eぶらあぼ 2018.2月号
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53マルク・ミンコフスキ(指揮) レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルメンデルスゾーンに新たな光を当てる文:那須田 務2/27(火)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/他公演 2/26(月)石川県立音楽堂(076-232-8632) この2月、マルク・ミンコフスキがピリオド楽器のオーケストラ、レ・ミュジシャン・デュ・ルーヴルを率いて来日し、メンデルスゾーンの「フィンガルの洞窟」、交響曲第3番「スコットランド」・第4番「イタリア」を演奏する。 バロックから20世紀初頭まで彼らのレパートリーはひろく多彩だが、メンデルスゾーンは珍しい。昨年夏、東京都交響楽団に客演した際にその話をしたところ、とても楽しみにしていると満面の笑みを浮かべた。目下メンデルスゾーン交響曲の全曲録音を準備しているのだという。もちろんミンコフスキ自身はこれまでにもゲスト指揮者としてモダンのオーケストラとメンデルスゾーンを演奏している。でも、意外にも「イタリア」は初めてなのだそうだ。彼にはそういうことがよくあるらしい。何事も固定観念にとらわれないので、ただ“名曲だから”と言う理由で取り上げることはないのだ。逆にミンコフスキによって知られるようになった作品は数知れない。そして彼らが演奏すると、誰もが知る有名曲であっても初めて聴くような新鮮な感銘を与えてくれる。生き生きとした情感、溢れんばかりのエネルギーとともに。その秘訣を尋ねると、彼はこう答えてくれた。「どんな物事も明晰に伝えたいだけなんですよ。目一杯直感を働かせて、作曲家が楽譜に書いた指示をひたすら丁寧に読み取っていくのです」。 メンデルスゾーンのスコアからどんな音楽を引き出してくれるのか。公演が待ち遠しい。マルク・ミンコフスキ ©Marco Borggreveジュゼップ・ポンス(指揮) 東京交響楽団耳踊り心沸き立つ昼下がり文:柴田克彦東京オペラシティシリーズ 第102回3/25(日)14:00 東京オペラシティ コンサートホール問 TOKYO SYMPHONY チケットセンター044-520-1511 http://tokyosymphony.jp/ リズムが弾む日曜の午後! 東京交響楽団の3月の東京オペラシティシリーズは、そんな躍動感に溢れたプログラムだ。ベートーヴェンの交響曲第7番は言うに及ばず、ワーグナーの歌劇《恋愛禁制》序曲も終始リズミカルだし、プロコフィエフのピアノ協奏曲第3番も推進力抜群のリズムが随所で耳を踊らせる。中でも注目は《恋愛禁制》だろう。本作は巨匠が22歳時に作曲したブッファ風のオペラで、序曲は打楽器を駆使した軽快かつ賑やかな音楽。ドヴォルザークの「謝肉祭」やオペレッタの序曲を彷彿させる(ワーグナーとはとても思えない)このレア曲を生体験するだけでも足を運ぶ甲斐がある。 指揮はジュゼップ・ポンス。1957年スペイン生まれの彼は、スペイン国立管の首席指揮者を9年間務め(現在は名誉指揮者)、2012年からバルセロナのリセウ大劇場の音楽監督として腕をふるっている。パリ管、ゲヴァントハウス管、BBC響ほか著名楽団への客演も多数。ラテンの感性をもつ実力者が、おなじみのベートーヴェンの7番をどう聴かせるのか、大いに楽しみだ。 ピアノは英国期待の新星マーティン・ジェームズ・バートレット。1996年生まれの彼は、英国王立音楽院で学び、2014年にBBCヤング・ミュージシャン・アワードを受賞。15年のBBCプロムスに最年少ソリストとしてデビューし、最大級の評価を得ている。クリアなタッチによる瑞々しいソロは、プロコフィエフの3番にもピッタリ。この近未来のスターの才気迸るピアノもぜひ耳にしておきたい。 これは、未知の魅力に富んだ、心も弾む公演だ。マーティン・ジェームズ・バートレット ©Kaupo Kikkasジュゼップ・ポンス ©Igor Cortadellas

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