eぶらあぼ 2018.2月号
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64©武藤 章フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ 50回記念演奏会「三大協奏曲」1/27(土)16:00 よこすか芸術劇場問 横須賀芸術劇場046-823-9999 http://www.yokosuka-arts.or.jp/田村 響(ピアノ)ラフマニノフ「2番」で成熟の証しを取材・文:宮本 明Interview 2000年に始まった横須賀芸術劇場の「フレッシュ・アーティスツ from ヨコスカ」は、文字どおり、未来へ羽ばたくフレッシュな若き俊英たちをいち早く紹介、サポートするリサイタル・シリーズだ。昨年7月に第50回の節目を迎えたのを記念して、過去の出演者3人をソリストに招き「三大協奏曲」演奏会が開かれる。 07年に20歳でロン=ティボー国際コンクールに優勝したピアニスト田村響は、高校3年生だった04年7月、このリサイタル・シリーズに出演して、リストとプロコフィエフの重量級プログラムを披露した。 「演奏については、もうあまり記憶がないのですが、海外の講習会に参加したり、いくつかの海外コンクールにも挑戦して、ちょうど世界に目が向き始めていた時期でした。学校生活との両立で、眠気と戦いながら必死で練習していましたね」 今回演奏するラフマニノフの協奏曲第2番はロン=ティボーの本選でも弾いた作品だ。 「15歳の時から何度も弾いている作品です。あまり言葉にして考えたことはないのですが、ロシアの広大な薄暗い大地を漂っているようなイメージです。流れるようなメロディ・ラインが特徴だと思います。ロン=ティボーの優勝は、もちろんすごく嬉しかったですけれど、一方で、これからこの道でいろんなことを経験し、向き合って行く機会を与えられたんだなという覚悟も感じていました」 ピアニストとして、その「向き合い方」の部分、向き合おうとする気持ちは、高校生の頃から変わらないという。 「もちろん、さまざまな経験によって自分の底にあるエネルギーが膨らんだりはしているので、作品へのアプローチは毎回少しずつ変わっていると思います。前よりは迷わないようにもなりました。でも、5年後に振り返れば、また同じようなことを言うかもしれませんから、結局その積み重ねですよね。先がどんな道なのか、まったく想像はできませんが、いずれにしても必ずプラスの方向に行くと信じているので楽しみです」 今回の「三大協奏曲」は、ほかにチェロの上村文乃によるドヴォルザークと、ヴァイオリンの鈴木愛理によるメンデルスゾーンが演奏される。 「全部短調ですね。音楽って、心の底からハッピーな曲は少なくて、何かを超えて出てくるものが美しい。そこが音楽の感動・共感ポイントだと思います。今回はヴァイオリンとチェロとピアノ、それぞれの楽器の響きを聴いて、いろんな感じ方ができるのは、すごく素敵ですね」 管弦楽は東京シティ・フィル、指揮は田村とは初共演となる高関健だ。新進舞踊家海外研修員による現代舞踊公演新世代アーティストたちが魅せるダンスの饗宴文:高橋森彦 文化庁の「次代の文化を創造する新進芸術家育成事業」で選ばれ海外留学した気鋭の4人に焦点を当てた公演だ。 フランスで2年学んだ飯塚真穂は『Winter』を発表。群舞の構成に長ける実力者で、ダンサーだけでなく空間をも躍動させるごときスケールの大きな作舞に注目したい。アメリカに1年留学した津田ゆず香は『March』を披露。ソロ、デュエットの秀作をものにし、異分野とのコラボの経験も重ねてきただけに群舞作品の仕上がりも期待できる。髙橋純一はフィンランドの鬼才テロ・サーリネンの下で1年間研修し2/14(水)、2/15(木)各日19:00 新国立劇場(小)問 現代舞踊協会03-5457-7731 http://www.gendaibuyou.or.jp/津田ゆず香飯塚真穂船木こころ髙橋純一た。気負いのない踊りを持ち味とし、振付にも意欲的なので今回の『maa – kävellä』も楽しみだ。オランダで1年間勉強した船木こころは繊細かつ力強いソロに定評があり、『滑りやすい坂』ではアンサンブルをどう動かすのか目が離せない。 今この時代を生きる上で切実に感じることをフィジカルな表現で訴えかけるコレオグラファーたち。彼らの本気を受け止めたい。

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