eぶらあぼ 2018.2月号
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54©大八木宏武(都恋堂)スロヴァキア室内オーケストラ & 錦織 健2/14(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 ジャパン・アーツぴあ03-5774-3040※全国公演の詳細は右記ウェブサイトでご確認ください。 http://www.japanarts.co.jp/錦織 健(テノール)フィギュアスケートにちなんだ名曲を集めて取材・文:小田島久恵Interview テノールの錦織健がフィギュアスケートをテーマにした名曲コンサートをバレンタインデーに行う。スロヴァキア室内オーケストラとは2001年の初顔合わせ以来、これが7回目のツアー。息の合ったアンサンブルでサン=サーンスの「ノッテ・ステラータ(白鳥)」(2016/17年 羽生結弦)、ニーノ・ロータの「ロミオとジュリエット」(11/12年 同)、プッチーニの《トゥーランドット》より〈誰も寝てはならぬ〉(06年 荒川静香・15/16年,17/18年 宇野昌磨)など、フィギュアにちなんだ人気の曲を熱唱する。 「スロヴァキア室内オーケストラとはコンサートだけでなく、現地で何度もレコーディングしていますが、とにかく真面目で練習熱心な人たちです。スロヴァキアはウィーンから車で1時間ぐらいの静かなところで、僕の故郷の島根に通じるメランコリックな陰影を感じました。ヨーロッパにはめずらしく控えめな人が多いのです。芸術監督で指揮とヴァイオリンを兼任するエヴァルト・ダネルさんは、そんな中でも珍しく陽気なエンターテイナーで、僕が今までに出したアイディアは全部『いいよ』と言ってくれました。しばらくバロックのレパートリーが続いたので、日本の歌はどうかという案もあったのですが、僕が『フィギュアスケートにちなんだ曲をやりたい』と言ったところ、すぐにOKが出たのです」 選曲と同時に、オリジナルなオーケストレーションを準備していく「手作り感」もこのコンサートならでは。東京オペラシティを含め全国で計6回の公演を行うが、「フィギュアで聴いた名曲」をきっかけにして、若い聴衆にも聴いてほしいと語る。 「フィギュアスケートと声楽は似ていると思うんです。たくさん練習をしても4回転ジャンプが失敗してしまうことがあるように、声楽も高音を出すことにはつねにリスクがともなうし、歌手は体力的にも精神的にもアスリートと同じ部分がある。この公演のポスターには、羽生結弦君や宇野昌磨君を大きく載せて、その下に小さく僕を載せたいと思ったほど(笑)。僕の歌だけでなく、スロヴァキア室内オーケストラの独断場となるインストゥルメンタル(公演の前半ではヴィヴァルディ「四季」全曲が演奏される)も聴けますし、東京公演はバレンタインデーに当たる日なので、イベントとして出かけてみるのもおすすめです」 テノール歌手としてのストイックな鍛錬と、持ち前のユーモア・センスで聴衆を確実に楽しませてくれる錦織健。オリンピックでスケーターたちが輝きを放つ寒い2月にホットなコンサートで心を温めてはいかがだろう。トリオエリップス(ピアノ三重奏) 鮮烈な才能の融合を体感する文:笹田和人 2002年、瑞々しい感性と卓越した技術を併せ持つパリ国立高等音楽院の3人の学生によって結成されたピアノ三重奏団「トリオエリップス」。古典から現代に至るレパートリーを独自の感覚で昇華、耳の肥えたフランスの聴衆たちを唸らせ続けている精鋭集団が、日本に初お目見えする。 指揮や作曲でも才能を発揮、若くしてパリ・ポール・デュカス音楽院の学長を務めるピアノのフィリップ・バルベラリア。そして、フランス国立放送フィルで活躍するヴァイオリンのシリル・バルトン、リール国立管首席を務めるチェロのグレゴリオ・ロビノ。トリオでは古典はもちろん、現代の若手による作品の初演や室内楽の啓蒙にも力を注いで来た。2/23(金)19:00 Hakuju Hall問 ビーフラット・ミュージックプロデュース03-6908-8977 http://www.bflat-mp.com/他公演 2/24(土)名古屋・5/R Hall & Gallery 音楽ホール(052-734-3461)    2/25(日)京都・青山音楽記念館バロックザール(075-393-0011) 初来日ツアーでは、弱冠16歳で名匠ジャック・ルヴィエに師事した、俊英作曲家マチュー・ステファネッリの新作を初演。そこへ、ハイドンの第27番、ブラームスの第1番、ラフマニノフ「悲しみの三重奏曲」と、ピアノ三重奏曲の名品を配する。文化都市パリだからこそ育み得た、鮮烈な才能の融合を体感したい。左より:フィリップ・バルベラリア/シリル・バルトン/グレゴリオ・ロビノ

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