eぶらあぼ 2018.2月号
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174CDSACDCDCDベルリオーズ:幻想交響曲、リスト:ハンガリー狂詩曲第2番/上岡敏之&新日本フィルスーパーリコーダーカルテット Vol.3白石敬子リサイタル2017̶デビュー50周年記念̶ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番・第2番 他/ニルス・メンケマイヤーベルリオーズ:幻想交響曲リスト:ハンガリー狂詩曲第2番(管弦楽版)上岡敏之(指揮)新日本フィルハーモニー交響楽団J.D.ケアリー:レイズ・ユア・ハッツ!~帽子を取って ごあいさつ~/池上 敏:リコーダー四重奏による小組曲「四つの日本的情景」/アイルランド民謡:ダニー・ボーイ/G.シャノン:“ピーナツバター”プレリュードとフーガ 他スーパーリコーダーカルテット【北山 隆 松浦孝成 村田佳生 渡辺清美】シューベルト:夕映えに、糸を紡ぐグレートヒェン/R.シュトラウス:あすの朝、献呈/ブラームス:あなたの青い瞳、永遠の愛/團 伊玖磨:はる/越谷達之助:初恋/ヴォルフ:歌曲集「ミニヨン」/ジーツィンスキー:「ウィーン、わが夢の街」 他白石敬子(ソプラノ)室井 摂(ピアノ)ブラームス:ヴィオラ・ソナタ第1番・第2番、ハンガリー舞曲第1番(ヨアヒム編)・第4番(ヘルテンシュタイン編)・第5番(ヴェーゼナウアー編)・第16番(コンツ編)ニルス・メンケマイヤー(ヴィオラ)ウィリアム・ヨン(ピアノ)ジグヌム四重奏団収録:2017年7月、すみだトリフォニーホール(ライヴ)オクタヴィア・レコードOVCL-00647 ¥3200+税ナミ・レコードWWCC-7858 ¥2500+税収録:2017年10月、紀尾井ホール(ライヴ)カメラータ・トウキョウCMCD-99085 ¥2200+税ソニーミュージックSICC-30470 ¥2600+税定期演奏会では異例の「リクエスト・コンサート」のライヴ録音。慣習的な解釈を良しとしない上岡ならではの“極めて面白い”演奏だ。「幻想」はまさに“アヘン中毒者の歪んだ世界”。速いテンポで進む中、曖昧模糊とした動き、落ち着きのない揺らぎ、異様な間合い、いびつな音響が随所に現れ、恐ろしく細かい表情も交えながら、不安げなトーンから不気味な狂乱へと至る。スコアを見直したくなる場面続出の本作は、いま話題のクルレンツィスの「悲愴」と同じ意味で鮮烈そのもの。この後に聴くと、「ハンガリー狂詩曲」の尋常ならざる高揚感も意味深長に響く。  (柴田克彦)奇を衒ったことは、何もない。ただ真正面から、楽器と音楽に向き合う。しかし、そこから生まれる滋味に、たちまち魅了されてしまうだろう。日本テレマン協会の創立メンバーでもあるベテランの北山隆、国際的に活躍する松浦孝成らで組織された「スーパーリコーダーカルテット」。その第3弾アルバムは、村田佳生と渡辺清美を迎えた、メンバー一新後の初録音。ある時はグルーヴ感を纏い、ある時は祭りの笛のように。自在な選曲が、阿吽の呼吸と温かい音色で紡がれてゆく。リコーダーと音楽に対する4人の愛情が全篇にゆき渡り、聴く者の心に灯をともすかのよう。 (笹田和人)1976年に日本人初のウィーン国立歌劇場専属歌手として契約した白石敬子の、デビュー50周年リサイタル・ライヴ。シューベルトからR.シュトラウスまで、オペラとともに彼女がライフワークとするドイツ歌曲を中心に、日本のコンサートで歌うのはこれが初めてだったという日本歌曲を併せたプログラム。どの歌も骨格が明確なのは、それぞれの音楽のフォームを的確に捉えているからだろう。大ベテランならではの、聴き手が安住できる境地。少女のように透明な声の美しさにも驚かされる。現在闘病中と聞くが、病魔に負けない強さも尊い。まだまだ歌いつづけてほしい。(宮本 明)世界のトップヴィオリストのひとりとして揺るぎない存在であるメンケマイヤーが、満を持してブラームスのヴィオラ・ソナタほかを録音。期待に違わず、別格の技巧と美音を駆使した、表現のレンジの広い、最高水準の演奏が聴ける。素朴さよりは、ある意味で“ヴィオラ離れした”押し出しの強さや思い切った表現が際立つ。ライナーノーツには彼の解釈や演奏法などが開陳されていて、一流奏者の思考を確認できるのも貴重。ハンガリー舞曲第4番で見せるケタ違いのヴィルトゥオジティは、もはや唖然とするレベルで、愛すべき「ヴィオラ・ジョーク」の世界からは隔世の感。    (林 昌英)

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