eぶらあぼ 2018.2月号
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172CDCDCDCDブレス ̶J.S.バッハ × 上野耕平̶バーンスタインへのトリビュート/佐渡 裕&トーンキュンストラー管塔の中の王妃/篠﨑和子久元祐子 with 280VC ~ベーゼンドルファーで奏でるモーツァルト~J.S.バッハ:無伴奏チェロ組曲第1番BWV1007、無伴奏フルートのためのパルティータBWV1013、無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番BWV1004上野耕平(サクソフォン)バーンスタイン:《キャンディード》序曲、ミュージカル《ウエスト・サイド物語》より シンフォニック・ダンス、交響組曲「波止場」、バレエ『ファンシー・フリー』佐渡 裕(指揮)トーンキュンストラー管弦楽団ブルーノ・フォンテーヌ(ピアノ)フォーレ:即興曲op.86、塔の中の王妃op.110/タイユフェール:ハープ・ソナタ/ロータ:サラバンドとトッカータ/グリエール:即興曲/ヒンデミット:ハープ・ソナタ/ドゥシェク:同/ドビュッシー:アラベスク第1番/ドビュッシー:亜麻色の髪の乙女篠﨑和子(ハープ)モーツァルト:幻想曲ニ短調(久元祐子補筆)、グレトリの歌劇《サムニウム人の結婚》の合唱曲〈愛の神〉による8つの変奏曲、ソナタ KV331「トルコ行進曲付き」(2014年自筆譜発見に基づく新版による)、同KV332/ショパン:ノクターン第2番、ワルツ第6番「子犬のワルツ」 他久元祐子(ピアノ)日本コロムビアCOCQ-85411 ¥3000+税エイベックス・クラシックスAVCL-25949 ¥2000+税マイスター・ミュージックMM-4025 ¥3000+税※リマスターによる再発売収録:2017年9月、サントリーホール ブルーローズ(ライヴ録音)コジマ録音ALCD-9178 ¥2500+税サクソフォンの若き名手、上野耕平によるJ.S.バッハの無伴奏曲集。タイトルは「ブレス」。管楽器演奏に不可欠な「ブレス」を、最もごまかしのきかない音楽であえて強調する。循環呼吸で切れ目なく吹くことも上野なら可能だが、あえて「ブレス」をとる。たしかに音は切れる。しかし、適切なフレーズとハーモニーの感性があれば、音楽は切れない。ドイツの教会の豊かな残響の助けも借りつつ、上野はこの困難を乗り越え、超絶技巧を前面に出すことなく、バッハへの新たな視点を提示していく。同種の挑戦でも際立った成果を得た、上野耕平のマイルストーンとなるであろう一枚だ。(林 昌英)生誕100年をにらんだ佐渡裕によるバーンスタイン作品集。中でも最高の名演は『ファンシー・フリー』だ。生気溢れるリズムと勢いに満ちながらも決して粗くならないのは佐渡の成熟と共に美しく柔らかい響きを聴かせるトーンキュンストラー管の功績でもあるだろう。《キャンディード》と「シンフォニック・ダンス」はこの指揮者の常とはやや趣が異なり熱狂よりもじっくりと落ち着いた運びで聴かせるが、それだけに常にも増して非常にていねいな仕上がりとなっていて傾聴させる。交響組曲「波止場」は音質も含めて同曲のファースト・チョイスとして推しうる出来。 (藤原 聡)国際的な登竜門での実績を重ね、出光音楽賞など数々の受賞にも輝き、今や日本を代表するハーピストとして活躍する篠﨑和子。母・史子譲りの美音と音楽性に加え、溌溂とした躍動感に、独自の感性が光る。タイトルにも掲げたフォーレ、「亜麻色の髪の乙女」など“王道”のフランス作品を軸に、3つのソナタや小品を配したデビュー盤も、単に「綺麗」というレベルに終始させぬ、“攻め”の姿勢で対峙。それゆえ、たとえ小品のフレーズひとつにあっても、考え抜かれた奥の深い表現に挑み、時に白刃のように作品の内面へと斬り込んでゆく。ハープの底力を知らしめる1枚だ。  (笹田和人)多様な鍵盤楽器を操る久元祐子の新譜は、ウィーン伝統のピアノの響きを今に伝えるベーゼンドルファーの最新モデル「280VC」によるライヴ録音。モーツァルトがウィーンで活動しはじめた頃の作品を集めた。幻想曲ニ短調は底知れぬ深奥からの響きを感じさせ、「KV331のソナタ『トルコ行進曲付き』」は、2014年発見の自筆譜による演奏をいち早く録音した久元が、解釈を熟成させ自然な息遣いで聴かせる。「KV332」のパッと花開くような第3楽章は圧巻。アンコールのショパンも収録。繊細な表現にどこまでも応えるピアノと久元との真摯な対話が伝わるアルバムだ。 (飯田有抄)

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