eぶらあぼ 2017.11月号
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53©Marco Borggreve/DGピエール=ロラン・エマール ピアノリサイタルメシアン:幼子イエスにそそぐ20のまなざし12/6(水)19:00 東京オペラシティ コンサートホール問 東京オペラシティチケットセンター03-5353-9999 http://www.operacity.jp/ピエール=ロラン・エマール(ピアノ)メシアンの伝道師が贈る「まなざし」の全曲演奏ついに実現!構成・文:編集部取材協力:東京オペラシティ文化財団Interview メシアン没後25年の今年、彼の代表作の上演が相次いでいるが、その掉尾となる12月、メシアン演奏の第一人者、ピエール=ロラン・エマールが「幼子イエスにそそぐ20のまなざし」を披露する。彼にとって初となる日本での全曲演奏だ。 同作は、敬虔なカトリック信者である作曲者が、キリスト降誕への様々なまなざしを独自の語法と音響で描いた2時間超の大作で、エマールは「日本で全曲演奏できることはとても嬉しい」と思いを語る。 「普通のリサイタル枠ではなかなかできない作品ですが、東京オペラシティ コンサートホールの持つカテドラルのような音響空間が、作品の精神世界に合っていると思い、提案しました。このホールでこれまで出会ったお客様との良い関係性もあります。今回はまさに『機が熟した』という思いです」 エマールはかつてメシアン夫妻と多くの時間を過ごし、1973年メシアン国際コンクールで優勝、2008年にはメシアン生誕100年祭を企画するなど、彼にとって「メシアン」は特別な存在であり続けている。 「12歳のときにメシアン夫人のイヴォンヌ・ロリオ先生のクラスに入ったことをきっかけに、メシアン自身のオルガン演奏を聴いたり、演奏旅行に同行したり、重要作の世界初演に立ち会うなど、様々な時間を共有できました。彼は気取りがなく、前向きな情熱に溢れ、同時に思慮深さや忍耐強さも持ちあわせていました。初対面のときに私のことを子ども扱いせず、一人の人間として接してくださったことはよく覚えています。 彼の音楽と出会った瞬間、『私にはメシアンの音楽に対して特別な使命がある』と直感しました。音と時間に対するメシアンの観念はインスピレーションに溢れ、違う次元に我々を誘ってくれます」 1999年に同作の名録音を残しているエマール。演奏活動の間に解釈は変化しつつも、作品への思いそのものは変わらない。 「この作品とは『人生を共にしてきた』と言えます。ロリオ先生の演奏を聴き、私も18歳で初めて全曲演奏しました。作曲者の感情、ファンタジー、哲学、精神世界が反映され、演奏家にあらん限りのことを要求します。一夜にして人生のあらゆる側面をさらけ出さねばならないため、限られた時にしか演奏できず、私の場合は多くても年に2~3回程度です。しかしそれゆえに、長い年数を経ても特に親しみを感じるのかもしれません」 頻繁に来日公演を重ねているエマールだが、本公演に向けた意欲は格別であるという。 「メシアンは日本へ深い敬愛の念を持っていて、私も同様に日本に特別な想いがあり、彼の作品を演奏すると必然的に日本を意識するのです。やっと日本でこの傑作を演奏できますが、この待ちわびた公演が、私の人生、そして私と日本の関係において、とても大切な節目になると確信しています」原美術館『田原桂一「光合成」with 田中 泯』展関連イベント 『田中 泯 オドリ』蘇る“魂”のフォトセッション文:乗越たかお これは単なるコラボレーションではない。写真家・田原桂一とダンサー・田中泯が、長い時をかけて培って来た、魂の交流の証しである。 1971年に20歳でフランスに渡り、その光に魅了され、「光の写真家」として世界的に高い評価を受けていた田原と、強烈な独舞で己の舞踊を探求していた田中は、78年にパリで運命的な出会いをする。それ以来2人は、街と自然、光と身体が織りなす作品を、世界各地で撮りためて来た。風景に溶け込み、抗い、強烈に存在する若く精力的な田中の肢体、その内奥までをも、田原のカメラは余すところなく捉えている。 が、なぜかそれらは発表されることなく11/18(土)、12/23(土・祝)各日19:00 原美術館 中庭※晴雨かかわらず実施、メールで事前予約制。詳細は下記ウェブサイトでご確認ください。問 原美術館03-3445-0651 http://www.haramuseum.or.jp/Bordeaux-11 1980 105×159 cm ©Keiichi Tahara田原のもとで長い間眠っていた。昨年やっと写真集として刊行され、新しいフォトセッションも始まっていたのだが、なんと田原は今年の6月に逝去してしまったのだった。 その田原の展覧会を行う原美術館で、田中が舞う。それは鎮魂などではなく、新たなセッションとなるはずだ。

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