eぶらあぼ 2018.2月号
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185ロッパ等の最先端では、「ほとんど踊らないダンス作品」も珍しくないのである。 もっともこういう動きに対して「いや、ダンスはバリバリ動く身体を見せろや!」という反動も当然起こっている。そのひとつが、ストリートダンスや現代サーカスといった「強靱で異質な身体と融合したダンス」だ。 そうした過程で、当然にユニゾンも進化してきた。単なる「大勢で動きを合わせる快感」に留まらず、新しい音の取り方、振付密度やスピードの大幅アップなどだ。「バブリーダンス」は厳密に言うとジャズダンスなのだが、数分間しか身体がもたないような、ありえない密度の振りを詰め込んでいる。これはコンクール用の作品だからできることで、1時間半のプロのダンス作品では、一曲で消耗しきってしまうような振付はなかなかできない。それを見事なキレで踊り切ったところに、彼女らの魅力がある。日本のバブル期のファッションなど知らない海外のダンスファンにも強くアピールしたのは、純粋にダンスの魅力なのだ。それは「もう古いと思われていた技術」に、新しい魅力を吹き込んだ結果である。そして同様のことが、いま、様々なダンスで起こっている。視野の狭い連中の目には、まだ映っていないだろうけれど、次のダンスの萌芽は、すでにそこここで堅土を破ろうとしているのだ。 今年もそんなダンスの魅力を語っていきたい。よろしくお願いいたします。第40回 「『バブリーダンス』におけるユニゾン問題。    それは愛憎相半ばする。 」 新年初めての号である。本連載もなんと40回目を迎えることができた。温かく見守り支えてくれた編集部と読者の皆様のおかげである。心からお礼を申し上げたい。 さて昨年末、ひとつのダンス動画がネットからテレビまで大きな話題となったのをご記憶だろうか。バブリーダンス。大阪府立登美丘高校ダンス部のメンバーがバブル時代のメイクと服で、強烈な群舞を踊ってみせたのだ。ダンス・コンクールへの出品作だが、高速テンポ、キレキレの動き、正確なユニゾンと醸し出されるユーモアで一躍人気を得た。 じつはこれ、日本のみならず、国を代表するような海外のダンスセンターでも紹介されており、プロの目から見ても大いに魅力的な作品なのである。 今回は「バブリーダンス」の最大の売りでもあった「ユニゾン問題」について書いておきたい。それはダンスの歴史の中で、愛憎相半ばする問題でもあるからだ。 ダンスにおけるユニゾンとは「複数の人数で同じ動きをすること」。しかし意外かもしれないが、ここ20年くらい、コンテンポラリー・ダンスの世界で、ユニゾンはあまり重要視されていない。むしろ避けられている、といってもいい。理由はいろいろあるが、「大人数が揃って動けば、それが体操のマスゲームであっても、人間は楽しいと感じてしまう。そんな反射的な快感に頼っていて、新しい舞台芸術が生まれるのか」「動きを正確に合わせることなど、技術があればできる。そんな技術の優劣を競うのではなく、『その人にしかできない表現』『舞台上にどう存在するか』等を追求するべきだろう」……といった議論が進んできたのである。いまではバリバリ踊りまくるダンスを見て「一昔前のダンスみたいだ」と言い切るダンス関係者もいる。特にヨーProleのりこしたかお/作家・ヤサぐれ舞踊評論家。『コンテンポラリー・ダンス徹底ガイドHYPER』『ダンス・バイブル』など日本で最も多くコンテンポラリー・ダンスの本を出版している。うまい酒と良いダンスのため世界を巡る。http://www.nori54.com乗越たかお

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