eぶらあぼ 2018.2月号
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176SACDCDSACDCDあこがれ Ti adoro/樋口達哉五線紙上の恋人―打楽器独奏で紡ぐ音楽劇―/會田瑞樹ノクターン/パスカル・ロジェ「悪魔のフォルクレ」 フォルクレ作品集/アンサンブル・マレッラヴェルディ:《アイーダ》~清きアイーダ/プッチーニ:《トスカ》~妙なる調和/ジョルダーノ:《アンドレア・シェニエ》~ある日、青空を眺めて/プッチーニ:《トゥーランドット》~誰も寝てはならぬ/村松崇継:いのちの歌 他樋口達哉(テノール)鈴木織衛(指揮) 仙台フィルハーモニー管弦楽団末吉保雄:「スネアドラム・ソロによる“五つの情景”へのエチュード」より/金井勇:樹を見る/薮田翔一:五線紙上の恋人/清水一徹:カメラ・オブスクラ/中川俊郎:幕間狂言~私たちの「ラ・フォリア」より~/白藤淳一:あやかしの余韻/間宮芳生:ヴィブラフォンとマリンバのための音楽 他會田瑞樹(パーカッション)ショパン:夜想曲第2番・第8番・第14番・第5番・第1番・第9番フォーレ:夜想曲第6番・第8番~第11番・第13番パスカル・ロジェ(ピアノ)アントワン&ジャン=バティストゥ・フォルクレ:組曲第1番~第3番アンサンブル・マレッラ【エマニュエル・ジラール(ヴィオラ・ダ・ガンバ) 野澤知子(チェンバロ) ティボー・ルッセル(テオルボ/バロックギター)】アールアンフィニ(ソニー・ミュージックダイレクト/ミューズエンターテインメント)MECO-1046 ¥3000+税コジマ録音ALCD-116 ¥2800+税オクタヴィア・レコードOVCT-00140 ¥3200+税ナミ・レコードWWCC-7860 ¥2500+税1998年に欧州でオペラ・デビュー。みるみるうちに日本のプリモ・テノールの階段を駆け上がりつつあるライジング・スターの3枚目のアルバムは、いよいよお待ちかねのオペラ・アリア集だ。つやのある美声を最大限に駆使しながら、情熱的かつ哀切な「泣き」をこれでもかとたっぷり聴かせてくれるのだからテノール・ファンは堪らない。それでいて、表現が過度にいやらしくならないのは、本人の柔和な人柄も大いに寄与しているのだろう。ボーナス・トラックのNHK朝ドラ『だんだん』挿入歌「いのちの歌」もいい歌だ。オケも、定位・音量ともグッド・バランス。     (宮本 明)並外れたテクニックとユニークな企画力で新時代のパーカッションの最前線を切り開く會田瑞樹が、早くもサード・アルバムを発表した。作曲家とのコラボもディープになっている。序幕と終幕を加えた5幕で構成され、末吉保雄のスネアドラム作品が要所で観劇気分を盛り上げる。木片の質感を大切にした「樹を見る」、不思議な浮遊感を湛える「五線紙上の恋人」、ヴィブラフォンが鮮やかに疾走する「あやかしの余韻」など、個性的な創作の合間に何を叩いているのか判別しがたい打撃音やバロックの旋律の断片がこだまする。長老・間宮芳生の近作は5つの断章からなるが、どれも味わい深い性格的小品。 (江藤光紀)今回ロジェがフォーレの夜想曲を持ってきたのはいわば想定内、しかしショパンとなると意外の感。このピアニストのショパン、寡聞にしてその録音の存在を知らないが、これは大変な聴き物である。落ち着いたテンポを基調にしつつ、旋律の細やかな「襞」にまで分け入った非常に綿密な演奏を披露しているが(第2番の歌い口!)、しかしそれは情念の重さや陰鬱な情緒を聴かせるというよりは洗練された「軽み」を帯びていてユニーク。後期寄りの作品をまとめたフォーレではテクスチュアの多層性の再現に優れ、これも名奏。ショパンとフォーレを交互に配したのも新鮮だ。  (藤原 聡)フレンチ・バロックに「雅で優美」などという既成概念があるなら、あっさり覆されよう。共に鬼才として名高い、アントワンとジャン=バティストゥのフォルクレ父子。息子の才能に嫉妬したのか、息子に酷い仕打ちをした父。しかし、その死後、息子は父の作品を3つに曲集に纏め上げた。これらに溢れているのは、饒舌なる色彩感と躍動感。フランス2人の名手とチェンバロの野澤知子によって結成されたアンサンブルは、作品の魅力を余さず掬い取る。特に、軸となるガンバのジラールの表現は巧み。時に感情を迸らせる一方、秘められた愛憎の“憎”の側面も忍ばせる。 (寺西 肇)

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