイオリン)、アミハイ・グロス(ヴィオラ)、クリストフ・イゲルブリンク(チェロ)、エスコ・ライネ(コントラバス)、ヴェンツェル・フックス(クラリネット)、シュテファン・ドール(ホルン)、モル・ビロン(ファゴット)といういずれ劣らぬ実力派の8人で、まさに精鋭集団である。 その彼らがアンサンブルのきっかけとなったシューベルトの「八重奏曲」を録音した。今回のレコーディングは2017年1月の来日公演時に行われた3日間のセッション録音。ベルリン・フィルの録音を多数手がけているレコーディング・プロデューサー、クリストフ・フランケが来日して収録が行われた。 レコーディングに関して樫本大進が語る。 「3日間のうち約1日半は音決めに費やしました。みんな自分の音楽に自信と誇りをもち、主張が強い。ですから何度も録り直して音を決め、ようやくみんなの意見がまとまったところで録音が始まりました。全員が求めているものの質が高く、けっして妥協はしない。弦楽器と管楽器の集まりですから音の融合にも侃々諤々の議論となります。最高のアンサンブルを生み出したいと願い、いいバランスをとるためにディスカッションし、演奏し直し、結構大変でした。でも、結果的にはいい録音に仕上がったと思います。全員がいつもオーケストラで一緒に演奏していますから、方向性は同じ。今回、録音できて本当によかったです」 いまのメンバーはものすごく練習するそうで、互いの信頼関係も厚く、仲も良い。 「だれひとり欠けてもこのアンサンブルは成り立たない。八重奏曲は数少ないため、いま作品を探したり委嘱したりしています。新たな発見をしたいからです。でも、シューベルトの『八重奏曲』のために結成されたアンサンブルですから、この曲はずっと弾いていきます。演奏するたびに密度が濃くなりますから」2/4(日)14:00 トッパンホール問 チケットスペース03-3234-9999 http://www.ints.co.jp/辻本 玲(チェロ) 心に響く芳醇な音色文:林 昌英©竹原伸治 日本音楽コンクール第2位と聴衆賞、2009年ガスパール・カサド国際チェロ・コンクール第3位入賞などの受賞歴をもち、ソリストとして活躍を続けてきた辻本玲。15年に日本フィルハーモニー交響楽団のソロ・チェロ奏者に就任、以来ますます表現の幅を広げ、代表的な名手としての地位を築いている。 その辻本がトッパンホールで、ひと味違うチェロの名品を集めたリサイタルを開く。前半はヤナーチェク「おとぎ話」に続き、ペンデレツキの現代的な「ディヴェルティメント」、カサドの代表作でスペイン情緒豊かな「無伴奏チェロ組曲」と、20世紀無伴奏曲2作を。その名を冠したコンクールの縁もあるカサドの傑作は特に聴きもの。後半は一転して、ピアノも大活躍するショパンの2作。華やかさと名旋律が楽しい青年期の「序奏と華麗なるポロネーズ」と、深い内容をもつ晩年の「チェロ・ソナタ」という対照も鮮やか。辻本との共演も多い須関裕子の華麗なピアノと共に、チェロの多様な魅力を味わい尽くす。

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