eぶらあぼ 2017.11月号
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66©馬場道浩宮﨑陽江 室内楽の調べ ヴィルトゥオーゾ・シューベルト11/20(月)18:30 旭川市大雪クリスタルホール音楽堂11/23(木・祝)14:00 札幌コンサートホールKitara(小)問 オフィス・ワン011-612-869611/26(日)14:00 トッパンホール問 コンサートイマジン03-3235-3777http://www.yoe.jp/宮﨑陽江(ヴァイオリン)シューベルトの“詩”と“ヴィルトゥオージティ”に光を当てて取材・文:長井進之介Interview アメリカに生まれ、幼少期をフランスで過ごしたのちに桐朋学園大学、ジュネーヴ高等音楽院で学んだ宮㟢陽江は、現在スイスに拠点を置き、欧州・日本双方で音楽文化の普及・発展に取り組むヴァイオリニストである。 今年はシューベルトのデュオ作品や五重奏曲「ます」、さらに彼の歌曲「魔王」を編曲したエルンストの超絶技巧作品が並ぶプログラムで東京・札幌・旭川公演を行う。共演者にはピアニストでサンタ・チェチーリア音楽院教授のマルコ・グリサンティや、ベルン交響楽団チェロ首席奏者のコンスタンタン・ネゴイタら実力派が揃った。 「曲目を決めるときは様々なことを考えますが、去年ベートーヴェンのコンチェルトを演奏し、次はブラームスに取り組みたいと考えたとき、その間に位置するシューベルトに取り組んでおくべきだろうと思ったことがきっかけです」 これまでに宮㟢はフランスの作曲家やベートーヴェンを中心にヨーロッパを巡るような幅広いレパートリーを演奏してきた。 「幼少期をフランスで過ごしたこともあるかもしれませんが、フランスからスタートして様々な国の音楽を見ていくべきだと思ったのです。国ごとに作品の特徴や音色など、楽譜に広がる風景は全く違いますから、それを感じとり、音にすることがとても大切です」 シューベルトといえば歌曲やピアノ作品での演奏会は多いものの、弦楽器作品をこれだけまとめたプログラムはなかなかない。 「ヨーロッパではオール・シューベルト・プログラムは結構ありますが、日本では確かに少ないですね。今回は“歌曲王”シューベルトの面はもちろん、彼の求めたヴィルトゥオージティに光を当てました。彼は協奏曲こそ書きませんでしたが、今回演奏する『華麗なるロンド』は特に協奏曲を思わせる要素がとても強いのです。彼のこうした部分はあまり注目されませんが、シューベルトは短い人生の中であれだけの交響曲を書いていますし、とてもエネルギーに溢れた人。そんな側面を今回は表現したいと思っています」 シューベルトの“ヴィルトゥオージティ”をクローズアップしたプログラムとなっているが、その中にもやはり“歌”を感じるという。 「彼の音楽には言葉があります。シューベルトの作品を演奏するのであればどんなジャンルでも彼の歌曲の詩を研究することがとても大切です。今回ピアノを弾いていただくグリサンティさんは特にシューベルトに造詣が深いので、色々なことをディスカッションして曲を作り上げています。『ます』や『魔王』の元となった歌曲の詩から受けるインスピレーションや力強いエネルギーを表現していきたいです」仙台フィル × 読響 スペシャル合同オーケストラによる小中高校生のための「第九」チャリティ・コンサートこの日限りの特別オーケストラによる歓喜の歌文:林 昌英 ソニー音楽財団(Sony Music Foundation)は、2011年以来、「第九」チャリティ・コンサートを毎年開催している。会場での募金とチケット収入の一部は「公益財団法人 音楽の力による復興センター・東北」に寄付され、東日本大震災復興支援活動に役立てられる。震災と復興への思いを音楽を通じてかたちにできるという意義に加えて、出演者の素晴らしさにも注目が集まる公演である。 今回指揮を務めるのは山田和樹。世界中で活躍する山田の呼びかけで、彼が17年3月までミュージック・パート12/27(水)18:30 東京オペラシティ コンサートホール問 ソニー音楽財団(Sony Music Foundation)  03-5227-5233http://www.smf.or.jp/山田和樹 ©Marco Borggreveナーを務めていた仙台フィルハーモニー管弦楽団と、18年から首席客演指揮者を務める読売日本交響楽団、2つの楽団によるこの日限りのスペシャル合同オーケストラが実現。どんな化学反応を起こすのか楽しみ。山田が音楽監督を務める東京混声合唱団に武蔵野音楽大学合唱団が加わり、ソリストもバリトンの小森輝彦をはじめ名歌手が集う。本公演は小・中・高校生とその付き添いの保護者が主な対象となるが、大人のみの席もあり、要チェックの「第九」公演だ。

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