eぶらあぼ 2018.2月号
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74東京・春・音楽祭―東京のオペラの森2018―シンフォニエッタ・クラコヴィア with トマス・コニエチュニー(バスバリトン)ポーランドの精鋭集団による染み入る響き文:飯尾洋一 Ⅰ. マーラーに捧ぐ 3/16(金)19:00Ⅱ. スラヴィック・メロディ――ペンデレツキ生誕85年に寄せて 3/17(土)15:00東京文化会館(小)問 東京・春・音楽祭チケットサービス03-6379-5899 http://www.tokyo-harusai.com/ 今年の「東京・春・音楽祭」の開幕を飾るのはポーランドのシンフォニエッタ・クラコヴィアとバスバリトンのトマス・コニエチュニー。ポーランドの古都クラクフを拠点とする弦楽アンサンブルと、同国が生んだ世界的なバスバリトンが、2種類の意欲的なプログラムで共演する。指揮はウィーン・フィルのコントラバス奏者でシンフォニエッタ・クラコヴィア総監督兼首席指揮者のユレク・ディバウ。 ひとつは「マーラーに捧ぐ」と銘打たれたプログラム。マーラー作曲の交響曲第5番から第4楽章「アダージェット」と、連作歌曲「亡き子をしのぶ歌」、そしてマーラーが弦楽合奏用に編曲したシューベルトの「死と乙女」が演奏される。「亡き子をしのぶ歌」ではコニエチュニーの表現力豊かなマーラーを味わえることだろう。「死と乙女」からは、マーラーがこの曲に抱いたであろう、オリジナルの弦楽四重奏では収まりきらない大きな音のドラマが伝わってくるはず。 もうひとつは、「スラヴィック・メロディ——ペンデレツキ生誕85年に寄せて」。20世紀のポーランドを代表する作曲家ペンデレツキの作品から、シンフォニエッタ第3番「書かれなかった日記のページ」と、「ポーランド・レクイエム」より「アニュス・デイ」(弦楽合奏版)が演奏されるほか、ムソルグスキーの「死の歌と踊り」、ドヴォルザークの「弦楽セレナード」といった名曲が並ぶ。ペンデレツキゆかりの地であるクラクフのアンサンブルならではのプログラムだ。張りつめたペンデレツキの音楽と、のびやかなドヴォルザークとの対比もおもしろい。ソニックシティ・オープン30周年記念日本フィルハーモニー交響楽団特別公演趣深いショパンとエネルギッシュな名曲と文:高坂はる香4/8(日)14:30 ソニックシティ問 ソニックシティホール048-647-7722 http://www.sonic-city.or.jp/ 1988年、さいたま市となる以前の大宮にオープンしたソニックシティが、開館30周年を記念して3つのコンサートを行う。その一つ目が、日本フィルハーモニー交響楽団による特別公演。指揮には小林研一郎、ソリストにピアニストのダン・タイ・ソンを迎えるという豪華な内容。嬉しいのは、埼玉県内の在住・在勤・在学者は、チケットが全席種、半額になるということ。該当者の場合、S席でも3000円でこの豪華な顔合わせの公演を聴くことができる。 前半でダン・タイ・ソンが演奏するのは、ショパンのピアノ協奏曲第2番。彼にとって、アジア人として初めて優勝した80年のショパン国際ピアノコンクールで演奏した、記念すべき作品だ。円熟期を迎えた今も、みずみずしく繊細な音楽を奏で続けるダン・タイ・ソンが、作曲家若き日の作品で表現するショパンは、聴きどころにあふれている。小林がオーケストラと奏でる情感豊かな音楽に、ピアノがどのように応えるのかも楽しみ。 後半は、ロッシーニの《ウィリアム・テル》序曲やドヴォルザークの「ユモレスク」、そしてシベリウスの「フィンランディア」という、“炎のコバケン”ならではの劇的でダイナミックな表現が堪能できる名曲プログラム。日本フィルとともに、特別公演にふさわしい、華やかでエネルギーみなぎる音楽を響かせる。 長年優れた公演を届け続けてきたソニックシティの大盤振る舞い! 足を運んでみる絶好の機会だ。ダン・タイ・ソン ©佐藤寛敏ユレク・ディバウ ©Michał 'Massa' Mąsiorシンフォニエッタ・クラコヴィア ©PAP, Stanisław Rozpędzikトマス・コニエチュニー ©Klaudia Taday小林研一郎 ©浦野俊之

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